表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

259/423

焼き加減に注意

 朝食を食堂で摂っていた。

 野菜に、ベーコン付きの目玉焼き、それとオニオンスープとパン

 転生前での、理想の朝食が、現実となって目の前にある。

 この恵みに、感謝するしかない。

 「サーシャ様。」

と、私を呼ぶ声がして振り向くと、ラスキンさんがそこにいた。

 「おはようございます。ラスキンさん。」

 私は、何だろうと不思議に思いながらも、真剣に私を見ているラスキンさんに挨拶をする。

 「サーシャ様。お願いがあります。」

 私は、異様なまでの真剣な眼差しで言ってくるラスキンさんに、少し呆気にとられるように、コクっと頷く。

 「本日は、学園長に許可をとってございますので、サーシャ様はこの後、食堂で昨日のもこふわを製作してください。」

 お昼までエンドレスに、シュークリーム作りですか・・・。

 ラスキンさんは、相当シュークリームが気に入ったようだ。

 「昨夜から、もこもこ、ふわふわが止まらないのです。夢でも溢れる程に、もこふわが一つ・・・もこふわが二つ・・・もこふわが三つ・・・あぁ、大量のもこふわの夢・・・幸せでした。」

 そのまま、永眠しても本望なぐらいに悦ってますよラスキンさん。


 私は、朝食終了後、エプロンを持って食堂の厨房に入る。

 待ってましたと言わんばかりに、ラスキンさんと、ラスキンさんの部下が数名いた。

 「・・・ある意味、ひかれる格好ですね。」

 筋肉隆々の厳つい男性が、フリフリの白いエプロンを付けている。

 似合わなすぎだが、それがかえって目を引き付ける姿となっている。

 ギャップ萌えと言うか・・・ギャップ哀れという、いたたまれないような感情が湧きたってしまうのだが・・・。

 「呆気に取られていますね。」

 そうも言うかもしれないな。

 「この方たちに教えながらなのは・・・理解できるのですが・・・この方たちを選んだ理由を知りたいです。」

 私は、ライナスさんに怖いもの見たさで聞いてみた。

 「昨日、頂いたもこふわを部下たちに、お土産として持って帰ったら、この者たちが偉く気に入りましてね。」

 筋肉隆々の方たちに詳しく理由を聞く。

 「とても身近に感じたのです!」

 ”ムキムキ”

と、ボディービルダーの決めポーズをするながら言う。

 「どのように身近に感じるのですか?」

 ”ムキムキ”

 また別の決めポーズをしながら話し出す。

 「もこふわの盛り上がり方が、俺らの大事な筋肉のように感じたのです。」

 ”ムキムキ”

 背中も見てねの決めポーズをしだす。

 「日々筋肉を鍛え上げなければ、贅肉となってしまう切なさを、あの柔らかさが物語っていて、とても他人事のように思えないのです。」

 ”ムキムキ”

 再び正面からの決めポーズをする。

 

 そのような事を思うとは・・・なんとも・・・罪な存在だわね。

 シュークリームという名前もだが・・・。


 私は、シュークリームをコツを教えながら、筋肉隆々の方たちと作る。

 シュークリームを窯で焼いている最中、筋肉隆々の方たちは、窯の前で目を輝かせて見守もっている。

 ・・・ムサ可愛いというのだろうか。

 「もう少し焼いた方が、美しい筋肉のように見える気がするのだが・・・。」

 筋肉隆々の方たちが窯の蓋を開けて中を見て感想を言う。

 ・・・美しい筋肉?

 窯の前の方たちは皆、素肌が小麦色に焼けている。

 今、作っているシュークリームはシンプルな物。

 クッキーシューのような応用を作っていない。つまり・・・焦げる~!!

 「そんなに、焼すぎちゃダメ!!」

 私は、窯からシュークリームの皮を取り出すように言う。

 筋肉隆々の方たちはショボンとしながら、シュークリームの皮を取り出す。

 ・・・焦げていない。

 丁度良い焼き加減のシュークリームの皮に、私はホッとしているが、筋肉隆々の方たちは、悲しそうな顔をしていた。

 「美しく筋肉が見える色味があるのは理解します。ですが、完璧な筋肉を作ってしまうと、後は崩れるというか・・・衰えるだけですよ。」

 筋肉隆々の方の目の輝きが変わる。

 「まだ、完璧な色合いではないシュ・・・もこふわを見て、自らの筋肉の完璧を目指そうという気持ちになれたらと、私は思うのですが・・・どうでしょうか。」

 私は、言葉を詰まらせていた。

 だけど、筋肉隆々の方たちは、目を潤ませ感動の眼差しを私に見せてくれた。

 

 その後、カスタードクリームの作り方も教えると、流石は筋肉。

 私なら、休み休み泡だて器で、カスタードクリームをかき回すのだが、一切休みなしの、電動泡だて器のような働きをしてくれた。

 凄いとしか言えなかった。


 お昼に近づく頃には、筋肉隆々の方々と仲良く笑いながらシュークリームを作っていた。

 

 「サーシャ様、お土産にもこふわを持って帰られますよね。」

 窯から焼きたてを出しながら嬉しそうに言い。

 決まっているように、用意をしてくれる。

 「あっ、そうだわ。何個かもこふわの皮だけの物を入れておいてください。」

 そう言うと、私は別の作業をしだす。

 「何か作るのですか?!」

と、ラスキンさんが目を輝かして言って来た。

 「もこふわの中身を途中までね。」

 私は、そのように答える。

 この厨房では・・・作れないからね。

 「まずは、ヘンリー様に食べさせたいの!」

 その一言で、残念そうにしているラスキンさんも仕方がないと思ったらしく、諦めてくれた。


 こうして、今日の授業・・・と、言えるかという授業の時間が終わり、私は大きな紙の手提げ袋を持って、帰路へと向かう。

 

 


 


 

 

 

 

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ