腹が減っては・・・なのですが
「サーシャ様。起きてください。」
フィオナの声がする。王宮から帰って来たのね・・・。
すぐに、王宮から屋敷に帰って来られるけど、王宮にフィオナを1人置いて来た感がしていたから、良かったわ。
うつ伏で眠っていた体を起こし、手の甲で目元を擦る。
「・・・お腹が空きました。」
眠気よりも空腹の方が大きく、つい口に出してしまった。
「そのように思いましたので夜食をお持ちしました。」
夜食という事は・・・朝ではないのね。
「日曜日の夜なのかしら?」
そんな風には感じられないが、ヘンリー様との甘い時間の後は、日にちと時間の感覚が鈍る。
「土曜日の夜ですよ。」
つまり、王宮から帰ってから、あまり時間が経ってないのね。
”バサッ”
と、私にバスローブがかけられる。
・・・私、裸だったわね。
もう、フィオナに何度も私の裸を見られている。
慣れたと言いたいところだけど、やはりまだ少し恥ずかしさが残る。
「さあ、先にシャワーを浴びましょう。」
そう、フィオナに言われ、私は言われるままベッドから起き、浴室へと向かう。
「それにしても・・・クスリッ」
微笑ましく私を見ているフィオナ。
「フィオナ、どうかしたの?」
私は、不安になり、フィオナに聞いてみた。
「サーシャ様の背中のここ。」
そう言うと、フィオナは私の背中の腰に近い部分を触れた。
「ふぁっ!!」
と、私は変な声が出てしまう。
手で口を押え、フィオナにそっぽを向ける。
顔が赤くなっているのが分かる。
「サーシャ様・・・この場所・・と、言うか・・・そうか、ヘンリー様のキスマークが集中している場所は、サーシャ様の・・・ああ。」
フィオナ。勝手に納得し、解決させないでください。
「『鈴蘭の心』のヒロインが鈴蘭の文様が宿った場所なのですよ。」
私は、フィオナの方を振り向く。
フィオナは、ニッコリと、だが不敵さ混じった感じに微笑んで見せた。
「ここ!!」
「あっ!」
”ずるりっ”
私は、腰が抜かし、その場に座り込んでしまった。
「ごめんなさいサーシャ様。悪ふざけが過ぎました。」
と、フィオナは私の手を取り、しゃがみ込む。
「フィオナ。サーシャから離れろ」
と、後ろから、ドスの利いた声が聞こえる。
ヘンリー様の声だ。
私は、ヘンリー様の方を向く。
えっと・・・心配してくれているのかな?
「フィオナ。今すぐ部屋から出て行ってくれ。」
「わかりました。」
フィオナは、扉付近に夜食が置いてあるのを伝えると、部屋を出て行ってしまった。
・・・なんか、嫌な雰囲気が漂っています。
「サーシャ。そんなに俺が足りなかったのか?」
足りないって、何がでしょうか・・・。
「・・・お腹が空いてます。ですから、食べ物が足りない・・・もしくは、栄養が足りていないとは・・・思うのですが。」
ヘンリー様が、ベットから降りてこちらに近づいてきます。
私は、ヘンリー様が見つめていられずに、そっぽを向く。
バスローブぐらい着てください。
「俺以外に、あの顔を見せるとは・・・。」
「どの顔ですか?」
ヘンリー様は、私の質問にため息をつく。
「俺以外、出入り出来ない部屋にサーシャを閉じ込めておきたい。」
私は、驚きヘンリー様の方へ顔を向けると、いきなり抱きしめられる。
「敏感なままで放置してしまっていたようだ。そのせいで、フィオナに見られるとはな・・・。」
「ですから、何をでしょうか?」
私の問いに、再びため息をつくヘンリー様。
「サーシャが、どれだけ俺が足りなかったのか、教え込まないとならない事が解ったって事だよ。」
そう言うと、ヘンリー様にキスをされ、押し倒される。
「まっ・・・待って・・・お腹空いてます。」
口づけの嵐をよけながら私は言う。
「なら、早くしないとな~。」
「食事の後で!!」
「食後もだよ。」
え?
無理ですからって・・・無理なのに・・・・。