・・・行く先
途中から、ハミッシュ陛下の視点に変わります。
聖ライト礼拝堂出入り口の前に広がる噴水広場。
”ギュギュギュギュギュ・・・”
ユピテルは噴水の水の出ているところに顎を乗せ、気持ちよさそうに水の刺激を受けていた。
ルベライト公爵宛ての手紙を渡された。
『王冠の乗せられたHの文字に雄のドラゴン』の青い封蝋が施されている。
「これをルベライト公爵家に持っていけば、使用人として雇ってくれるはずだ。」
普通なら、多少なりとも使命感ってモノをもって手紙を受け取ると思うのよね。
でも、ユピテルの気持ちよさそうな鳴き声のBGMと、そのまったり体制が気になり、そっけない態度で受け取っていた。
「・・・?」
私は、受け取った手紙の青い封蝋をよく見る。
「これ、粉のパールの他にも蝋に混ざっていますね。」
私は手の上の手紙を前後左右に傾け、光の加減を変えて見る。
通常の封蝋の蝋に、粉のパール入れると蝋に上品な光沢がでるのだ。
「ブルーパールの粉を使用しているようなので、深みのある光沢があるのですが、光の加減で虹のような色も発しているのですよね・・・。」
そう、青い蝋の中に、微妙だが螺鈿のような感じの光沢が見えるのだ。
「よくわかったな。王族のみ許されている蝋を使っている。青の公爵家であるクローライト公爵家と区別するために、30年ほど前に開発したんだ。」
その開発途中で、マシュアクセサリーの製作につながるモノも発見したことも説明してくれた。
”ギュギュギュギュギュ・・”
相変わらずユピテルは水の刺激を堪能している。
「ユピテル、そろそろ出るぞ」
”ギュギュギュギュギュ・・”
まだ、堪能したいと言わんばかりにまったりしていた。
「これから、行こうとしている場所は、ユピテルが順位を付けた噴水10選の3番目の場所なのだが・・・。」
”ギュウッ”
すぐに、キリッとするユピテル。
その背にハミッシュ陛下が乗り、ハミッシュ陛下の前にカリスタ様を乗せる。
「じゃあ、ルベライト公爵家の事、よろしく頼むな。」
そういうと、ハミッシュ陛下、カリスタ様を乗せユピテルは東の空へ飛んで行っった。
姿が見えなくなるまで見送り、馬小屋へ行く。
「・・・・あっ、忘れた。」
つい口い出してしまったが、ハミッシュ陛下が購入している万年筆の店の場所を聞き忘れてしまったことを思い出すのであった。
◇ ◇ ◇
「あなた、行く先が違いませんか?」
カリスタが、不安そうに言ってきた。
「ドラゴンの子供の圧死の件は、そのうち報告が挙がるだろう。」
まだドラゴンの子供が圧死することがあるとは、悲しいことだな。
「カリスタが、育児に不安なドラゴンのために皆で子育てをしようと、ドラゴンたちに呼びかけ、我々人間もサポートしているのにな。」
育児に不慣れなドラゴンが、誤って子供のドラゴンを圧死させてしまう事例が昔は結構出ていた。
それをカリスタは、シスター時代に改善策を国に切りだしてきたのだ。
それがきっかけで、ドラゴンが打ち解けて俺との伴侶の絆を結ぶことが出来た。
今では『国母の聖女』と言われることもある。
『殿下自身の心はどこにありまして?』
125年前の俺は、国のとしての俺しか存在していなかった。
次回。ハミッシュ陛下の過去話です。