優しく・・・
出されたお茶を飲みたいという理由を付けて、ヘンリー様の膝から逃れ、隣に座る事が出来た。
私は、アシュムの管理運用を王太子妃と公爵夫人の管轄にする案をハミッシュ陛下に言う。
すると、すぐに王太子妃であるシルヴィア様を呼んでくれた。
「お義父様、どうかなさいましたか?」
と、銀髪に新芽のような緑色の瞳の20歳前後の綺麗な方が来た。
王太子妃シルヴィアその人だ。
流石は、フレディ様とクリスティーナ様の子だわ。
フレディ様のような天使のよう顔だちなのだが、クリスティーナ様の品の良さが容姿に現われていた。
「シルヴィア。サーシャが、君に話があるようだ。」
と、ハミッシュ陛下が言うと、満面の笑みを浮かべてこちらを向く。
「やたらと独占力を行使する公子を抜きで、お話が出来るのですか」
シルヴィア様とは、ハミッシュ陛下主催の舞踏会で、ほんの一言話をした程度だった。
だから、どのような方なのか、わかりかねていたのだ。
「実家の父が絶賛しているヘリオドール一族の方でしょう。是非、女性のみのお話がしたかったのですよね。」
シルヴィア様は、自分の部屋にお茶を用意するよう使用人に速攻で頼む。
このような行動をしてしまったは、シルヴィア様と女子会をするしかなくなる。
「さっ、行きましょう!」
と、シルヴィア様は私の手をとり、連れていかれてしまった。
こうして私は、シルヴィア様のお部屋でゆっくりとお話しすることが出来、アシュムの管理運用の件を了承してくださった。
シルヴィア様とのお話が終わりヘンリー様のいる部屋へ行くと、すぐにヘンリー様が私の手をとる。
「屋敷で夕食の準備が出来てますので、これで失礼します。」
と、若干怒っている感じに言い、王宮を後にルベライトの屋敷へと戻る。
ルベライトの屋敷へと戻るとデボラが出迎えに来てくれ、すぐに夕食となった。
「ヘンリー様。アシュムの管理運用の件。シルヴィア様も協力してくれるとおっしゃってくれました。」
私は、シルヴィア様との女子会で話した事を伝える。
だが、ヘンリー様は『・・うん。』『・・・そうか。』とか、右から左へ私の話している事が流れている雰囲気に言葉を返す。
仏頂面のヘンリー様なので、実は聞いているのではと期待をしているのだが、流石に疑いの念が出てきてしまった。
こうなれば・・・。
「ヘンリー様・・・その、愛してます。」
「・・・ああ。」
はい、聞いてません。
右から左・・・左から右でもいいのか・・・畜生。
悔しいが、私の言葉を流された。
「ヘンリー様にキスしたいです。」
「・・・そうなのか。」
どうしても、わかってくれないのか・・・・。
何故、ヘンリー様は私の告白を聞き流してしまうのだろうか?
王宮で、何があったんだ?
考えれば、考える程わからなくなり、そうしている間に寝る時間帯となった。
私は、寝室のドアからヘンリー様の部屋へと入ると、ヘンリー様は寝室にはいなく、隣のへと向かう。
書斎へ入ると、机に向かって書類を見ているヘンリー様がいた。
「急ぎの書類があったのですか?」
「・・・ああ。」
また、この言葉ですか・・・・悲しくなってきた。
「嘘を言わないでください。」
「・・・そうか。」
私は、ヘンリー様のそばまで行き、ヘンリー様にキスをする。
「な、何をする!」
やっと、別の言葉が聞けた。
「ヘンリー様。何があったのですか?」
「何もない。」
はい、そうですかと、言えるか!!
私は再びヘンリー様にキスをする。
「だから、何なんだ!」
「それは、こちらが聞きたいです。ヘンリー様は先ほどから、私の言っている事を聞き流しています。私の事・・・嫌いになってしまいましたか?」
私は、悲しさのあまり涙が出てきてしまった。
ヘンリー様は困った顔をする。
「サーシャを嫌いなわけないだろう。」
ヘンリー様は、手に持っていた書類を置き、私の涙を拭ってくれる。
「明日になれば、サーシャが学園へ戻ってしまうだろう。そばにいたくても無理な話だろう・・・だからって、サーシャを刻む暴走に走るのは、いけない気がして・・・。」
「つまり、我慢をしているのですね。」
ヘンリー様は頷いでくれ、断じて私を嫌いになっていないと言葉を添えてくれた。
「私は、少ですが・・・余裕があります。それに愛する人の、愛される気持ちを受け止めきれないのは、辛いと言ったはずです。」
ヘンリー様は、早速そんな気持ちになってしまう自分に戸惑っているようだ。
「いきなり簡単に出来ないからって、ヘンリー様を嫌いに何てなりません。それよりも、避けるそぶりをしている方が悲しいです。」
ヘンリー様は立ち上がり、私を抱きしめる。
「ありがとう・・・でも、我慢をしないと。」
「嫌だ・・・私がヘンリー様が足りないの!!」
ヘンリー様が目を見開き私を見る。
きつく抱かれるのは辛い。
でも、抱きもしない事も辛いのだ。
私も、ヘンリー様を補充したいと感じるようになってしまったのだ。
「お願い・・・優しく暴走してください。」
涙ながら訴えた。
沈黙が走った後、私を抱き上げる。
「・・・優しくする。」
そう、言ってくれて私を抱き上げたまま書斎を出る。