忘れていたかった・・・
「それで、話しとは何だ?」
ハミッシュ陛下は、ソファーに向かいながら言って来た。
「ハミッシュ陛下から、どうぞ・・・。」
私は、ハミッシュ陛下に手を向ける。
すると、私にもソファーに座るように促された。
私が座ると、ハミッシュ陛下は口を開く。
「ロゼリスの捜索部隊を出すことになった。」
「・・・・。」
私は、複雑な気持ちになる。
「サーシャさん、大丈夫ですか?」
カリスタ様が心配そうに私の顔を心配そうに覗く。
私は苦笑いをしながら平気である事を伝えた。
姉さまの事を、忘れてなかったわけではない。
関りを持つと、嫌な事しか起こらないのが目に見えている。
だから、はっきりと言えば、忘れていたかたのだ。
だけど、姉さまを放置したところで、有害にしかならないだろう人物だ。
早く、捕まえるべきなんだろう。
本当に厄介だな。
「白き傭兵団団長のチェスター・メシャムは知っているな。」
ハミッシュ陛下の質問に私は、『はい』と、答えた。
キマイラ事件の時にあったケートさんの弟さんだ。
「今現在、白き傭兵団の活動は、実質休止をしている。ほとんどの者が、ドラゴンと一緒にピューゼンで療養中だ。」
今現在というか、チェスターさんと初めて会った当時から、傭兵団の活動は休止していたんだ。
私の事を調べようとして、傭兵団方々は、ことごとくウィリアム伯父様の捕虜となっていたのね。
「ピューゼンで療養中の者以外が、ロゼリスの捜索部隊として動いて貰っている。」
その中でドラゴンと絆を結んでいる傭兵は8人と説明をしてくれた。
「それから、ロゼリスと会った交換島の国家鑑定士のルイ・シェルもそれに加えている。」
ルイーズさんが、姉さまの持って来た物を鑑定したんだ。
「少人数ながら活動をしている。」
もう、活動しているのね。
「この頃、ファーテンの涙という媚薬が、出回りだしているせいか、強姦事件が多発しているのよ。」
私が頭から被た媚薬が、ファーテンの涙だとカリスタ様は、説明してくれた。
無理やり襲っておきながら、合意に持ち込むってことか・・・。
そして、合意に持ち込むという事は、把握している以上に強姦されている人が、たくさんいると見るべきね。
つまり、姉さまの事を心配して、捜索部隊を出したということか・・・。
「ロゼリスの捜索部隊の本部は、ブルーア地方を納めていた元伯爵の家が捜索本部となっている。」
・・・ブルーア地方?
元、伯爵って事は・・・。
「元、ブルーア・ラリマー邸が本部という事ですか?」
ハミッシュ陛下は『そうだ。』と、返事をする。
元ってことは、ラリマー伯爵は、貴族位を捨てたのね。
どちらかというと、はく奪の方かしらね。
息子は、2度もドラゴンの逆鱗を打たれたし、伯爵自身もキマイラ事件の際の邪魔者でしかなかったからね。
現在、国家鑑定士長官となったアーサー・カンランさんが、ラリマー伯爵の無能さを伝えたか、別件で新たな無能さをさらけ出したか・・・。
その両方と言ってもおかしくない感じだったわね。
「ハミッシュ陛下、その部隊の司令塔として、デリック先生を起用して頂けないでしょうか?」
私は、ハミッシュ陛下にお願いをする。
「起用したい理由を説明してくれないか?」
ハミッシュ陛下の求めに、私は手に持っていたベロア調の袋をテーブルに置く。
母の形見のリュヌの銀の櫛だ。
「姉が見つかれば、この形見を持って、伯父のウィリアムに行かないとなりません。」
姉さまの処遇で未だに、この形見をどのように使用すべきかわからない。
だが、形見を使用する事には変わりない。
「ですからそこ、姉の事で使うまでは、人に為に使うべきだと・・・。」
ロクでもない事で使う前に、少しでも素敵な事で使用したい。
「デリック先生は、交換島の国家鑑定士になりたいと願っています。」
デリック先生の娘のリディアちゃんが、祖先のいた地に住みたいと言っていた。
「少しでも、その力になりたいのです。」
少し間をおいてハミッシュ陛下は、テーブルの上に置かれた母の形見を手に取る。
「わかった。こちらは、俺からデリック先生に渡しておく。」
私は、頭を下げお願いをした。
「それで、サーシャからの話しは何だ?」
ハミッシュ陛下は、切り替えるように、私に振る。
「それは・・・。」




