〇番外編〇 夕涼み会
少し前に、出そう出そうとしていて、今になってしまった物です。
なので、番外編の扱いとしました。
『NAMIRUグループ技建株式会社穂野支社』
来濃支社から穂野支社に移動してから半年が経とうとしていた。
「こちらに浅見さんは、いらっしゃいますでしょうか?」
と、人事部の女性が私のいる経理部に来た。
私は、手を挙げながら返事をすると、人事部の女性がこちらにやって来た。
人事部の女性は、くじ引きの箱を抱えていた。
・・・何なのでしょうか?
私は戸惑いながら、人事部の女性を見る。
「浅見さん、この穂野支社は、毎年お盆休みの一日、この支社で夕涼み会を催しているのです。」
くじ引きの箱を私の机の上に置き、箱で隠れていた書類を私に渡す。
—――――――――――――――――――――――――――
穂野夕涼み会
ヨーヨー釣り
スーパーボールすくい
輪投げ
千本釣り(子供バージョン・大人バージョン)
食堂にて、新入社員たちによる食事もご用意してます。
—――――――――――――――――――――――――――
「天山祭りの日が、夕涼み会の日となっています。」
天山祭りって、有名な祭りじゃないの。
私は、窓の外を見る。
うん、なるほどね・・・ここからの祭りの眺めは絶景だわ。
毎年、この日に夕涼み会をする意味は理解ができた。
「その書類に書かれているように、新入社員たちが食事を用意する決まりとなっています。」
はいはい。
「浅見さんは、新入社員ではございませんが、こちらに移動になって初めてです。つきましては、浅見さんも新入社員の扱いとなります。」
え?
私は、面食らってしまった。
「えっと・・・当日行くところがありまして・・・。」
「・・・行くところを見つけますの間違えではありませんか?」
はい、その通りです。
そして、やはり却下されました。
「提供する食事の分担をするために、くじを引いてください。」
人事部の女性が、机の上に置いたくじ引きの箱を私の前に持ってくる。
私は、恐るおそる、箱に手を入れる。
おお・・紙でなくボールだわ。
この感触・・・スーパーボール。
夕涼み会の残り物かしらね。
私は、ボールを一つ取る。
「デザート。」
私は、ボールに書かれている文字を読む。
”ああ・・・・”
と、周りから悲痛の声が漏れて来た。
皆、心配そうに私を見る。
「それでは、浅見さんはデザート担当になりますので、よろしくお願いします。」
人事部の女性が、箱を持って立ち去っていく。
私の手には、デザートと書かれたスーパーボールが残された。
同じ部署の女性が、私のところに来る。
「浅見さん、可哀そう・・・・。」
私は、可哀そうと言われている意味を聞く。
「デザート部門は、一つしかないのです。」
「数年前に、デザートで綿あめを出した事があったんだが・・・デザートは一種類だろう。『それしか出さないのかよー』って苦情があったりしてな・・ほぼデザートは、毎年苦情が殺到するんだ。」
隣の席の男性社員も説明に加わってくれた。
「デザートも数種類提供すればいいのに、縁日の景品でお菓子を出すから、デザートは一つでいいだろうって事でな~・・・。」
「全ての食事の苦情係にもなっている雰囲気なんだよね・・・。」
部署の皆が、未だに哀れみの目で私を見ていた。
「皆さんの意見を参考に頑張りますね。」
デザート一種類のみの提供はなし・・・・わかったわ。
「それよりも、千本釣りって、何本もある紐の内一つを選び、その先にある景品を頂くモノですよね。」
縁日に見かけるモノだよね。
「子供バージョンと大人バージョンとがあるのですが、どうしてでしょうか?」
わざわざ分けずに一色単にすればいいのに・・・。
「景品のレパートリーに関りがあるんだよ。」
子供バージョンの景品は、お菓子、文房具が主な商品。
「今年の大当たりはきっと、冬にでるゲーム機の無料獲得券だろうな・・。」
ああ、テレビのCMでやっていたゲーム機か・・・。
クリスマスに合わせての販売だから、先の話だけど、無料で手に入るのだから、子供はうれしいわよね。
「大人バージョンの大当たりは、今年で6年目の持ち越しになっている景品で、50グラムの金塊」
今、金の相場が高いから50グラムだと、数十万単位の物だぞ。
「次が、高級レストランのペア無料食事券だよね。」
部署の人たちが、今年はどこのレストランなのだろうかと予想している。
「そんなに高価な物ですと、他の一般景品は、ポケットティッシュともありそうですね。」
半分程が、ポケットティッシュだと教えてくれた。
「他は何でしょうか?」
ポケットティッシュの他に何があるんだと気になり聞いてみる。
「ゴム」
と、即答で隣の席の男性が答えてくれた。
前世編なのですが、今回は明るい話になります。
そんでもって、前世編続きます。




