リア充爆ぜろ
「サーシャ。目的地に着いた。」
ヘンリー様の声で目を覚ます。
私は、またヘンリー様の腕の中で眠ってしまったのね。
ヘンリー様のマントの中から出ようと、マントの中でもがく。
何か、いつも以上にマントの密着度があって、包まれているような・・・いや、ようでなく、包まれている。
どうやらヘンリー様は、わざわざマントを外し、私を包んでいたのだ。
・・・でも、何故、私を包むんだ?
それだけじゃない。どうして、私、今ヘンリー様のお膝の上にいる。
え?
ここは、どこ?
先ほど、目的地に着いたと、ヘンリー様が言っていたという事は、王都の王宮なのだとわかる。
アシュムの管理運営の事で許可を貰いたくて、直接王宮へ行こうという事になったのだから。
・・・目的地での・・・お膝の上?
寝起きで理解が出来ないようだ・・・?
うん、きっとそう・・・理解したくない現実が、起きていそうだなんて、考えてはいけないよね。
まずは、マントから出て場所の確認だよね。
私は、マントから出る。
暗いマントの中から、明るいところへ出たので、辺りが眩しく目を瞑る。
すると、ヘンリー様がいきなり私を抱き寄せた。
「ヘンリー様、どうなされたのですか?」
不意打ちに抱きしめらたので、徐々に顔が熱を帯びていくのがわかる。
「無防備な顔を俺以外に見せるな。」
無防備な顔を俺以外にって・・・俺以外?
「周りに人がいるって事でしょうか?」
「正解だ。」
と、私の後ろの方から王宮の頂点に君臨する人が、ため息交じりに言って来た。
「やあ、サーシャ。」
私は、ゆっくりと首を後ろに向けようとする。
「ダーメ!」
と、ヘンリー様は私の頭を胸に引き寄せる。
「ダメとかいうレベルの話ではありません。ハミッシュ陛下の前にいるのですよ!」
私は、混乱しながらも、王宮に到着してコスモから降りる際に起こさなかったのかを聞く。
「サーシャは昨夜あまり寝ていないのに、今朝早く起こされたのだろう。なので出来るだけ寝かせてあげたかったんだ。」
私は・・・一瞬静止した。
だが、すぐにヘンリー様を睨みつける。
「ヘンリー様。棚上げしているように聞こえるのですがどうしてでしょうか?」
確かにヴァネッサ様に朝早く起こされました。
ですが、そもそもヘンリー様が寝かせてくれなかったのが、原因なような気がします。
”チュッ”
と、いきなり私にキスをしでかすヘンリー様。
「それは、サーシャが可愛いからだよ。」
「そんな事を聞いているのではありません!!」
真剣に話しているのにヘンリー様は、私が恥ずかしくなる言葉を平然といってくるので、顔の熱が全く下がる気配がない。
「お願いですから自重してください!」
「自重と言われても・・・何を自重するのだ?」
ヘンリー様は、全くわからないそぶりで言って来た。
それに対して私は絶句してしまう。
つまり・・・え・・何?
ヘンリー様は素で、こんな恥ずかしいことを言ってしまったり、やってしまったりしているのか?
「えっと・・だから~・・・その・・・ですね・・・。」
私は、次の言葉が出ないでいた。
「まったく、サーシャは・・・・。」
”チュッ”
再び、ヘンリー様のキスの攻撃を受けた。
私は、もう、顔に熱が貯まり過ぎて、俯くことしか出来ずにいた。
”チュッ”
「・・・!?」
今度は、でこチュウだよ。
もう、言葉ない言葉を発するしかできないでしょう。
「リア充爆ぜろ!」
と、背中の方から言葉が聞こえた。
・・・何とも、懐かしい言葉。
当然、そのような言葉をかけているのを見たことがあるだけで、かけられる立場になるとは、全く思わなかった。
私は、ゆっくりと後ろに振り向く・・・一瞬ピアーズさんが見えるも、ヘンリー様に抱きしめられ、視界を塞がれた。
だから、『リア充爆ろ』と、ハミッシュ陛下に言われたでしょう・・・言葉の意味わからないか。
「ピアーズさん、ハミッシュ陛下はどうなされたのですか?」
私は、ヘンリー様の腕の中から質問をする。
「昨日、キンバーライト領で、3つの卵を産んだドラゴンがいまして、カリスタ様が視察に向かわれたのです。」
カリスタ様は、ドラゴンの子の養育に深くかかわりを持つ人物だ。
「3つって、誰が卵を温めるのですか?」
そういえば、交換島のドラゴンのスコルとスルトは双子の兄妹だ。
今さらながら卵を温めていたのは誰なんだ?
「双子の場合は、父親が協力する事があるようです。」
過去、何件かの事例があったようだ。
だが、父親が協力してくれない場合もあるようで、その場合一つを選び温めると説明をしてくれた。
「今回は、父親の協力は得られたのですか?」
「もちろんですよ。」
その件に関しては、ドラゴンの養育の件で、数十年前にカリスタ様がドラゴンと話し合われて、父親が温める決まりとなったようだ。
「今回、母方の妹が協力して温めてくれていますが、その妹は、まだ卵を温めた経験がないモノで、心配になり視察することになったのです。」
・・・なるほどね。
「2泊3日の視察で、2日目はカリスタ様の母校である聖ライト学院の視察に行く日程となっています。」
日にちからして、移動手段はドラゴンのようだ。
視察好きのハミッシュ陛下が、視察に行けない事に少し腹を立てているって事かしらね。
王宮にカリスタ様がいない寂しさも相まっているように感じられる。
だから、ヘンリー様。
イチャコラするのを辞めましょう。