妬き加減にも注意
「サーシャ様!!」
と、学園の正門の前にフィオナが待っていた。
「フィオナ・・・どうしたの?」
私は、フィオナに近づくと、待ってましたのように一緒に馬車の乗合所まで行く。
向いながら、先週の帰路の途中で、媚薬をかけられる事件が再び起きないように、迎えに来てくれたと説明してくれた。
私はフィオナにお礼を言い、フィオナも女性だから気を付けるように言う。
「そうだった。」
私は、思い出したかのように、再びフィオナにお礼を言う。
「婚約者のお守りとして持っていた鈴蘭柄のコンパクトミラーなんだけど、寮の部屋で鏡が割れていたの。私を守ってくれたみたい。」
フィオナは、驚いた顔をして私を見る。
「まだ、ヘンリー様の婚約者だし、鈴蘭柄の物を持っていないとっておもって・・・。」
私は、襟元の鈴蘭のブローチを見せる。
「その・・・ブローチ!!」
”だきゅー”
と、いきなりフィオナは私を抱きしめた
「嬉しいです!さすがはサーシャ様です!!ああ、良かった!!」
自分の事のように喜んでくれて、シュークリームの入った紙袋を持ってくれた。
中身は何だろうと見つめるフィオナ。
「全員に回るか分からないけど、屋敷の皆へのお土産。小さい箱に入っている物と、瓶に入っている物はヘンリー様のお土産だけどね。」
フィオナと微笑みながら乗合所の馬車に乗る。
「ヘンリー様のお土産はまだ作り途中なの。」
その一言で、すぐに製作できるように図ってくれる事を約束してくれた。
流石は頼りになるフィオナだわ。
必要な物を伝えると、どこに何があるか考えを巡らせてくれた。
こうして、ルベライトの屋敷に戻った私とフィオナは、そのまま厨房へ行く。
カートに、紙袋の中の小さい箱と瓶、そして中華鍋と木べら、そしとバケツをもって厨房を出る。
「コスモ。ただいま!!」
と、私はコスモのいる部屋へと来た。
コスモは私の頬に顔を寄せてくれる。
私はコスモを撫でる。
「コスモ。実はヘンリー様にお土産があるんだけど、まだ仕上げてないの。仕上げてからヘンリー様のところへ行きたいのだけど、協力してくれる?」
私がそう言うと、コスモは頭を上下に振ってくれた。
「ありがとう。それでね。コスモの力も借りないと、仕上げられない物なんだよね。力・・・貸してくれる?」
コスモは、一度、鼻息を吹いてから、頭を上下にしてくれた。
微笑してから了承してくれたみたいだね。
私は、コスモの力を借りながら、シュークリームの仕上げに入る。
しばらくすると、コスモは『ギューギュー』と、鳴きだした。
「コスモ、どうしたの?」
と、作業の手を一端止めてコスモの頬を撫でる。
コスモは、何度も小さく鳴くだけで理解できない。
・・・うん、リオンじゃないから、コスモの伝えたい事が判らないわ。
「サーシャ?」
この声って・・・・。
その声で、コスモが言いたかったことが『隠れて』だと判明した。
「へ、ヘンリー様・・・・。」
私は、一歩下がりながら声の主に対して言う。
「どうして、ここにいるんだ?」
「ヘンリー様のお土産の完成をさせる為に・・・。コスモの協力がなければ仕上がらない物ですから・・・。」
声の発し方から、ヘンリー様が少し怒っているように感じる。
徐々に近づいて来るヘンリー様。
どうしよう、お土産の完成まで、もう少し時間がかかる。
けど、作り上げないとならない。
えい、こうなれば!!
”チュッ”
と、私はヘンリー様の頬にキスをする。
「ただいま、ヘンリー様。もう少し待っててくださいね。」
と、すぐに作業に取り掛かる。
頬が少し熱を持っているのが分かった。
”ギュウッ”
と、ヘンリー様にバックハグをされてしまった。
ああ・・・カップルのあるあるキッチンシチュエーションだよ。
”チュッ”
私の耳にキスをしてきたヘンリー様。
作業の手が止まる。
「手が止まっているよ。」
ヘンリー様のせいで、作業が止まったんでしょう。
その張本人が指摘するってなんなのよ~。
私は、ヘンリー様に翻弄されながら、必死に作業に取り掛かる。
そして、やっとの思いで作り上げヘンリー様の前に持って行く。
「もこふわと名前を付けたモノのアイスクリームバージョンです。」
そう、アイスクリームのタネまでは、学園の厨房で作って、コスモに雪を提供して貰い作り上げた物。
アイスクリーム。
そのアイスクリームをシュークリームの皮に挟んだのだ。
「通常のもこふわに挟んである物はカスタードクリームですが、これはアイスクリームという物を挟みました。アイスクリームは、私が初めて作った物です。」
ヘンリー様は、私の手からそのままシューアイスをかじる。
「うん、冷たい・・・サーシャみたいだな。」
どういう事ですか?
「もこふわの初めを、俺が食べせてくれなかっただろう。サーシャがこんなに冷たいとは思わなかった。」
「そんなこと言っても、先週のお礼にライナスさんに教えたです・・・だから、仕方がないって思ってください!」
シューアイスを食べているヘンリー様に向かって言った。
「それでもな・・・。」
「それでもです。」
シューアイスを食べ終わたヘンリー様に向かって言った。
そして、ヘンリー様の頬についたアイスクリームを舐めてみた。
「頬に、アイスクリームが付いていました。」
ヘンリー様、これで機嫌を直してくれ。
私は、とっても恥ずかしい。
「そうか・・ならサーシャの手にもアイスクリームが付いているな。」
と、ヘンリー様が私の指を舐め始めた。
「ま、待って、ヘンリー様。ヘンリー様の次はコスモにも食べさせたいのです。」
アイスクリームを作るのに力を貸してくれたのだ。
コスモには食べる権利がある。
私は、シューアイスをコスモの口の中に放り投げる。
”ギュオッ”
と、アイスの冷たさに少し驚いたように声をあげ、目を見開いた。
「おいしい?」
「ビックリしたけど、おいしいって」
ヘンリー様の通訳に、私はコスモに微笑む。
「よかったわ。ありがとうコスモ力を貸してくれて。」
”ギュー”
と、コスモは凛々しく鳴いてくれた。
「サーシャ。一日遅れだが、お誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。」
ヘンリー様は私を抱きしめる。
「夕飯は人を呼んでいるから、早く支度をしに行こう。」
と、ヘンリー様は私の手を引いて、コスモの部屋を出る。




