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〇番外編〇  大忙しです。

 そして、夕涼み会の当日となった。

 天山祭りの最大のイベントは夜なのだが、その夜に向けての準備段階から祭り状態なのだ。


 穂野市にある護摩行を行っている寺の各所から、祭り専用のご先祖を想う護摩木を寺から護摩車を引き、市の端にある天山へと持って行くのだが、護摩車というのが、毎年趣向を凝らした山車のような車となっている。

 日中、観光客はいろんな護摩車を見に市を駆けまわっているのだ。


 そして、夜になると、天山での護摩焚きをする。

 護摩焚き場所の配置は、毎年変えている。

 その理由は、文字だったり、マークだったり、毎年変える事によって祭りを演出しているのだ。

 今年はどんな配置になるんだろう・・・。

 毎年天山祭り翌日に、今年はこんな感じに護摩焚きしましたとニュースで挙げられていた。

 今年は初めて直で見るので楽しみなのだ。


 だが・・・・。


 準備・・準備、準備、準備・・・そして、準備。ああ・・準備。やはり、準備。

 それも、前日からですっ!!


 夕涼み会前日から会社は、お盆休みに入っている。

 なので、前日の朝から頑張っていました。

 

 前日は、当日その場で作って、すぐに提供できない物を作った。

 冷やさないとならない物とか、味の調節に時間がかかる物とか。

 

 「うわ~、可愛い!!」

 私は、つい口にして言う。

 伊部さんが浴衣を着ているのだ。

 それも今時らしい、きっちりした帯に、ふんわりと兵児帯まで付けて、帯紐、帯留めまで付いている。

 髪飾りもふんわりアップで、彼女の可愛らしさが引き出されていた。

 伊部さんも嬉しそうにお礼を言ってくる。

 「浅見ン先輩も浴衣を着ればいいのに・・・。」

 「私、浴衣持っていないもの、それに、恥かしい話なのだけど、自分一人では着られないのよ。」

 伊部さんは驚いたように私を見た。

 「浅見先輩は、一着も浴衣を持ってないのでしたか・・・。」

 これまた、バッチリ似合う・・・彼の為に浴衣が存在するように似合っている利久さんが言って来た。

 「はい。それに、ホテルの浴衣ぐらいしか着たことがありませんよ。」

 利久さんにしては、珍しく目を大きく開けて驚いていた。

 「着たいと思ったことはないのですか?」

 「それはありますわよ。」

 私は、浴衣が普段着ではない事と、自分で着付け等が出来ないから購入していない事を言う。

 何せ、日々の当たり前の生活する上での、必要な物が優先。

 それと、いつ病気をしても大丈夫なように、保険料もしっかり払っているし、何かあった時の為に貯金もしっかりしないと・・・・。

 そう思うと、浴衣は、私の中では贅沢品になるのよね。

 例え浴衣一式セットが、そんなに金額がかからなくてもだ。

 「言ってくれれば、浴衣をお貸ししたし、私が着付けもしましたのに・・・。」

 少し、不満そうに伊部さんが言ってくれた。

 私は気持ちだけ受け取った。

 

 ・・・それが、正しいモノとなった。


 食堂のとあるブースに、人がすらりと並んでいた。

 これで、待ち時間のプラカードかあったら、何のアトラクションかしらと、考えるべきかしらね。

 待ち時間のプラカードは、出してはないけど・・・。

 このブースは、なんと毎年不評と言われているデザートブース。

 つまり、私が携わっているブースだ。


 「コーンカップで・・・白玉と、桃、パイナップル、キウイ、イチゴと・・アイスで!」

 「わたしは、クレープで生クリーム、イチゴとキウイかな」

 伊部さんと、利久さんが必死に手を動かしているも、一向に列が減らない。

 「井達ン!あんたも表の伊部ッチとリッちゃんの手伝いをしに行って!」

と、鈴原さんが指示を出した。

 指示を出したのには理由がある。

 彼も、浴衣で来たのだが、慣れない服に、慣れない下駄の為に、厨房の邪魔となっていた。

 そして、伊部さんと利久さんの2人だけでは、数をこなせないと思ったからだ。

 井達さんは、表への2人の手伝いへと行く。

 「アイスと、果物を買って来たぞ~!」

 今度は、九鬼さんが買い物から戻って来た。

 袋には、大量の果物と果物の缶詰、それとファミリーパックのバニラのアイスクリーム。

 「果物はこっち、アイスはすぐに表に出して、戻ったら缶詰めを開ける!」

 鈴原さんが、再び指示を出す。

 「すみません、九鬼さん、アイスを出す前に、冷蔵庫に冷やしているクレープ生地の出せる物があったら、出してください!!」

 私は、カスタードクリームを作りながらお願いをした。

 「アンコ・・・できた。つぎ・・・クレープ・・する。」

 村重さんは、すぐにアンコの鍋を冷蔵庫へと持って行く。

 冷蔵庫へと向かう頃に私もカスタードクリームが完成し、私も冷蔵庫へと向かう。


 私の次の作業は、果物のカットだね。


 ”チーン”

と、バタバタしている中で、ある音がなる。

 それと、同時に鈴原さん、村重さんと私が、一斉に音のした方を見る。

 「鈴原さんは、そのまま、アイスコーンのカップ作りに専念してください。」

 私がオーブンレンジの方へ向かう。

 「俺が、行くよ。」

と、表から帰って来た九鬼さんが向かってくれた。

 「ムラムラもクレープを焼いてくれ」

 九鬼さんが、村重さんに指示を出す。

 九鬼さんは、オーブンレンジから、シュー生地を取り出してきた。


 果物のカットが出来たら、私のすることは最中作りだね。 

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