可愛らしさに注意が必要だ。
――――― 時は、遡る・・・ ―――――
ライナス殿の『そろそろ着きます。』の、伝言で、俺は書斎から屋敷の屋上へと向かう。
その途中で、何頭のドラゴンを介しての伝言が届く、ハミッシュ陛下が急ぎサーシャに渡す物があると言う伝言だった。
こちらは、あと数時間かかりそうな雰囲気だった。
それにしても、サーシャに渡したい物とは何だろう・・・。
屋上へ出ると、水色のドラゴンがこちらに向かってくるのが見える。
近づくにつれて、サーシャとライナス殿の二人が仲良く笑い合いながら来ている事が見える。
俺は、笑っていても、あんな風に表情が表にでない。
心では笑っていたとしてもだ。
ライナス殿が、サーシャに笑いかけているのを見るのを見て、羨ましいと感じている自分がいた。
そして、サーシャとライナス殿の方が年齢が近い。
俺は、コスモと絆を結べているからサーシャと奇跡的に出会えていて、婚約まですることが出来たが本来なら、ライナス殿の方が正しいのではないか?
俺は、サーシャを無理やりコスモと絆を結ばせて、妻にしようとしているのか?
・・・いいや、違う。
アマルテアが屋敷の屋上に降り立ち、サーシャが降りて来る。
「ライ様。ありがとうございました。」
”キュー”
と、アマルテアが鳴き、サーシャの頬に鼻を付ける。
アマルテアを撫でるサーシャ。
愛おしく、可愛らしく・・・寂しい。
「ライナス殿。サーシャを送ってくれてありがとう。」
「ヘンリー様。ただいま。」
サーシャが俺に微笑みかける。
・・・・俺のモノだ。
”チュッ”
俺はライナス殿に、これ以上サーシャと仲良くしないで欲しい事をライナス殿の目の前で、サーシャとキスすることで訴えた。
「お帰り、サーシャ。」
サーシャは驚き身動きが出来ないでた。
ああ、やっぱり離したくない。
「まだ、足りなかったか?」
「そんな訳ないでしょう!!」
真っ赤な顔で訴えられても、意味がない事を解っているのだろうか?
”グイッ”
と、俺の腕の中に、サーシャを隠す。
「ヘンリー殿、平日、サーシャといられる事で、俺に嫉妬しないでください。」
ライナス殿の一言で、俺がライナス殿に嫉妬している事に気づく。
そうか・・・やはり、嫉妬しているのか・・・。
「わかっているのだが・・・すまない、ライナス殿。そうだな・・・サーシャが、可愛いのがいけない。」
手放せない程に可愛らしい。
「何故、そこで私なのですか?!」
可愛いからに決まっているのに、とうの本人が解らないとはな・・。
”チュ、チュー・・・チュウー”
これで、解ってくれ。
そして、人前で可愛さを見せないで欲しい・・・。
無理だった。
口をパクパクさせて俺を見ている。
誰にも見せたくない顔なのに、ライナス殿の見ている所で、その顔をするのかよ
”ぎゅう”
と、両腕で抱きしめ、腕の中に閉じ込める。
「お邪魔なようなので、失礼をした方がいいですね・・・ヘンリー殿、サーシャ、よい週末を・・・。」
「ライナス殿もよい週末を・・・。」
俺の腕の中で、サーシャがライナス殿の方に顔を向けようとするが、そんな事をさせるわけがないだろう。
すぐにアマルテアが空へと飛び立ってくれた。
「ヘンリー様・・・人前でキスを・・それも唇にするのは・・やめて頂きたい。」
俺の腕の中で諦めたように、そのまま訴えてくるサーシャ。
「唇が嫌なら、首筋にキスすればいいのか?」
そうしなければ、隔たりなく誰とでも仲良くしてしまうだろう。
しっかり、俺が牽制しないと、どっかへ行ってしまう。
「そんな所に、しないでくださいよ!!」
そのような事を言っても、こちらが困る。
なら、人前でも、俺のように無表情で過ごしてくれるのか?
「頬・・とか・・・おでこ・・に、するとばかり思っていました。」
可愛い顔で俯いて、そんな事を言って来た。
これはダメだな。
サーシャに人前で無表情でいる事を要請しても無理な事だ。
「そのように出来たらいいね。」
サーシャには、無理だろう。
「努力出来る事でもないし・・・。」
出来てくれたら、どんなにいいか・・・・。
「俺の愛情表現だから・・・。」
誰にも渡さない事を表す当然の行動なのだから・・・。
「でも、今はサーシャの意見に従えるね・・・人前じゃないから。」
”チュウー”
俺は、サーシャの口の中に舌をいれる。
これから、ハミッシュ陛下も来るのだ。
しっかり、サーシャとの貴重な時間を取らないで欲しいとアピールをしなければならないな。
サーシャが、俺のキスで腰を抜かす。
俺は、すかさずサーシャを抱きしめる。
「さて、早くしないとね。」
ハミッシュ陛下が来るまでであろうと、サーシャとの貴重な時間だ。
しっかり、俺でいっぱいにしたい。
「早くしないとって・・・何かあるのですか?」
困ったサーシャだよな。
まだ、俺の事を解っていないようだ。
「陛下が来るからね。その前にしっかりチェックしないと・・・サーシャの下着を・・・。」
まずは、ラスキン殿の渡しておいた下着を着ているか確認しないと、いつものようにお仕置きをして欲しいのかと思うほどに、違う物を着ているからな・・・。
「渡された物をちゃんと着けています!!」
これが本当なら珍しいな・・・それは、それで確認したいモノだ。




