視察ですよ
「視察~♪視察~♪大視察~♪」
久々の視察。
それも、おおっぴらに出来る視察。
なので、しっかりピアーズも付いて来ている。
昨夜と言っても、深夜なのだが、デリック先生が王宮に来た。
そして、ブルーア地方のアクセサリー工房へ視察をしに来て欲しいと言う要望だった。
それも、ヘンリーの書状まで持って来たのだ。
ブルーア・ラリマー元伯爵の件で、裏金の資金源が解るかもしれないという書状の内容だった。
だが、デリック先生は、ロゼリス捜索部隊で、ブルーア・ラリマー元伯爵の裏金捜索部隊ではないはず。
その事を言ったら、サーシャが最も確率のある場所を示してくれたようだ。
そして、資金元の関係で、何よりも信頼する者のみで、動いて欲しいと要求してきた。
どうしてなんだろう・・・?
だが、俺にしてみたら、王宮から出られるのだ。
ああ・・・この空気、気持ちいいぞ!!
「陛下。遊びに出かけるのではないのですよ!」
ピアーズが俺に声をかけて来る。
「わかっているよ。視察の理由も、ナーガ王国に贈る真珠貝で、どこの産地の物を贈るのがいいのか調査する為に、いろんな産地の真珠が集まるアクセサリー工房に視察をしに来たという名目だろう。」
真面目な内容である。それも、そちらの検討も必要な内容だ。
だが、それは表の視察内容。
裏は、隠し部屋を探すことだ。
『こちら白き盾、大丈夫です。』
『白のティアラもOKだよ!』
『若紫&千草の瞳も準備できてます。』
『・・・星々の花も準備完了している。』
合言葉が通信で流れてくる。ブルーア地方に近づいたようだ。
「陛下・・・お時間です。」
デリック先生が、全ての準備が出来たことを伝えてきた。
「青天の冠・・・突入をする!!」
と、俺は通信をしてから、ブルーア・ラリマー邸に一番近い、アクセサリー工房へと降り立つ。
工房に降り立ったのは、俺とピアーズのみ。
他について来た者たちは、工房の周りの少し離れたところに降り立った。
ドラゴンが降りれる場所がないからだ。
”グオ~ギュオ~”
と、ユピテルから降りると鳴き出す。
工房の者が何事かと、慌てて駆け付けて来る。
「何事ですか~!!」
と、工房の人が大声で声をかけて来る。
ユピテルがまだ鳴いているからだ。
「陛下の視察です!!」
ピアーズが、大声で伝えると。
工房の人たちは、頭を下げた。
それにしても、女性が多いな。
「この鳴き声は、視察の同行者の者とのやり取りをしているのです。他のドラゴンたちはどこに止まれば・・・いや、工房の周りに止めて貰います。」
ピアーズが大声で伝える。
ユピテル以外のドラゴンも鳴いているからだ。
急な視察に、工房の人たちは、戸惑い顔を見合わせていた。
工房の上の者が、案内をしてくれる事になる。
ユピテルと、他のドラゴンの鳴き声は、工房の中に入る事には治まっていた。
「それにしても、女性が多いですね。」
俺は、質問をしてみる。
「アクセサリーの多くは女性がする物です。女性の観点からデザインを考えた方がいい物が出来ますので、女性を多く採用しています。」
女性の観点で考えた方が、売れると言いたいのだな。
「ですがアクセサリーは、男性が女性にプレゼントをする事が多いのではありませんか?男性が女性にして欲しいと思うデザインは、男性の観点から見た方がよろしいのではありませんか?」
いい事を言ったピアーズ。
つまり、女性男性関係がないと言いたいのだ。
「なるほど、そのような考えもありますね。ですが、ここで働く女性たちはの多くは母子家庭です。」
先に旦那に先立たれ困っている者を、慈善活動の一環として、受け入れていると言った。
うん・・・その様なことなら、女性が多くてもいいと思うのだが、俺たちの後に、付いて来ているここで働いている女性の子供だろうか・・・。
全員、女の子に見えるのだが・・・男の子は、どこにいるのだろうか?
「これは、驚いた。陛下がここに視察にいらしているとは・・・。」
”キュ~ッ”
と、白い子供のドラゴンを連れてナイジェルが工房の販売所に来ていた。
「ナイジェル。どうしたんだ?」
・・・来ている本当の理由を知っているが、聞いてみる。
「妻のケートには、これまで私を支えて貰って、そのお礼にアクセサリーの一つでも購入しようと、クレシダと一緒に、この工房へ来たのです。」
”キュキュ?”
・・・笑いがこみ上げそうだ。
クレシダは『こんな内容でいい?』と、言ってきているのだ。
断然その内容でいいに決まっている。
「それはいい。キマイラ事件の際、クレシダは不眠症で、ケートに世話になったんだ。クレシダと一緒に選ぶのがいい。」
俺は、クレシダにニッコリと笑い答える。
「それでしたら、一緒に陛下と視察をしませんか?」
ピアーズが言いだす。
「どのような作業をしているのか見た上で、購入するのもいいですね。」
”キキュ~”
こうして、ナイジェルとクレシダも、視察に加わる事が出来たぞ。