あなたの幸せも・・・
「サーシャ様。私、一生サーシャ様に付いて行きます。」
と、言うフィオナの言葉に、戸惑ってしまう。
慕われるのはうれしいけど・・・何かがおかしい。
私が、フィオナの考えたシナリオのヒロインだから?
それも、あるかもしれないけど・・・。
モヤモヤしている。
でも、モヤモヤのままでいいから、おかしいことを話さないと、このまま、おかしいまま定着してしまう。
そんなの嫌だわ。
それが、シナリオライターのみちよさんの生まれ変わりであるなら、なおの事よ。
「フィオナ。私を慕ってくれて・・・ありがとう。」
ぎこちなくしか話せない私ですが、聞いてください。
「当然です!」
と、どんと構えるような雰囲気でフィオナが答えた。
良かった。聞いてくれそうね。
「えっと・・・ね。その・・・幼い頃から、私に仕えてくれている・・専属メイドがいるのは、知っているわよね。」
なんだろう・・・恥ずかしくなってきた。
ぎこちなく話すしか出来ない事で、恥かしくなってきているのか?
「ルベライト城にいるマリーさんですよね。」
私は、コクと頷く。
本当に、頬か徐々に熱くなってきているのですが・・・。
「マリーは、ヘリオドール家が紹介してくれたメイドで、私が国を出て、ドラゴニアに来る際によったホルンメーネで、別れたの。」
私は、ホルンメーネで購入した家をクラウンコッパー家の者たちに渡す手続きをマリーに任せた事を説明する。
「再び、マリーと顔を合わせて会えたのが、ヘンリー様との婚約を披露した、国王主催の夜会の時よ。」
その一年前に、牢屋に入れられて、マリーと言葉を交わすのみだったのよね。
「その時は・・もう、マリーのお腹には、モーリスさんの子がいたのだけど・・・、マリー・・綺麗になってたわ・・・・きっと、恋をしていたからだったのよね。」
私は、頬が暖かいまま、フィオナに微笑んだ。
「その後、マリーに会ったのは、カルデネをルベライト城に運んだ時。
マリー・・・これまでにない、温かい笑顔を見せてくれたのよ・・・うれしかった。」
マリーには、家族がいない。幼少期からヘリ―ドール家の使用人となるべく、厳しく教育を受けたメイド。
そのマリーが、あの暖かな笑顔を見せてくれた。
自分の事のようにうれしい。
「フィオナ・・・人それぞれ幸せは違うのは・・・解っているわ。でもね・・・フィオナにも・・・今以上に幸せになって欲しい。」
フィオナに捕まれた手に力が入る。
「だって・・・フィオナが私の幸せを自分の事のように思っているように・・・私もね、フィオナの幸せを自分のように思っているから・・・。」
私は、頬が赤くなっているのを自覚しながら微笑む。
すると、フィオナが立ち上がる。
”ギュッ”
と、私に抱きついて来た。
「サーシャ様~私、ホッとしています。こんなにピュアに育って下されて~!!」
えっと、非常に恥ずかしい・・・。
それも、胸の谷間に若干、顔を埋もれています。
私には、無理な芸当です。
出来るなら、フィオナぐらいのお胸が欲しいと思ってしまった。
「フィオナ・・・サーシャから、離れてくれないか?」
私の横から、ヘンリー様の声が聞こえる。
すると、すぐにフィオナは話してくれた。
そして、今度は横からヘンリー様に抱きつかれた。
「すみません。あまりにも嬉しかったモノで・・・。」
フィオナはヘンリー様に謝り、座っていたソファーへと戻る。
「サーシャ様、先ほどの私のシナリオの癖を見抜いてくださってありがとうございます。」
一捻りがありそうって事かな・・・?
「アリスさんのような、続編で2つのシナリオで販売するのではなく、『教恋』のように、一遍に2種類のシナリオを観点を変えて出す物でした。」
フィオナが、プレゼンに赴くような真剣な表情で話し出した後、私の顔を見て微笑む。
「乙女ゲームの王道の純粋なヒロインとライバルの悪役編と、逆パターン・・・腹黒のヒロインとピュアなライバル編の2つのシナリオです。」
腹黒ヒロインとは、今までにないストーリーのシナリオだわ。
「シナリオを見た同僚が、斬新的で素晴らしいと言っていたのは、腹黒ヒロインでのプレーが出来ると言う観点からか・・・。」
ハミッシュ陛下は納得したように言った。
「純粋なヒロインを『鈴蘭の心』腹黒ヒロインを『薔薇の心』と、言うサブタイトルで出すつもりでした。」
フィオナの発言に、私は胸に着けている鈴蘭のブローチに触れる。
「ええ、サーシャ様のそのブローチは、純粋ヒロインが身に着けていた鈴蘭のブローチです。」




