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怪我の見解

 「これは、私の仕事です!」

 「そんなことを、女であるサーシャにさせられるワケないだろう!!」

 只今、ライ様と絶賛言い争い中。

 カルデネの傷の処置の為に、リュヌの銀の櫛を使うのだが、傷の状態から、多少暴れる事は目に見えている。

 なので、その役目を誰がするかで、もめているのだ。

 「では、クローライト公爵家の大事なたった一人の跡取りを怪我をさせるワケには、まいりません!!」

 「サーシャに何かがあったら、サーシャの婚約者の家にも跡取り問題が取りだたさせるだろう!!」

 同じだと言いたいのはわかる。

 だが・・・。

 「私が子を産めるとは限らないわ。子ができなさそうなら、再び跡取り問題に発展するだけよ。ライ様と私の立場は、似ているかもしれませんが、似て非なるモノです!!」

 学園長のダニエル・スペサルティン、施設長のマリオ・エレミー、それにドラゴン医師らが、おどおどしている。

 「サーシャも、ライナスも、どちらにしても問題大アリだ。俺がする。」

 陛下がユピテルから飛び降りて、驚いた隙に、私の手にえ持っているリュヌの銀の櫛を取られてしまった。

 「陛下にさせるわけにはいかないでしょうが!!」

 「陛下にさせるワケないでしょう!!」

 ライ様と私は、ハモルように一緒に言った。

 「だ、そうだ・・・ピアーズは、結婚ですらしてないが、跡取りは欲しいと切に願っている。」

 陛下は、困った顔で、学園長と施設長を見つめる。

 「どちらかが買って出てくれたらいいのだけどな~。今回のこと不問にきすって言葉をかけれるかもしれないしな~。」

 「私がやります。」

 「いや、わたくし目でございます。」

 学園長と施設長がどちらがやるかの火ぶたが切られた。

 うん・・・2人で勝手にやってください。


 「ハミッシュ陛下、今回の事、どういうことですか?」

 睨みを利かせて言う。

 ハミッシュ陛下も、知りえなかったようだ。

 なので、他のドラゴンたちの現状をしっかり調べるように指示を出している事を言った。

 「すまなかった。」

 陛下がカルデネに向かって謝る。

 それを見て、私も・・そして、そこにいる全員が頭を下げる。

 「この件は、国家鑑定長官に一任していました。ですので、長官の職を降りて貰いました。」

 ピアーズも降りて来て、説明を入れてくれた。

 「後任は誰が成ったのですか、今回のような事が再び起きそうな人は遠慮してほしいのですが・・・・。」

 ライ様が、ピアーズさんに疑いの目を見せながら聞く。

 「キマイラ事件で、爪を隠していた人物ですよ。」

 爪を隠す・・・もしかして、あの人物ですか?

 「アーサー・カンラン殿です。」

 キマイラ事件の時に、国家鑑定士の常駐鑑定士を動かした陰の立役者。

 「ぎこちなさ過ぎる感じはするが・・・周りの叱咤をうまく受け止めて行動してくれることを期待している。」

 一応、期待はしているようだ。 

 一応を、付け加える理由はいろいろあるが、できなさそうなら解任すれいい的な雰囲気に捕らえられる。


 「それで、どちらがやるのだ?」

 ハミッシュ陛下は、学園長と施設長を見る。

 2人してやりますで、未だに決まっていないようだ。

 「2人でやればいいだろう。傷の手当てをしてくれ。」

 ドラゴン医師がカルデネに近づき、そして、傷の手当てをしだした。

 まずは、ドラゴンの体を洗う事から始まった。

 カルデネに巣に帰って貰い、シャワーを浴びさせる。

 必死に学園長と施設長は、カルデネに掴みかかり、しっかりとリュヌの銀の櫛を口元に押し付けている。

 そのおかげで、皮膚の奥にまで化膿して腐っている部分の処理がすんなりと出来ていた。

 

 「サーシャ、ライナス、2人共授業の終了時間だ。帰り支度をして来い。」

 ハミッシュ陛下の一言で、14時を回っている事に気づく。

 「俺たち、昼食忘れてたな。」

 カルデネの事で、昼食をライ様とも忘れていた。

 「サーシャは、ルベルタに行く事になるから、しっかり昼食を食べてこい。」

 ああ、そうだった・・・私これからルベライト領へ行くんだった。

 私は、ハミッシュ陛下に挨拶をして、アジュムを後にする。


 私はどんよりした気分で、部屋に戻りシャワーを浴びてから、食堂へ向かう。

 シャワーを浴びても、どんよりした気持ちまでは洗い流す事が出来ず。

 そのまま、食堂へと行く。

 『アジュムにヘンリー様が来ているぞ!』

と、食堂にいる人たちが噂をしている。

 『ヘンリー様に会いに行こう』とか、『一目見たいわ』とか、ヘンリー様って人気なのね。

 まあ、4大公爵家の一つで、黄金のドラゴンのコスモと絆を結んでいて、独身貴族でしたからね。

 いろいろと言い寄られていたのでしょうね。

 それをうまくかわしていたのは、ある意味あの仏頂面のおかげだったりして。

 そんな事は、どうでもいいか・・・。

 「はぁ~」

 私はため息を付く。

 金曜日のこの時間の食事は、弁当として持ち運びに適したサンドイッチや、おにぎりなどが並べられている。

 手前に置かれているトレーも、通常のトレーと、紙の弁当箱が用意されている。

 「サーシャ来たか。」

 食堂にはライ様がいた。

 「陛下にしっかり食事をしろと言われているだろう。」

 ライ様は私のトレーにサンドイッチやらおにぎりを勝手に置く。

 「そんなに食べられませんよ。」

 「食べられなかったら、弁当に詰めて持って行け。」

 そう言ってもこれは。男性並みの量ですよ。

 ・・・・ああ、ヘンリー様にもか。

 私は席に着く前に、弁当箱も一つ貰ってくる。

 そして、先に弁当にサンドイッチにおにぎりを詰め始める。

 「・・・・・サーシャ。話せ。」

 私は、ライ様をちょとんと見る。

 「今感じている気持ちが、時間が経過するごとに重くなっているのではないのか?」

 ライ様は私の今の気持ちを言い当てる。

 そして、少しでも話して気持ちを軽くしていけと言ってくれた。

 「カルデネのこと・・・どうして、あんなに・・怪我を・・・させられたので・・しょう・・か?」

 言葉に詰まりながら言う。

 「その事についてお答えをしましょう!」

 ”どかんっ”

と、いきなり元気よく声が聞こえて、ライ様の隣の椅子に座るラスキンさん。

 「これを見てください。」

 ラスキンさんがテーブルの上にネックレスを置いた。

 半透明の綺麗な宝石がついた・・・・。

 あれ?

 ドラゴンのいる国で宝石は、ドラゴンに襲われるから危険なのでは?

 ではこれは・・・ドラゴンが襲わない物・・・ガラス?

 私は、手に取りじっくりと見る。

 透明な青い少し厚めのシート・・・ガラスにしては綺麗だわ。

 「ドラゴンの鱗ですよ。」

 私は目を大きく開け、ラスキンさんを見る。

 「この頃、王都の巷で出回っている青い鱗です。」

 私は、声が出せず、口を震わせていた。

 「きっと、カルデネの鱗でしょうね。」

 ラスキンさんの一言で、涙が出てきた。

 「ドラゴンと近い者からすれば、このような物は忌むべき物でしょうが、国の象徴としてドラゴンを見ている者からすれば、象徴の一部であり、それを持っている事は誇りのようなモノになるでしょうね。」

 ラスキンは、私の手に持っているネックレスを取り返す。

 「魔除けのような存在なのですよ。」

 クローライト領で貴金属店に入ったが、このような物は売ってなかった事を言うと、高級貴金属店では扱わない物。

 庶民感覚の貴金属店で扱われている物だと答えてくれた。

 「今、私の持っている物は、まだ品質的に良い物です。でも、何点か品質の悪い鱗も出回っています。きっと、カルデネの栄養が行き渡らずに鱗の質を落としたからでしょね。」

 ラスキンさんはネックレスを自分のポケットにしまう。

 「つまり、カルデネは、最初の内は鱗を勝手に抜かれ、鱗の質が悪くなると暴行をされたという事か?」

 「左様かと・・・。」

 何で、こんな事をするのよ・・・。

 人に危害を加えることを嫌がって、鳴き声でけん制する事しか出来なかった優しいドラゴンに・・・・。

 「カルデネは、何も悪い事していないわ・・・。」

 涙が溢れて止まらなかった。

 「ラスキン殿。今、巷で出回っているドラゴンの鱗の色は何種類だ?」

 ラスキンさんは、困った感じに舌打ちをする。

 「・・・・金色以外の全色です。」

 心に釘を打ち受けられるような衝撃を受けた。

 「サーシャ・・・俺も、途中まで一緒に行く。」

 私は、涙ながら目をパチクリして、どうしてなのか目で訴えた。

 「王都を出るくらいまでは、アマルテアに同乗しろってことだよ。」

 じゃあ、ライ様は今週末は王都でなく、クロランに帰るのですか・・。

 でも、それって・・・。

 ヘンリー様の婚約者だというのを気づかれない様にするために・・・。

 「その、申し訳ないです。私の為に・・・。」

 「無理やり人と絆を結んだドラゴンの事があったからだ。クローライト領が出元だからな。サーシャの為だけじゃないから安心しろ。」

 そう言っても、クローライト領の領都クロランに行くには大回りだもの・・。

 「・・・ありがとう・・ございます。」 


 こうして私は、どんよりした気持ちを残したまま、ルベルタへ行くためにアジュムへと向かった。


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