昆布と梅の饗宴
次にテーブルに置かれたのは、つぶつぶオレンジゼリー。
ここで、昆布と梅の食材を使っていない料理を出したのは、ルベライトの事を忘れてませんアピールの為である。
一応、ドラゴンからしたら、私はヘンリー様の妻。
ルベライトの嫁としてルベライトの特産を使った料理をお出ししないと、嫁失格でしょ。
メイン2品の間に出すのは、クローライトとキンバーライトの間を取り持つという気持ちをアピールしてます。
「実は、次の料理に行く前に、お話をしたいことがあります。」
「何だね。サーシャの事だからワクワクするな。」
と、マティアス様が嬉しそうに言ってくれる。
私は、答えに添えるかわからないが、一生懸命頑張る事を笑顔を見せる事で伝えた。
私はカートの上に置かれた、おぼろ昆布を削った残りの昆布を取り出す。
これ以上削ると、昆布が切れてしまうために削る事が出来ない残りのシートを見せ、その事を伝える。
「おぼろ昆布を削り残ったこちらのシートも、使い道があります。」
「捨てる所がないのだな。」
ライ様が感心しながら言ってくれた。
「こちらを使った料理は、お土産としておりますので楽しみにしていてください。」
満面の笑顔で皆に伝える。
「お土産まで用意しているとは・・・嬉しいねぇ。」
と、エリック様がヴァネッサ様を見ながら言うと、ヴァネッサ様は同意する。
「ですが、今すぐ食べたいです。」
と、ラスキン様が言って来た。
嬉しい悲鳴だ。
でも、お土産にしたのには意味があるのよね。
私は、おぼろ昆布の残ったシートを置き、ある物を取り出す。
「こちらは、ごく普通の柿の葉です。」
本当に、ごく普通の柿の葉だ。
「ご存じと思いますが、聖ドラゴニア学園の金曜日は、放課後ドラゴンと絆を結ぶためや、実家に帰るために、お弁当箱と柿の葉が食堂に用意されています。」
「お弁当箱は分かるけど、柿の葉を用意するのはどうしてなの?」
ヴァネッサ様は首をひねる。
「防腐作用があるからですよ。」
答えてくれたのはラスキンさんだった。
流石、毎週食堂に用意してくれているだけの事はある。
そして、やはり知らない人の方が多いようだ。
・・・良くこれまで、お腹壊す学生がいなかったよな。
学園に訴えてないだけで、いたりして・・・が、正しいのかな?
「防腐作用と言っても、何もしないよりかは、効果があるという程度ですが、知らない方々の方が多いです。」
学園でも、どうして柿の葉が置いてあるのか知らない人の方が多かった。
だから、今は張り紙をして、柿の葉に包んで弁当箱に入れる事を進めている。
「今回、お土産として出したのは、その事を知って貰おうと作った料理です。」
お土産として用意しているのは柿の葉寿司。
ただ、この世界は魚を生で食べる習慣がどこにもない。
なので、ゆでだこを用意した。
後は、タケノコと椎茸を押し寿司のネタに、おぼろ昆布の残りのシートに味付けした物を上に乗せ、それを柿の葉で包んだ。
しっかり、柿の葉は食べる物でない事を説明を入れる。
いたんだな・・・柿の葉を食べた学生が数名ね・・・やれやれ。
「おぼろ昆布を使った料理を召し上がって、昆布が出汁以外でも使う事が出来るとわかって頂けたかと思います。」
私の質問に、皆が嬉しそうに同意をしてくれた。
「ここで、昆布だしの事について話をさせてください。」
嫌だと言っても、ごり押しで話するけど、誰も嫌とは言ってこないわね。
まずは、良かったわ。
「昆布だしは、出汁を取った後は昆布は捨てる。これが普通のようです。」
私は残念な顔をしながら言う。
前世貧乏な生活をしていた私は、出汁を取った後の昆布を捨てられずに、その場で食べていたりした。
だって、食べられるのにもったいないでしょう。
大根の葉並みのもったいなさよ。
「ですが、おぼろ昆布を召し上がってわかったように、昆布は食べられます。黒い食材という事で受け入れられないでいる。」
私は、カートの上の板海苔を見せる。
「こちらは、ピューゼン王国で生産が盛んで、ダンビュライト領でも生産していて、そのうちルベライト領でも生産をしようとしている海苔です。」
私は、先ほど出した飾り太巻きで海苔を使っていた事を伝える。
太巻きの外側は、おぼろ昆布で巻いたが、中の枠は海苔を使用していた。
「なんとなく黒い線が見えていたが、海苔というモノだったのか・・・。」
マティアス様が頷くように言う。
「海苔を使った料理を何度か作ったことがございますが、全面に黒を使うと嫌がられてしまいます。ですが、この海苔を細く刻まれた物。」
私は、刻み海苔の入った皿を取り出し、大きさ形が分かるように皿の上でパラパラと振りかける。
「こちらを混ぜご飯の上に振りかけるなどする料理は、太巻きと同じように受け入れやすいようです。」
ちらし寿司の上のかける海苔ね。
「出汁を取った後に残った昆布を、この海苔のように細く切り、それに味を付けして煮込んだ物って・・・食べられると思いませんか?」
私が問いを投げかけるような言葉を言い終えると、2品目のメインがテーブルに並べられる。
まさに、昆布を煮込んだ物は、昆布の佃煮。
それを使った料理とは・・・昆布の佃煮と梅肉の鶏肉のパスタ。
「昆布がパスタの色どりになっていますね。」
ヴァネッサ様、その通りです。
鶏肉は茹でた物を割いた物を使用していますので、パスタの色とほぼ同じなので、色どりに昆布の黒が重宝しているのですよ。
まあ、昆布は少ししか使っていないけどね。
「さっぱり味だけど、昆布と梅の味がアクセントとなっている。」
それなりに満足して貰えているようだ。
「使った昆布を捨てずに使う。うん、こちらもいい商品になりますね。」
やはり、ラスキンさんは商売人らしくそこを見るのね。
「昆布の佃煮は、シンプルにご飯と混ぜておにぎりにしても、おいしいですよ。」
「受け入れやすいかもしれませんね。」
商品開発に乗り出す気満々ですね。
前世で作った料理を出しているので、質素な料理であったにも関わらず、皆、残すことなく食べてくれている。
「最後の料理になります。」
テーブルに出されたのは、3種類のおかき
「まず、食す前にお伝えしますね。この料理は『ボリボリ』と音を立てて食べていい料理です。」
私は、その後、3種類のおかきの味の説明をする。
シンプルな塩味。
揚げる前のお餅の時点でおぼろ昆布を混ぜてあげた昆布味。
そして、梅肉を乾燥させ粉にした物をおかけにかけた梅味。
以上3種類の味だ。
「梅肉を乾燥させて粉にするなんて初めて知ったわ。」
キャサリン様がじっくり梅味のおかきを眺めていた。
「梅肉の乾燥には、コスモが力を貸してくださいました。」
ヘンリー様以外は、一斉に私を見て、その後ヘンリー様を見る。
「コスモも、クローライトとキンバーライトの溝を気にしていたので、快く力を貸してました。」
ヘンリー様は答えてくれる。
これは、本当の事なのだ。
ダメ元で頼んだら、すんなり、あっさり、こっちが呆気にとられるぐらいに進んで協力してくれたのだ。
お礼に何が欲しいかと聞いたら、アユの塩焼きと要求してきたので、時期になったらプレゼントすることを約束した。
「ボリボリ」
と、おかきを口でほおばっている音がする。
食べている人は、噛んだ際に出る音が気にしているようだが、私は、おかきをスプーンですくって、口に持って来ている方が気になるのよね。
こうして、全料理を出しきり、食後の紅茶が出される。
皆、出された料理に絶賛をしてくれた。
まあ、始めて食べる料理にしては、美味しいという事なのだろう。
・・・質素な料理だからね。
私は、ホッとし息を吐いたが、まだまだ私にはやるべきことかある。
「美味しいと言って頂きありがとうございます。」
まずは、お礼を申し上げた。
「ラスキンさん。実は・・・頼みたいことがございます。」
私は緊張しながら言葉をかける。




