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受け継がれる物

 「サーシャ。」

 私を呼ぶ声。

 でも、まだ・・・疲れています。

 「サーシャ。起きた方が身の為よ。」

 身の為・・・身が持たない私の救いの声なのでしょうか。

 つまり・・・起きるべき?

 「朝だから、出来る事なのよ~。」

 そうよ、ヘンリー様は朝が弱い!!

 起きるのよ私!!

 ”カーッ!!”

と、私は目を一気に開ける。

 そこには、ヴァネッサ様がいた。

 「起きたわね。」

 ええ、起きましたとも。

 ですが・・。

 「た、助けてください。」

 私は、かすれた声で助けを求める。

 私はヘンリー様に背中から抱きしめられているのだ。

 「多少の事なら起きませんからね・・・。」

と、ピンクのピンバッチを付けた落ち着いた感じの40前半のメイドが来る。

 ピンクのピンバッチという事は、ヴァネッサ様の専属のメイドだわ。

 そして、ヴァネッサ様の専属のメイドの助けで、ヘンリー様の腕から脱出し、すぐに、ヴァネッサ様が、私にバスローブをかけてくれる。

 「あ・・ありがとうございます。」

 恐れ多くも、姑にバスローブを着せて頂きました。

 「付いてきなさい。」

と、ヴァネッサ様は私をヘンリー様の部屋から連れ出し、廊下へ出て行く。

 そろそろ日の出のような、薄暗さがまだ残っている外だった。

 廊下を歩き、ヴァネッサ様の部屋へと入る。

 「まずは、座ってお茶でも飲みましょう。」

 ヴァネッサ様と私がソファーに座ると、専属のメイドが紅茶を淹れてくれる。

 ティーカップは、ピンクカルサでヘンリー様と一緒に決めた薔薇のティーカップだった。

 私は、そのティーカップを見てうれしくなり、微笑んでした。

 「お気に入りのティーカップよ。」

と、キャサリン様は私が微笑んだ意味を察知して、お礼を言ってくれた。

 私は出された紅茶を飲む。

 「・・・これって、生姜と蜂蜜が入った紅茶ですね。」

 ヴァネッサ様は、一瞬驚いたが、すぐに微笑んでくれる。

 「生姜と蜂蜜は喉にいいからね。だから、もう一杯飲んでくれると嬉しいわ。」

 ヴァネッサ様は、私が、喉をかすれている事を気にしてくれていたようだ。

 私の喉のかすれの原因までは追究はしなかった。

 原因をわかっているのかもしれないが・・・。

 「淹れてあげて。」

と、ヴァネッサ様は、空になった私のカップを見ると、専属メイドに伝えると、すぐに注いでくれた。

 ありがたいです。喉が空からだったので・・・。


 「ヴァネッサ様。私をここに連れてきたのは、何かお話があってのことですか?」

 私は、話を切り出した。

 昨日の朝食時では話せなかった事があるから、ヘンリー様から引き離してでも話そうと、行動したと推測するのだが・・・。

 まあ、私もヴァネッサ様に報告することがあるから、助かったのだけど・・・。

 「サーシャに渡したい物があるのよ。」

 ヴァネッサ様が言うと、専属メイドが片手程の大きさのアンティークの宝石箱を持ってきた。

 「代々、ルベライト公爵の嫡男の嫁に受け継がれている物よ。」

 私の前に置かれる。

 私は驚き、目の前の箱とヴァネッサ様を交互に見る。

 ヴァネッサ様は、私の驚き様にクスリッと笑った。

 「開けてみて。」

 私は、恐るおそる宝石箱を開ける。

 そこには、赤と紫と金の真珠がちりばめられた銀のブローチが入っていた。

 そして、この銀のブローチには見覚えがあった。

 

 そう、『続・ドラフラ』の最後、ヘンリーとリオンの結婚式にリオンが付けていたブローチだ。

 代々、ルベライト公爵家に受け継がれているブローチだったとは・・・。


 私は、何て言えばいいのかわからず、口をパクパク動かす。

 「まあまあ。」

 ヴァネッサ様は苦笑いを浮かべる。

 「サーシャ様、どうぞ。」

 ヴァネッサ様の専属のメイドが、私にハンカチを差し出したことで、私が涙を流している事に気づく。

 私は、ハンカチを受け取り涙を拭く。

 「ドラゴニアは真珠の産地なのは知っているわね。」

 ヴァネッサ様の問いに私は頷く。

 「5000年前、アーサー・ギベオンによって、ドラゴンの守護から外された物の一つに、真珠がある事により、ドラゴニアは真珠業が盛んになったと歴史書には記載されていますよね。」

 私は、学校の教科書にも記載されているメジャーな内容を言う。

 「ここまで真珠業が盛んになったのは、いろんな色の真珠を発明した

事が発端。その発端の地がこのルベライト領なのよ。」

 それは知らなかったわ。

 「そして、そこにはめ込まれている真珠は、初めて成功した物とされているわ。」

 「何故、そのような物が、公爵家で受け継がれているのですか?」

 普通なら、開発した家に受け継がれるはずよね。

 「娘の嫁入り道具の一つですからね。エリックとヘンリーは、色の真珠の開発した一族の血を引いているのよ。」

 驚きだわ。

 驚きのゲーム裏設定だわ。

 「ちなみにその一族の名は何というのでしょうか?」

 一応、一族の名を知るべきよね。

 「シェル一族よ。」

 何ですと―――!!

 交換島の国家鑑定士のルイーズさんと同じ姓名じゃないの!!

 ヘンリー様とルイーズさんって似ている所ってある?

 え~、いきなり考えてもわからないよ。

 でも・・・似ない方がいいかな。

 ヘンリー様が女装って・・・似合うよな。

 まあ、ゲームの攻略キャラだから、無駄にイケメンだし当然だよね。

 着る物によっては、ルイーズさんより似合ってしまう恐れがあるわ。

 やはり、遠からず・・・遠くていいので親族だわ。


 

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