幻はいらない
ブックマークありがとうございます。
誤字も教えて頂きありがとうございます。
媚薬って・・・本当に効き目が相当あるのかしらって、そういえば前世で思ったことがあったわね。
ドラマとか映画で、飲んだら・・凄かった・・・・みたいな事で、内容が進むが、うっさん臭いと感じていた。
よく言われている媚薬効果のある食材って、チョコレートよ。
いたって普通に食している物でしょう。
だから、なおの事『媚薬の効果は妄想です。』って、感じていた。
でも、ここは前世とは、違う世界。
媚薬が、媚薬で、媚薬らしく、媚薬をしているかもしれない。
・・・・えっと。
脳内おかしくなり始めているな。
そういうことは・・・媚薬の効果が大って事だ。
・・・恐い。
私・・・どうなってしまうの?
私は、やっとの思いで部屋に入り、鍵を・・・閉める。
「サーシャ様。シャワー室へ行き・・・水・・・お湯でなく、水をかけてください。」
ドア越しからラスキンさんの声が聞こえる。
・・・風邪ひくの決定で、冷水をかけるのね。
でも、本当に水なの?
幻聴・・・なのではない?
私は、念のために聞き返す。
風邪・・・引きたくないモノ。
「冷水です!!」
きっぱりと、冷たい現実を言ってくれた。
”シャーーーー”
と、浴室に入り、冷水のシャワーを浴びる。
”ブルブルブル”
体が凍えてしまう。
寒い・・・凄く・・・寒い。
だけど・・・。
体の中は・・・熱い。
・・・胸がえぐられるように・・・熱く、ムズムズする・・・・。
「はあ・・・はぁ~・・・はーー・・・」
熱いのか、寒いのか分からないが、息が荒い。
助けて・・・ヘンリー様。
「ヘンリー様・・・あっ」
口にしては・・・ダメだった。
「ヘンリー様、ヘンリー様・・ヘンリー様・・・。」
もう・・・・止まらない。
ヘンリー様の名前を口にしたら、止まらなくなった。
呼ぶたびに涙が零れるのが分かる。
浴室に倒れ込むが、ヘンリー様を何度も、何度も・・・呼ぶ。
逢いたい・・・逢いたい・・・逢いたいよ。
自分の体を抱きしめる力が強くなる。
部屋の外では、ラスキンさんが何か部下に指示を出している。
だけど、内容が・・・私のヘンリー様を呼ぶ声でかき消されている。
ヘンリー様に・・・逢いたい。
その気持ちで、ヘンリー様を呼ぶ声が止まらない。
薬のせいと解っているにも関わらず、止まらないって・・・情けない。
情けない・・・辛い・・・悲しい・・・。
でも、ヘンリー様に逢いたい気持ちでいっぱいで、いっぱいで・・・止めらない。
”バタンッ”
「サーシャ!!?」
ヘンリー様が目の前に見える。
どうして?
近づいて・・・触れて・・・っ
「触らないで!!」
”バシャーーー”
と、私は目の前の人を振り払い、シャワーヘットを相手に向ける。
「サーシャ。な・・何をするんだ?!」
「おかしい私に触れないで!!」
私は、叫びながら言う。
だって、ヘンリー様は、ルベライトの屋敷にいるはずだもの。
「俺だ。ヘンリーだ!!」
「いやーーー!!」
私は、冷水をかけられながらも近づいて来る人に、腕を振り払う。
「私は、おかしいの!だから、目の前が幻覚かもしれない、幻聴かもしれない!!」
ヘンリー様に逢いたい一心で、目の前の人が実は別人かもしれない。
「そんなの嫌!!ヘンリー様の幻覚も幻聴もいらない。ヘンリー様自身じゃなきゃ嫌だー!!」
涙で目の前の人も歪み姿形が判らない。
やはり・・・偽物だ。
「・・・ヘンリー様自身が欲しいの。だから、幻は消えて!!」
私は悲鳴をあげるように訴える。
歪んだ姿形のモノが、目の前から消えた。
「・・・ヘンリー様・・・ヘンリー様・・・逢いたいよ~・・。」
再び、ヘンリー様を呼んだ。
”ガタンッ バタンッ”
と、浴室の外で音がする。
「サーシャ・・・どうして、俺の選んだ下着を着なかったんだ?」
・・・え?
私は、涙を拭う。
目の前の人が、ヘンリー様の選んだ薄緑色のパンツを持っている。
「・・・確かこの下着だった気がするけど、違ったかな?確認させてくれないかな・・・。」
ヘンリー様が近づいて来る。
そして、私の手に小箱を持たせた。
全て陶器のスプーン・・・・ヘンリー様で間違えない。
「ヘンリー様!!」
私は、ヘンリー様を抱きしめた。
「ヘンリー様・・・ヘンリー様・・・ヘンリー様!!」
再び、ヘンリー様を呼ぶ事しか出来なかった。
シャワーが止まり、そして再びシャワーから流れて来る。
・・・温かいお湯だ。
「ああっ!!」
体に流れる旋律が溢れて、声となってしまった。
「俺自身をしっかり刻め!!」
ヘンリー様がそのように言うと確認を言わんばかりに、下着に手をかけた。
「・・・・この際、徹底的にお仕置きしても支障がなさそうだから、遠慮はしないよ。」
えっと・・・よろしくお願いします。