便利とは、いかない仲間
元ブルーア・ラリマー邸に着いてから、深夜となった。
まあ、学園終わって、アマルテアに乗せて貰いルベライトの屋敷に戻ったら、屋敷の屋上にコスモが待機していて、そのまま、ブルーア・ラリマー邸に向かったんだものね。
着いたころには夕方近かったし、その後、姉さまの捜索隊のメンバーに会い、夕食を一緒にしていたと考えると、こんな時間にもなるわね。
ヘンリー様と私は、とある部屋で人を待っていた。
3人掛けのソファーに座り、隣にはヘンリー様で、がっしり手を握られています。
「待たせたね!」
と、部屋に入って来たのは、14歳ぐらい天使のような少年。
実は『堕』が付く天使のような少年の格好をしたお方。
そう、フレディ様だ。
現在、ヘンリー様と私は、ダンビュライト城にいる。
フレディ様に調べて欲しい事があり、ここに来たのだ。
夕食後に、ヘンリー様と内密にここへ向かったのだ。
コスモと解らない様に、結構上空を飛んできた。
しっかり着る物を着こんで、しっかりヘンリー様に抱きつき、寒さ対策をした中でのお忍びの飛翔。
ほんの少しだが、ワクワクしていたりする。
「お忍びで通信してくる意味があったのかな・・・?」
ニッコリ笑顔とは裏腹の黒いオーラを漂わせて言って来た。
「もちろんですよ。私の考え通りでしたらの話ですが・・・。」
私も、言い返すように伝える。
まあ、私は変なオーラは出せませんがね。
資料をテーブルに置くフレディ様。
「悔しいけど、サーシャの予想通りだよ・・・満足した?」
フレディ様は、夜中の訪問だけでなく、調べものの要求にも不満があるようだ。
仕方がないけど、こればかりは、ご機嫌斜めでも協力して欲しい。
「私は、ある程度満足はしていますが、フレディ様はそうではないですよね。」
「当たり前に決まっているよね。」
そして、待っていました。その言葉!!
「では、協力してくださるんですね。ありがどうございます!!」
一瞬というか、プラス付きで、もう一瞬と言うべきなのだろうか、時間が止まった。
「へえ・・・この僕を利用しようとするんだ・・・。」
黒いオーラが濃くなっているのが解る・・・。
前のようにカイル様がいないから、どす黒いオーラを、全開で放たれたら一貫の終わりだな。
「このまま、結果を待つだけで、フレディ様が満足するのなら、フレディ様の力を借りないで、私たちだけで何とかします。敵を逃すかもしれませんが仕方ないですよね。」
困ったそぶりをして見せる。
ですから、フレディ様。あなたの協力があった方が、確実なのですよ。
「一段と便口になったね。」
「フレディ様の便言に比べたら、まだまだですよ。」
フレディ様と私は、不敵に笑いだす。
ヘンリー様が私の方を見つめる。
・・・心配をしているようだ。
「面白そうだしね、協力をするよ。」
こうして、フレディ様が仲間となった。
◇ ◇ ◇
ダンビュライト城で、一泊することになった。
明日は、早朝から城を出ないとならないから、さっさと眠る準備をする。
ベッドでは、ヘンリー様が座って待っている。
私を待たずに寝ていてもいいのですが・・・。
別部屋を用意して欲しかったな~。
私は、ヘンリー様のいるベッドの布団の中に入る。
「明日、早いですから寝ましょう。」
そう言い、すぐに横になり、ヘンリー様に背を向ける形になる。
”だきゅっ”
と、後ろから抱きしめられる。
「サーシャと、のんびり休日を過ごすつもりだったんががな・・・。」
ヘンリー様が囁くように言ってくる。
「仕方がありませんよ。こんな事態ですし・・・。」
「俺とサーシャの仲を深める為に旅行をしようと思ったんだけどな・・・。」
ヘンリー様。何気にいじけてませんか?
「私はヘンリー様と旅行出来てうれしいですよ。それに、コスモに新鮮な鮎を捕まえてあげようと企画したのでしょう。」
・・・・え?
ヘンリー様、止まってますよ。
「・・・そうか、鮎の時期に入っていたのだな。」
おぼろ昆布を披露した際に出した、梅味のおかき。
梅肉を乾燥する必要があり、コスモに手伝って貰ったのだ。
そのお礼に、コスモが要求したのはアユの塩焼き。
あの時は、アユの時期ではなかったのだが、今はアユの時期。
始まったばかりだ。
早速、コスモの為にアユ釣りに行くのだと思ったけど・・・。
違っていたようだ。
・・・コスモが可哀そうだな。
「コスモの為に時間が取れるように、明日頑張りましょう。」
「・・・そうだな。」
ヘンリー様も解ってくれたようだ。
”もぞもぞ”
えっと・・・ヘンリー様の手が怪しいのですが。
「ヘンリー様。今夜はダメです。」
私は、ヘンリー様の手をポンポンと叩く。
「きっと、早朝にフレディ様が起こしに来ますから、その時、私の裸をフレディ様に見せてもよろしいのですか?」
フィオナですら、出来れば遠慮したいのに、フレディ様なんて、もっとダメででしょう!!
「・・・ダメだな。」
ヘンリー様も、解ってくれたようだ。
「おやすみなさいヘンリー様。」
「お休み、サーシャ。・・・明日の夜はサーシャを予約しておく。」
・・・え?
ヘンリー様は、私の首筋にキスをして、腕の力を弱めてくれる。
そして私は・・・・明日の夜の事を考え困惑しながら眠りに就いた。




