商品開発の準備には、手間がかかる
「サーシャ様に頼まれていた物。何もせずにこのまま保管するのでしょうか?」
ラスキンさんが、朝食前に言って来た。
月曜日にお願いして、ある物を大量に加工して、そのまま保管して貰っているのだ。
「2週間保管後に最終加工する物なので、そのまま保管して貰えると嬉しいです。」
そんなに日数が必要なのかと残念そうな顔を見せるも、早く最終加工して出来た商品を見たい気持ちの方が大きいようだ。
すぐに目をキラキラさせて、出来上がったら見せて欲しいと懇願状態で言われてしまった。
懇願しようと、ラスキンさんには商品の加工過程を全て教えるつもりなのだが・・・。
まあ、出来てからのお楽しみって事で、今はこのままでいいか。
最終加工工程は職人技が必要なんだよね。
出来るか出来ないかは、神のみぞ知るって・・・。
あの白銀に光る神は知っているのかしらね。
出来れば協力して欲しいとわ。
かと言って、私にのみではダメなのよね。
これから、商品を世に広めるのだから、私以外にも出来て貰わないと。
援軍を送るみたいな事を言っていたし、期待してもいいのかしら?
・・・・援軍の意味が違うだろうな~。
白銀の光る神のいう援軍は、きっと、この世界ラーイ界が、ゲームの世界観だというのを知っている、つまり前世の記憶がある者なんだろうな。
いつ、現れるんだろう。
”ピクッ”
と、私の頬が引きつる。
・・・もしや、姉さまが援軍!?
記憶が戻ったから、ドラゴニアに来たというの?
そんなの勘弁だわ。
援軍でなく、敵軍の増員部隊だわ。
変な事を巡らさないでよ私!
絶対にありえない事。ありえてはいけない事だわ。
でも、そうなると、姉さまはどこにいるのかしら?
交換島で鑑定をした鑑定士と、そのドラゴンの協力を得られないかしら?
・・・・捜索部隊を編成して貰う。
そうして貰うしかないのかしら?
「サーシャ、何ボケッとしているんだ?」
と、ライ様が私に注意されてしまった。
私は、箒を持ったままボーとしていたようだ。
考え事をしていた事を素直に言うと、ヘンリー様に会えるのを楽しみにしているのかと、冷やかされてしまった。
昼を過ぎれば、ルベライトの屋敷に、ヘンリー様のもとに戻れるが、考えている事は違う事を言った。
「姉さまの捜索隊を作るべきかと考えていたのです。」
その一言で、ライ様の顔が、真剣な眼差しになる。
「サーシャは、アシュムの運営のことだけでなく、姉の事も考えないとならないのだな。」
本当に、姉さまは今一体どこで何をしているのだろうか・・・。
「サーシャ。この後の事なんだが、大父様に頼んでいた物が完成したと連絡が入ってクローライトの屋敷に来ているから、終わったらアマルテアのところに集合な。」
私は感激をしてしまった。
ルベライト城から手紙を書いててお願いした商品が、もう完成したというのだ。
ヴァネッサ様。手紙の郵送に、城のドラゴンを出してくれたんだわ。
こんなに早く頼んでいた物が出来るだなんて思わなかった。
お礼の手紙を書かなければ!
「サーシャ。感動しすぎだ。」
ライ様は呆れた顔で、私に言いかける。
「何を言っているのですか!うまくいけば、クローライトとキンバーライトに、新たな産業が生まれるのですよ。」
クローライトとキンバーライトの領境は、アリシアの件があったせいか少しさびれていると聞いている。
その箇所に今回の商品を製作する工場を造れればと思っている。
私が職人技術によって作る商品は、発展していろんな商品を作る事が出来るのだ。
最終的には、クローライトの特産の梅干しを使った商品も開発できればと思っている。
ああ、素敵が広がっていく~。
「おーい、サーシャ、どこへ行っているんだ~。」
と、想像の世界へ行っていた私を呼び戻すライ様の声がする。
「商品の開発、発展するように考えるのはいいが、皮算用にならない様にしろよ。」
はい、わかりました。
ライ様のいう通りです。
まずは、私の技術力が必要なのだから・・・。




