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初めての喧嘩

 「その・・・失礼な事を申しますが、もしかして別の公爵家から・・ダンビュライト公爵家から養子を迎えようとした事はありませんか?」

 ダンビュライト家のフレディ様とクリスティーナ様の間には11人も子供がいる。

 ヘンリー様と私がこのような関係になる前は、ヘンリー様は嫁を貰う事を全く考えなかった。エリック様とヴァネッサ様に2人目をという考えを押していた。

 だが、2人目は出来ない。

 そもそも、出来るわけがないのだが・・・。

 だから、そこで浮上するのが、養子。

 ドラゴンの大樹の守護を任されているダンビュライト公爵家なら申し分ないはずだ。


 「『ない』と、言えると思うかい?」

 切なさを感じる口調でエリック様が質問で返してきた。

 私は、首を左右に振る。

 「クリスティーナ殿は、ピューゼン王国の王女だろう。だが、これまでピューゼンとの戦争で、多くの赤いドラゴンと、その絆を結んだ者たちが標的にされ、亡くなっていった。」

 そうか、ピューゼン王国と友好な関係を築いている今であっても、簡単にはいかないって事か・・・。

 赤いドラゴンが多くいるルベライト領だ。

 ピューゼンとの戦争で一番被害を被っている地域でもある。

 公爵家が許しても、領民が許さないか・・・。

 でも、もう・・・それは過去の話。

 「友好の印として、養子を迎えると捉えるには年月が必要という事ですね。」

 もしかして、最終手段として考えていたのかもしれない。

 エリック様、ヴァネッサ様の養子ではなく、ヘンリー様の養子として・・・。

 「でも、今は、サーシャがいるからね。」

 エリック様は、コロッと元気な口調で言って来た。

 「ですが、私が子を成せるとは限りません。」

 例え子を成す行為をしていようが、必ず子が出来るという保証はないのだ。

 私が妊娠できない体かもしれない。

 「ですから、期限を決めた方が・・・・3年なんて―――。」

 「ふざけるな!!」

 ヘンリー様が立ち上がりながら、怒鳴り散らすように言う。

 「う・・・・んっ!」

 いきなりヘンリー様にキスを、それも濃厚なキスをされる。

 舌が絡み溶けそうな程のキス。

 意識が飛びそう・・・それも、人前で・・・でも・・・しかし・・。

 「何をするのですか!!」

 唇が離れると、私は口角から顎にかけて手の甲で拭く。

 「まだ、子を成す行為をしだしてから3ヶ月しかたってないのに期限を決めて、養子の話か?」

 間違えなくヘンリー様は私を睨んでいる。

 だが、ここは引くことは出来ない。

 「それもありますが、まずは第二夫人ではありませんか?」

 ヘンリー様の子を成してくれる。ルベライトの母となる女性。

 「俺の唇しかしらない唇で、何を言っているんだ?」

 ええ、そうですよ。ファーストキスからずっとヘンリー様のキスしか知りません。

 でも、言わないとならないのです!

 「ルベライト公爵家の将来の事です。生まれてから今まで、ルベライト公爵家の者が、先の憂いを考えないとはおかしいわ!!」

 言ってやりましたわ。

 「ごめんなさい、サーシャ。あなたに跡取りの負担をかけてしまって。」

 ヴァネッサ様が申し訳なさそうに謝る。

 ですが、これはヴァネッサ様のせいではありません。

 これはヘンリー様と私の問題です。

 「ヘンリー様。正式に夫婦となっていないからこそ、期限を決めるべきなのです。ずるずる先延ばしにしていい内容ではありせん。ルベライトに関わることなのですから。」

 再び濃厚なキスが攻めて来る。

 息継ぎも出来そうにない攻められるキス。

 ”ドンッ”

 私は、ヘンリー様の胸を強く押し、身体を離す。

 「キスで誤魔化していい内容ではありません!」

 「そうだな・・くくっ・・フフッ」

 ”ガシッ”

と、力強く腕を握られる。

 「将来のルベライト公爵家の憂いを少しでも軽減させるた為に、たくさん子を産もうな。」

 ヘンリー様の言っている内容がおかしな方向に行っているのですが。

 ”グイッ”

 ヘンリー様が私の腕を強く手を引き、部屋を出ようと扉に向かう。

 「産めるかどうかわからないのに変なこと言わないでください。」

 「だから、試すんだろう。」

 試すって、どこに連れて行くのですか!

 私は、繋がれた手を引く。

 まずは、期限を決めてからの話なのだから。

 「そうか・・両親の見ている前でしたいのか?」

 何をするのですか?!

 ヘンリー様、近寄らないでください。

 向って来ようとするヘンリー様を避けるように、バックする。

 「勝手に興奮しないでください!!」

 バックしても、どんどん近づいていくるヘンリー様に訴える。


 「もう、やめてーーーっ!!」

 ヴァネッサ様が悲痛な叫びで言う。

 ”ピクッ”

と、ヘンリー様と私の動きが止まる。

 「サーシャ、そのような事を決めて、俺らが嬉しいと思う?」

 ・・・・思わないわ。

 私は首を左右に振る。

 「ですが・・このまま・・ずるずると時が過ぎても・・・良くないです・・。」

 私は、辛くても素直に伝える。

 「ずるずるねぇ。サーシャはまだ実感できてないんだね。俺らは、ずるずると時を過ごすことが出来るんだよ。」

 長寿な事は知っているわ。

 ドラゴンのおかげで若いままでいられることを・・。

 「死ぬぎりぎりまで子を産むことも出来る。」

 それも、ゲーム上で言っていたわ。

 「じゃあ、何故、期限を簡単に決めようとするのかな?」

 エリック様は3年の期限は短すぎる事も問いかけてきた。

 「それは・・・そうですが・・。」

 でも・・・それでも・・・・。

 「どうして、他人に子を産むのを進めるのかな?」

 ・・・・!?

 エリック様の言葉に目を見開き驚く。

 そして、自分の中で隠していた思いが、ある事ですら隠したいモノがあふれて来る。

 「子を産むのが・・・恐いです。」

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