見当違いの検討に健闘を・・・
そのような事が・・・・。
私の目から涙が出ていた。
「ありがとうデボラ。」
と、エリック様がいい、デボラに仕事に戻るように指示を出す。
「サーシャ。君をサポートする体制は、しっかり整えられているんだよ。」
私は、エリック様の言葉に頷き、感謝の言葉を述べる。
「サーシャ。あなたはもう、一人で戦わなくていいの。私たちを頼っていいのよ。」
ヴァネッサ様が微笑みながら優しく言ってくれる。
「頼って貰えないと寂しいってモノだよね。」
エリック様がヴァネッサ様に同意を求め、ヴァネッサ様はすぐにエリック様に同意する言葉を投げかける。
・・・温かい空気が辺りを包んでいた。
私には無縁と思われていた雰囲気に、涙を流し感謝の言葉を何度も言う。
「うん、良かった。」
ニッコリ笑顔で、エリック様が発した後、すぐにその笑顔に青筋が入る。
「だけど、息子の機嫌は・・・サーシャにしか改善する事は、出来ないから・・・・頑張ってね。」
え?!
私は、隣をゆっくりと振り向く。
ヘンリー様の顔・・・いつも通りの仏頂面と、自分に言い聞かせたい。
えっと・・・不動というか・・・怒涛というか・・・ヘンリー様のそのオーラが、私の自己防衛本能をくすぶってます。
つまり、逃げろって事じゃないの!!
「そ、そういえば、カルデネは・・・大丈夫で、しょうか・・・?」
冷汗をかきながら、エリック様に聞く。
「ああ、しっかり栄養が取れれば、傷が塞がるのが早くなるだろうと、食事療法から改善をさせている。」
鱗の質から、栄養が行き渡っていないことに気づいたのね。
カルデネにアシュムで会った時、木の果実・・金柑かしらね、それをカルデネは食べていた。
ロクに食べさせて貰っていなかったんだわ。
いや、鱗をとられるから、巣には帰れずに、アシュムの中で木の実や果実を見つけて食べていたんだ。
・・・本当に可哀そう。
早く、傷が塞がって欲しいわね。
「カルデネの件は大丈夫だよ。コスモと臙脂様が取り仕切っているから、ルベライト領の赤騎士団のドラゴンがしっかりとサポートをしている。」
・・・・よかった。
私はエリック様のお礼を言うと、コスモとジジイ様に直接お礼を言うように言われてしまった。
まあ、エリック様のいう通りよね。
・・・・それにしても、ヘンリー様。
そろそろそのオーラをしまって頂けると有難いのですが・・・。
隣で、不動なる動きっていうのでしょうか、不動なら動いてはいないのですが、動いているような・・・。
説明がつきづらい動きで、隣にいるのをやめて頂きたいのです。
ヘンリー様側だけ、私の動きがぎこちなくなります。
「ごちそうさまでした。」
私が手を合わせ、朝食の感謝をのべた。
”がしっ”
と、私の手をしっかりと握るヘンリー様の手。
「わっ!」
”ふわり”
え・・・この体勢って、姫抱っこ!!
ヘンリー様に羞恥心を落とす行動です。
「な、何をするのですか!!」
私は、顔を真っ赤にして聞く。
ヘンリー様は、私を抱きかかえたまま歩き出す。
「ヘンリー様。私はちゃんと歩けますから、降ろしてください!!」
私は、訴えるも、シカトされ、使用人の手により食堂の扉が開かれ、廊下へと出て行く。
「ヘンリー様。恥ずかしいので降ろしてください!!」
廊下にいる使用人が、廊下の端へと避け頭を下げる。
その使用人の顔が、少し赤らめていたり、微笑ましい顔をしていたりと、見ていて恥ずかしいのです。
「ヘンリー様、降ろして!!」
私は、あまりの恥ずかしさに体を動かす。
”ぐらりっ”
すると、私の背中にあった腕が動き、体勢が変わる。
「チュッ」
と、ヘンリー様が人目を気にせずにキスをしてきた。
「な、何をしているのですか!!ヘンリー様、頼みますから羞恥心を持ってください!!」
と、言うか、拾ってこい、捨てて来るな!!
「・・・羞恥心があるから、部屋へ急いでいるのだが。」
「な、なんで・・へ・・・や~・・・・っ。」
なんで、部屋へ急いでいるのか聞こうとしたが、恥かしさのあまりに言葉を詰まらせた。
そうしている間に、ヘンリー様の部屋へ到着をしてしまった。
「モーリス。すまないが、至急の仕事ができたから、部屋から出てってくれ。」
その一言で、モーリス様は察したのか、寝室の扉を開ける。
「モーリス。助かった。」
「書類は後ほど、必ず片付けてください。」
モーリスの言葉に『わかった。』と、答えると、寝室へ入る。
「サーシャ様。健闘をお祈りします。」
”バタンッ”
と、甲斐甲斐しくモーリスは寝室の扉を閉めて行った。
モーリスさん、健闘の見当違いを祈って貰えますか?
・・・もう、遅いか。