温泉・・・いろいろ
ドラゴンの温泉に青い色の氷山が出来ていた。
温泉の湯を一部凍らせて、お温度を下げたのだ。
コスモが、温泉の下流で洗った樋を持ってくる。
樋を使い温泉の湯をカルデネにかける。
『痛いかもしれないけど我慢して』
『傷を早く塞ぐために必要なのじゃよ』
コスモと臙脂様が2頭で、カルデネに言い聞かせる。
”キュ~ゥ ウ~ッ”
と、カルデネはリュヌの銀を口元に巻かれているモノも、痛みを感じているのが、ここからでも伺えた。
少しすると、カルデネは温泉の中に恐る恐る入る。
『熱くて、我慢できなさそうなら言って温泉の温度を下げるから。』
うん・・何とか入れたな・・。
「エリック様。何とか大丈夫そうですね。」
「ああ。」
温泉が見える監視台のドラゴン騎士が、ホッとしたように声をかけた。
「暖かい温泉に入りたいと来たドラゴンには、屋上露天風呂を進めてくれ」
と、騎士に言いその場を去る。
臙脂様が、ぬるい温泉に入ってくれるとは・・・あんなに熱くなくては温泉ではないと言っていた頑固ジジイが、可愛いひ孫のコスモの存在で変わるモノなのだな。
変わったと言えば・・ヘンリーもか・・・表情が、一段と解りやすくなった
まあ、普通の人から見れば、まだまだかもしれないがな・・。
サーシャのおかげだ。
本当に、いい嫁が来てくれた。
「・・・俺も、温泉に入りなおすか・・・。」
今日はこれで、3度目になるな。
久々にお酒を飲みながら、浸かるとするか・・・。
俺は、厨房へと行く。
「マリーさん、手伝ってくれてありがとう。でも、無理はしないで頂戴ね。」
と、妊婦のマリーを椅子に座らせ、一緒に食器を洗っているデボラ。
デボラは、元クローライト公爵家で働いていたメイドで、サーシャの専属メイドとして娘のフィオナと一緒に、こちらに来て貰ったメイドだ。
今現在サーシャは、聖ドラゴニア学園に在学している為、フィオナは王都に、デボラは領都ルベルタで、仕事をしてもらっている。
デボラは、フィオナの他にも子を産んだ経験があるため、初産となるマリーのいい先輩であり、マリーはマリーで、サーシャをよく知るサーシャの専属メイドの先輩であるので、ウィンウィンな関係である。
「エリック様。サーシャ様はお戻りになられましたか?」
やはり、マリーはサーシャの事を第一に考えるのだな。
俺は、帰ってきたことを説明すると、夕食の事を聞いて来た。
・・・・夕食か。
「2人は、夕食を採っていないと思うよ。」
マリーは、2人というフレーズが、引っかかているようだ。
少し、口をとがらせている。
ヘンリーにサーシャを取られたと思っているのだろうな。
・・・その通りなんだけどね。
「だけど・・・夜食になると思うから、軽食を作ってあげてね。」
俺の発言に、厨房にいる使用人が一瞬止まる。
ああ、この城の人たちは、ルベライトの屋敷での2人を知らないんだね。
ヘンリーがサーシャを独占しまくっているっていう事が・・・。
「夕食時にお二方が、エリック様方に挨拶をするモノと思っていました。」
通常はデボラのいう通りに、夕食の前にちょこっと時間を取って挨拶して、夕食を取りながら報告のようなモノをすると思うけど・・・。
ヘンリーの独占力が半端ないし・・・俺らのその力が頼みでもあるからね。
「サーシャは風邪を引きやすいって言ってたよね。」
マリーは、俺の話を真剣な目を見ながら頷く。
「ここに来る前に、体を冷やしてしまったようなんだよ。だから先に温泉に入っているんだよ。」
先に温泉に入りに行ったことは理解してくれた。
「ですが、夕食には間に合うのではありませんか?」
まあ・・普通はね。
「俺の予想からして、ヘンリーも温泉に入ったと思うよ。」
俺の一言で、マリーの顔はしかめっ面になり、他の人たちは、微笑ましい顔で作業に戻った。
「デボラ、サーシャの部屋に2人分の軽食と、お水を用意してあげてくれ。」
デボラは、『承知しました』と、穏やかな笑顔で返事をしてくれた。
「デボラさん、私が夜食を運ばせてくれないかしら?」
マリーがデボラに、声をかける。
「マリーさんは、そろそろ仕事を終える時間帯ではありませんか?」
マリーさんが困った顔をする。
「そうなのですけど・・・一目、サーシャ様に会いたくて。」
デボラは、満面の笑みをマリーに向ける。
「明日会えますでしょ。お腹の子の為に休息をしっかりとってください。それに・・・。」
デボラは、厨房の出入り口の方に目を向ける。
厨房に入ってくるモーリス。
「マリー。そろそろ、仕事を切り上げて部屋に戻るぞ。」
モーリスが、マリーを迎えに来てくれたのだ。
「後は、私たちに任せてください。お疲れ様です、マリーさん、それに・・。」
デボラは、マリーのお腹に手を置く。
「赤ちゃんも、お疲れ様です。ゆっくり休んで、元気に生まれて来てくださいね。」
デボラのこの一言が、効いたようだ。
マリーは、これ以上の事を言わず、モーリスに手を繋がれ厨房を出て行った。
モーリスも、マリーの手を繋ぐなど、点々と独占力を表すんだよね~。
「お願いがあるのだが・・温泉に入りながらお酒を飲みたい思っていてね。用意をしてくれるかな?」
俺は、モーリスをマリーが厨房を出たのを見てから言った。
「お酒を飲みたい気持ちはわかりますが、温泉につかりながらのお酒は危険ですから、用意する事、させる事はできません。もちろん、ご自身で用意をするもさせません。」
デボラが、満面の笑みで言う。
せっかくの楽しみが・・・。
「娘が、温泉には、冷たいコーヒー牛乳がいいと言っていましたので、それをご用意しますね。」
・・・コーヒー牛乳なのね。




