鈴蘭のお守り
月曜日の放課後になった。
私は、今日一日、授業と言うモノを受けられていたのだろうか・・・?
朝に、熱が下がったのはよかったが、朦朧と時が過ぎ去っていった気がする。
金曜日の放課後から意識があやふやなのだ。
今日は、ゆっくり休もう。
そう思い、寮の部屋へを入る。
・・・うん、ゆっくり休めないぞ。
私の部屋、泥棒に入られたような散乱さが、目に入ってくる。
制服が、下着が、床に散乱。
タンスの引き出しも開けたまま・・・それも下着の入っている引き出しが・・。
そして、ベットに至っては・・・・どうすればいいのか、分からないのだが。
困ったな・・・。
まずは、換気が必要ね。
私は、ゆっくりと、だるさを感じながら片付けをする。
だるさを感じながらの片付けは、投げやり気分が表に出てくるため、即決力が現れる。
はい、洗濯物。
はい、捨てよう。
はい、掃除。
はい、必要な物を買いに行こうで、一石二鳥以上へと向かう。
「いらっしゃいませサーシャ様!」
と、ラスキンさんが元気よく声をかけてくれた。
「熱が下がって良かったです。元気そうでは・・・なさそうですが。」
ご名答。
もう、疲れてます。
「ラスキンさん、布団が残念な事になってまして・・・。」
その一言で、察してくれてようだ。
前世では、布団も洗濯することが出来るコインランドリーがあったけど、この世界は、コインランドリーなんて、ないからね。
どうなっているんだろう。
私は、ラスキンさんに聞いてみた。
「サーシャ様ほどの家でしたら、布団を月一単位で交換して、洗濯をしているのではないでしょうか。」
「布団を洗濯する技術ってあるのですか?」
あるようだ。
ドラゴンの力を借りて布団を洗濯していると説明してくれた。
でも、そんな光景見たことないぞ。
首をかしげていた私に、ラスキンさんが答えてくれた。
「屋敷の中ではなく、綺麗な川や湖の近くの広大な土地で洗濯をするのですよ。暴風を操る事になりますので、屋敷の中では布団は洗濯できません。」
ほぉ~・・・なるほどね。
何か、その光景を見てみたい気がするわね。
ラスキンさんは、新しい布団を用意して、汚れた布団の方は洗濯までしてくれると言ってくれた。
「ありがとうございます。」
ラスキンさんはニコッと微笑んでくれた。
だが、この微笑み・・・商売人の商売用の微笑みだ。
何を企んでいるのですか?
わかりきっている事か・・・。
「そうですね・・・今度の木曜日はどうでしょうか。新しいデザートのレシピを提供しますね。」
待ってましたかのように満面笑顔で喜んでくれた。
「もう一つ、購入したい物がありまして・・・。」
そう言い私は、制服のポケットから、コンパクトミラーを出す。
「メイドの故郷での風習で、鈴蘭の花は婚約者を守る花とされていて、鈴蘭の模様が施されて物を持つという風習があるんです。」
私は、鈴蘭柄のコンパクトミラーを開ける。
「あっ」
ラスキンさんがつい言葉が出る。
中の鏡が割れているのだ。
「メイドの故郷の風習は、あながち嘘ではないみたいです。」
何となく、コンパクトミラーが身代わりになってくれたような気がした。
だって、自分がおかしいとわかっていても、どうする事が出来なかった。
なので、もしかしたら、ヘンリー様以外の男の人に体を許してしまったかもしれない。
・・・・恐ろしい。
なので、この割れた鏡を見て、実はホッとしている。
私の体を守ってくれたと・・・。
「なので、鈴蘭の模様の何か売ってませんか?」
そういうと、ラスキンさんは店の奥へと行く、そして両手程の大きさのトレーを持ってくる。
「このような物がありました。」
と、トレーには鈴蘭柄のブローチが入っていた。
「・・・可愛い。」
私は、鈴蘭のブローチに惹かれるモノを感じ購入をした。
すぐにジャケットの襟のに付けた。
「お似合いですよ。」
ラスキンさんは、鏡を持って来てくれてブローチの付けた姿を見せてくれた。
「ありがとうございます。」
私は、鈴蘭のブローチに手を置く。
「どうか、私をお守りください。」
そう、つぶやき、そして願った。




