温泉にも準備が必要
サーシャは、ルベライト領に入ってから少し経った頃に、俺の腕の中で眠った。
・・・泣きつかれたのだろう。
カルデネも、騎士たちもだか、サーシャが泣いてくれたおかげで、雰囲気が穏やかなモノになった。
サーシャの優しさが、伝わったのだろう。
まあ、王都のアジュムでは、久々に会ったというのに、俺を通り過ぎてライナス殿のところへ行った時は、煮えくり返る思いをしたが・・・。
泣きそうなのを抑えていたからだとか・・・可愛い過ぎるだろう。
俺だからこその現れる感情をもっと味わいたいし、堪能もしたい。
本当に、再び学園に飛び級で入学したいな。
この場合は・・・転校って事になるのか?
・・・編入?
何だろう・・・妄想でしか叶わないとしても、そこのところを知りたい。
まあ、現実になったらそれは、それでうれしいが・・・。
うん・・・あの隠し部屋と、あまり使われないトイレ。
・・・・武芸倉庫に・・・・地下倉庫。
隠し通路に・・・ああ、もちろん互いの部屋だよな。
・・・保健室も穴場だった。
『お~い、ヘンリー。聞こえるかのう?』
ジジイが、何か言いたいようだ。
『のう、カルデネは無理やり人と絆を結ばせられたのじゃから、絆を結んだ者は後ろめたくて、温泉になど行くことなどしなかったのではないのかのう?』
・・・・充分、あり得るな。
一度たりとも、温泉清掃に来たのを見た記憶がない。
初めての脱皮の時も、温泉を使わずに、水で何度も洗い清潔に保てれば、多少炎症期間が長くなるだけで、問題はないからな。
そうなると厄介だぞ・・・。
『エリックにも確認して貰った方がよいのかのう』
俺が、たまたまいない時に来たかもしれないから、そうなれば父上が監視役に回るから、父上にラリマー侯爵に会ったことがあるか質問するのはいいかもしれないが・・・。
『ねえ、つまり・・温泉を一時的に特別仕様にするの?』
もし、入ったことがなければ、そうせざるおえないな。
温泉の効能の事があるし。
『城に着いたら、すぐに温泉に入れた方がいいから、早めに決定したほうがいいと思うんだけど・・・。』
コスモのいう通りだ。
「カルデネ。温泉に入ったことはあるか?」
俺は、一応カルデネに直接聞いてみる。
『お・ん・せ・んって・・・何?』
『カルデネは、これまで体を洗う時は、どのような所で洗っていた?』
コスモが、カルデネに合わせて聞き返してくれた。
『シャワーとか、川とか滝で体を洗っていたよ』
ああ、次の質問の答えで判明してしまうな。
『川と滝で洗っていた時と、シャワーで体を洗っていた時とは、水の温かさが、だいぶ違っていた事はあった?』
『ううん、ないよ』
やはりな。
コスモが監視している中で、不正を働いて得たドラゴンを何食わぬ顔で連れて来れる訳はない。
コスモの・・・ドラゴンの頂点に君臨するドラゴンの存在があるからな。
「コスモ、温泉に一時的な特別仕様をすることを伝えてくれ。」
”ギュオ~ッギュオ~ッギュオ~ッ”
俺の一言で、コスモは大きな鳴き声をあげる。
その鳴き声で、俺の腕の中で眠っていたサーシャが、びくりと体が動いた。