始動している嫁と、指導される俺。
「どうやら、落ち着いたようだな。」
父上が、ボソッと俺を見て言った後、使用人たちが朝食を持ってきた。
「ヘンリー。サーシャが好きなのは解るけど、暴走・・・している。」
俺は、父上の言葉に頷くしかなかった。
「新婚みたいなモノだから解ってあげたいけど、サーシャの事を考えると、このままではダメだよね。」
やっと、サーシャを妻に出来たのに、公爵家の者としてしっかり領の運営をしなければ、嫌われてしまう。
やっと、愛する者と共に歩むことが出来るのに、俺は何をしていたんだろう。
「ヴァネッサ、サーシャは今は何をしているのだい?」
父上の質問に母上は、アシュムの施設の管理運用を公爵夫人や王太子妃が行うように依頼をする手紙を書いていると伝えてくれた。
「ヴァネッサの事だから、サーシャの手紙に添える手紙を書いてあげるのだろう。」
「もちろんですよ!」
母上は、満面の笑みで答えた後、俺の方に顔を向ける。
その顔は、満面の笑みではなく憂いを漂わせる顔だった。
「ヘンリー。サーシャはもう、ルベライト公爵家の嫁として動き出しているわ。ヘンリーはその夫となってから、ルベライト領もしくは、このドラゴニア王国に何をしたかしら?」
思いつくのはあるが、今言っていい答えではないのは分かる。
そうなると、サーシャがコスモと伴侶の絆が結べてから俺は何もしていない。
「子供の事は、今はあまり考えなくてもいい。サーシャは3年何て期限を付けたが、サーシャは年数の感覚がまだわからないからね。」
父上のいう通りだな。
まあ、最低で×10だろう・・・×20でもいいぐらいだ。
それにしても、父上は俺の考えが読めるのだろうか?
先ほど、サーシャの夫になってから思いついて口に出さなかった事を言われてしまった。
これで、本格的に俺は何もしていない事が判明してしまったのだな。
妻を娶ったのに、通常業務しかこなしていないとは、夫として情けない。
・・・反省すべき事項だな。
こうして、親子3人の朝食となった。
・・・・が。
「コスモが臙脂様の事をジイジと呼んでいるのだが、俺も呼ばれたいなと思っているんだよね。」
「でしたら私はバアバですかね。ふふふふっ」
夫婦の会話に孫の話を出してくるとは、さっきの話は何なんだ?
『子供の事は、今はあまり考えなくてもいい。』と、つい先ほど言ってなかったか?
いつかジイジと呼ばれたいジジイとバアバと呼ばれたいババアめ。
「孫のその言葉を聞いてから死にたいよね~。」
「孫を抱き上げてあやす事もしたいですわ。」
「ああ・・それ、それもしたいね。」
親子の会話と夫婦の会話では、こうも真逆の会話をしてもいいのだろうか?
素直に、謝って『先ほどの子供の件はなかった事にして欲しい』と、言ってくれればいいのに・・・・。
変な圧力がかかっている気がしてならない。
「『ジイジ待ってー』って、追いかけっこもしたいな~。」
「一緒に温泉にも入りたいですね。温泉で泳ぐ孫を見てみたいです。」
孫の年齢がどんどん上がっているようですが、もう、ボケが始まったのですか?
こうして、親子3人の朝食は終わった。




