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友好の懸け橋の有効性は?

 「お口に入れて理解して貰ったと思いますが、昆布は出汁を取るのみでなく、調理をすれば食べる事が出来ます。」

 ドラゴニアは、昆布を使った料理、昆布巻きとか、昆布の煮つけとかはない。

 黒い素材がやはり、口に入れるのを拒んでしまうのだろう。

 「おぼろ昆布と私が言いましたが、その名の由来を説明する料理をお出しします。」

 最初のおぼろ昆布その物が置かれた皿が、使用人たちによってとられ、

 おぼろ昆布が入ったスープ皿がテーブルの上に置かれる。

 そして、その中にスープを注ぐ。

 「まあ!」

と、ヴァネッサ様が驚きを声に出してくれた。

 私はそれを見て、嬉しくなった。

 「おぼろ昆布は、水を含むと朧げな見た目となるので、このような名が付けられているのです。」

 皆、美味しいと、温かいスープを飲んでホッとした雰囲気になってくれた。

 「サーシャ。スープに入っているこの人参。梅の形をしているのね。」

 キャサリン様は、注がれたスープの中にある人参を見て言ってくれた。

 「はい、梅はクローライトの特産の品ですから」

 私は、そのように言ってニッコリ微笑んだ。

 「もしかして、梅の形にカットしたのって・・・。」

 ラスキンさんが言って来たので、私がカットしたのを伝えると、驚いていた。

 「クッキーなどの型抜きで人参をくり抜くのが一般的ですが、たまたま厨房に梅の形のがなく、私がカットしたのです。」

 「人参で鳥を作れますか!?」

 ラスキンさんが飾り切りの事を深堀してくる。

 「いいえ、そんな高次元なモノは作れません。後、出来るとしたらリンゴでウサギを作る程度です。」

 梅のねじり切りは、前世で、日本料理店にバイトしていたBL好きの友人から教えてくれたモノだもの。

 ラスキンさん、お願いだからしょぼんとしないでください。

 「だが、立体に梅の形にカット出来るだけでも凄いよな~。ヘンリー、誇らしいだろう。」

 エリック様が、フォローを入れてくれた。

 「当然のことですが、惚れなおしました。」

 ヘンリー様、その言葉をなんというかわかりますか?

 ・・・殺し文句っていうのです。

 脳内に白い霧がかかりました。

 つまり、何をするんだっけ?

 「サーシャ様、次の料理を持ってきますね。」

 フィオナが一言を言い、次の一品がテーブルに出される。

 「明日葉を茹でた物におぼろ昆布と梅肉で味を付けたお浸しです。」

 通常、お浸しと言ったら、鰹節に醤油の味付けなのだ。

 だが、ここは、クローライトとキンバーライトの関係を仲良くするために、昆布だしと梅肉で味を付けたのだ。

 「もし、味が薄目でしたら、梅肉のソースが皿に置かれていますのでどうぞ。」

 お浸しって、結構質素な見た目だったので、盛り付けの際、味付けをしているのにも関わらず、皿に彩るように梅肉ソースをデザイン的に塗ったのだ。

 質素な物でもペロリと食べてくれた。

 すぐに、次の料理が運ばれる。

 皆、驚いた顔を見せてくれた。

 一番手の込んだt料理だから、その顔嬉しいわ。

 「太巻きでこんなことも出来るんだな。」

 ライ様が言葉を発する。

 「紅梅に白梅・・・リンゴと花の芽とこれは・・・。」

 キャサリン様が、飾り太巻きの柄を言ってくれる。

 「雪割草だ。」

 最後の柄もラスキン様が答えてくれた。

 ・・・わかった貰って助かった。

 「クローライトとキンバーライトの象徴ね。」

 ヴァネッサ様が、私を見ながら言った。

 「紅梅と白梅は、クローライトで有名だよね。」

 エリック様が補足するように言ってくれる。

 「はい、リンゴはキンバーライトの特産で、雪割草は有名な観光地がありますよね。」

 ラスキンさんは、私が知っている事を驚いていた。


 まあ、ゲーム上で、ホレス様との恋愛ルートのスチルになってるところですからね。


 「雪割草がたくさん生息している山に、行ってみたいと思っているのです。」

 私の一言で、ヘンリー様は私の顔を見る。

 「行きたかったとは知らなかった。」

 それは・・・言ってませんからね。

 でも、ゲームの聖地ですよ『聖地巡礼』ですよ。

 行きたいに決まっているではないですか。

 「卒業祝いで連れて行ってくださいますか?」

 そのようにヘンリー様に言うと、『もちろんだ』と、答えてくれた。


 「ごほっ」

と、咳ばらいをする者がいたので、振り向くとライ様だった。

 「紅梅と白梅、リンゴと雪割草はわかった。でも、花の芽は何だ?」

 ライ様、言ってくださってありがとうございます。

 その言葉を待っていました。

 「クローライトとキンバーライトの間に、友好の芽が芽生えて、花咲くことを祈っているのを表した柄となっています。」

 クローライトとキンバーライトの友好が今回の鍵なのだ。


 おぼろ昆布の刃は、アクセサリーと短剣をのセットを作り、産業に貢献しているクローライトに頼んだ。

 だけど、別にキンバーライト領でも、おぼろ昆布の刃を作る事は出来る。

 それをしなかったのは、クローライトとキンバーライトの間に、大きな溝があるから。


 アリシアがリオンに嫉妬し、暗殺者を入国させた地がキンバーライト領の港町イルメだ。

 その事で、2つの公爵家に溝が出来てしまったのだ。


 「私は、リオンを殺したクラウンコッパーと同じ姓を持つ者として生まれました。」

 その言葉にキャサリン様は、リオンが殺した一族は断絶して、新たなクラウンコッパーだと、反論してくれる言葉をかけてくれた。

 私は、キャサリン様にお礼を一言述べる。

 「ですが、クラウンコッパーの姓は大きい。」

 王宮の牢屋に入れられましたからね。

 「ですが、今の私の姓はトラバイトです。」

 リオンとキャサリン様の旧姓だ。

 「クラウンコッパーという姓を持った者が、トラバイトという姓を頂くという事は、どれ程素晴らしい事かわかりますか?」


 きっと、マティアス様とキャサリン様、それに、領土の事があり来られなかったヴィンセント様は、私に姓を新たに与えるにあたり、ヘンリー様のところに嫁ぐ事が決まっているので、同じ貴族の位であるクローライトの姓を与えようとしたと思う。

 だけど、その当時はまだ、ライ様がアマルテアと絆を結べていなく、アリシアの呪いがあるとされていた時期だ。

 その呪いから私を守るために、クローライトの姓ではなく、リオンとキャサリン様の旧姓であるトラバイトの姓を私に与えたのだと想像できる。

 

 でも、例えアリシアの呪いがなくても、トラバイトの姓を頂けて、私は今でも感謝をしている。


 聖女とまで言われている、リオンを殺した一族と同じ姓を持つ、クラウンコッパー家の私が、リオンの殺しに加担をしたクローライトを後見人として、リオンの旧姓のトラバイトとして、リオンの育ったルベライトに嫁ぐ。

 それも、リオンと恋仲にあったヘンリー様のもとへだ。

 

 そこにあるのは、許しという奇跡に近い希望だ。

 

 きっと、ルベライトとクローライトの間にも溝があったのだと思う。

 そこの溝の修復も、嬉しい事に私を通してなされたという事だ。

 

 本当に、奇跡という希望なのだ。


 だから、クローライトとキンバーライトもその溝を修復して欲しいと願ってしまう。

 それも、その溝を気にしているのがルベライト家と来る。

 もう、是が非でも友好の懸け橋となるべく行動をとるべき、いわば使命なのだ。


 「今回、この席にラスキンさんを招待したのは、おぼろ昆布の製造工場の協力はもちろんの事、キンバーライトとクローライト双方の友好にも力を貸して頂きたく、お呼びしました。」

 私は、真剣な目でラスキンさんに伝える。

 周りの皆がラスキンさんを見る。

 ラスキンさんは、一瞬目を大きくするも、すぐに微笑みを見せて、水を飲む。

 「おぼろ昆布の刃の特注をシナバー商会に頼むのではなく、サーシャ様が自らクローライトに頼んだ事から、そうだろうと予想はしてました。」

 ラスキンさんは、花の芽柄の太巻を丸々フォークの上にのせ、ナイフで支えながら、少し高く上げる。

 「サーシャ様の気持ち、しかと受け取りました。喜んで協力させていただきます。」

 そう言い、丸々花の芽柄の太巻きを口に入れた。

 

 私は、嬉しくなり目を潤ませた。

 「サーシャ。良かったですね。」

と、小さい声でフィオナが言ってくれた。

 私が頷くと『次の料理を出しますね』と、フィオナが言いテーブルに次の料理が出され、私の下に別のカートが箱まれてきた。


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