工房の上空では・・・
ナイジェルとクレシダも、アクセサリー工房の視察に加わる事が出来た。
工房らしく、特注などを受ける個室も、シンプルな内装となっている。
これといって、おかしなところは見受けられなかった。
その事を通信して伝える。
『工房の方々は住み込みで働いているので、食堂や休憩所があるはずです。そちらへ行ってください。』
と、ヘンリーからの通信があった。
あのな・・・通常なら、結構な無茶ぶりだぞ。
国王の俺には、出来ると思うけどな・・・。
「先ほど、ここで働いている者たちは、母子家庭と聞いた。親子で苦労されているのだ・・・一人一人に声をかけたい。皆が一斉に集まれる場所は食堂かな?急いで集めて欲しい。」
どうだ?
国王だから出来る内容だろう。
工房の案内者が、食堂に職人を集めるよう、指示を出してくれた。
そして、ゆっくりと工房関係者しか入れない場所へと堂々と潜入。
扉を一つ、二つと入って行く。
そして、廊下を進み3つ目の扉を開けて入る。
「?!」
休憩所と言われるその場所を見て、他とは違う異様な光景に気づく。
『ヘンリー。サーシャに伝えてくれ、あからさまに、おかしい場所を発見したぞ!』
俺は通信で、サーシャにおかしいと感じる休憩所の説明をする。
シンプルな内装である工房と同じ建物かと疑うほど、内装が豪華で、高級ホテルのラウンジのような造りであることを説明する。
そして、はっきり言って、先ほど見た特注などを請け負う個室以上に、高価な物をが置かれていると伝えた。
『クレシダ、場所を特定したい、一声上げて欲しい。』
”キキキャキュォ~”
ヘンリーの通信に、クレシダは『ここだよ~。』と、鳴き声をあげる。
すぐに、建物のすぐ横にある四角い建物は何かを聞いて来た。
確かに窓の外を見ると、小さい小屋が見えた。
「恐れ入りますが、窓の外から見える、あの建物は何でしょうか?」
と、ピアーズが工房の物に質問をしてくれた。
「温度や湿度などを測る百葉箱です。」
工房の者が答えてくれた。
あからさまに小屋なのに、あくまで百葉箱と言うのかよ・・・。
困惑しそうな俺に、ヘンリーからの通信が入る。
『そこから、難なく外に出られそうな箇所はありますか?』
ヘンリーの言葉に、掃き出し窓から簡単に出られる事を伝えた。
『椅子やテーブルの他に何がありますか?』
俺は、暖炉と本棚がある事を伝えた。
すぐに、本棚に並べられている本の特徴を聞いて来た。
「この本棚には『騎士のススメ』の本が置いてあるのですね・・・懐かしいな~。」
と、ナイジェルが、本棚を舐めいるようにして言う。
『ドラゴニア王国の歴代王』『ドラゴンとの絆の結び方』といった分厚い本だらけな事を通信で付け加えて説明をした。
『植物図鑑や、動物図鑑、美術資料となりそうな本と、子供な見そうな本は置いてませんか?』
その質問に、全くない事を伝える。
『陛下。食堂へ行かれたら、まずは、絵本の持った子供に声をかけてください。そして、絵本を置く場所を教えれ貰ったください。』
ヘンリーからの通信から、細かい部分の要求をしてきた。
やるしかないか・・・・。
◇ ◇ ◇
『ルイ。コスモのいる付近の工房の外で、ブルーア・ラリマー元伯爵所有の家はあるか?』
『ほとんどに決まっているじゃないの。』
ヘンリーと、ルイ・シェルの通信が、入ってくる。
『なら、全部調べろ!』
『ふざけないでよ!!工房の周りのほとんどが、元伯爵の所有の家なのよ。特徴ぐらい言えないの?』
相変わらす仲が悪い2人だな・・・。
『え?そんな事を聞かなくても、全部調べさせればいいだろう。』
『サーシャさんは、何を言っているのよ!!』
ヘンリーが、ルイ・シェルの事をルイーズと呼んであげないのが原因なんだよな・・・・。
『仕方ないな~・・・工房の隣でありながら、逆に所有していない家が、俺らが今いる場所側にあるかって、聞いているんだが・・・。』
『一軒あるわよ』
『そこの家をまずは、調べるべきじゃないか?』
『・・・わざわざ、そばに来なくていいのに・・・。』
どうやら、上空でヘンリーとルイ・シェルが合流したようだ。




