ウェルカムでない謁見
「急な謁見に対応して頂きありがとうございます。」
すぐに、執務室に通してくれた。
そこには、ハミッシュ陛下とピアーズさんがいた。
2人共、疑いの目で私を見る。
「ヘンリーに許可貰って来たのか?」
ハミッシュ陛下の一言に、貰えるわけないから屋敷を通り過ぎてきたことを伝えた。
「はぁ~。それって自分の身も危険になる事わかっているのか?」
呆れたように言うハミッシュ陛下。
「わかっていますが・・・今の晴れない気持ちも偽れない。」
きっと、ヘンリー様はここに迎えに来るだろう。
そして、この休日はヘンリー様一色のみとなる。
だけど、ここに来ようがルベライトの屋敷に直帰しようが、似たようなモノだ。
なので、姉さまの事を聞く。
「交換島にロゼリスさんらしき者が来ていたそうです。」
姉さまの特徴の爆乳に、コアルト大陸産のアクセサリーを所持しているがあげられる。
大体の産地が鑑定する際に判明することを、ハミッシュ陛下が夜に学園へ来た際に説明してくれて知った。
なので確認をする上で、事細かに容姿の事を言っていない。
オレンジ味のある金髪に、青い瞳。
コアルト大陸の人に多いストレートではあるモノの、毛先がクルンとなって、全く癖がつかないストレートの人間には羨ましい髪をしている。
そして、見事一致してしまった。
「ロゼリスさんは、アクセサリーを5つほど持ってきて、全てお金に交換した後、港町デュモルチェをすぐに出たそうです。」
姉さまが交換島に来たのは1ヵ月も前の事。
所持金から、高級な宿屋に泊まれば、とっくに底をついている。
でも、姉さまはそれなりの宿に泊まらないとならない。
もしくは、傭兵を雇うかである。
その理由は、姉さまが娼婦に見られる恐れがあるからだ。
何せ、あの胸だもの。
私が、女の一人旅となった時に取った行動は、デブに見せかけること。
服に貴金属をつめ、重ね着をして太ってみせた事で、女を買おうとする者がいなかったし、襲われもしなかった。
でも、姉さまはそのままの格好で、それもあの爆乳だ。体を買おうとする者がいるに違いない。
もしくは襲う恐れもある。
それを防ぐにはどうしても、それなりの宿を見つけないとならない。
後は・・・傭兵だ。
私は、考え込んでいる顔のまま、目をパチクリする。
「サーシャ、タイムリミットが近い。」
え!?
ハミッシュ陛下の言葉で、姉さまの捜査に何かいいことを思いつきそうだったに、思いつくきっかけが何だったのかも忘れてしまった。
「姉さまを捜索するのに、いい方法ありませんか?」
「それはこちらが知りたい。ロゼリスが行きそうな場所とか、興味あるモノとか知らないか?」
ハミッシュ陛下の質問をしてくるのは分かるが・・・。
姉さまの興味ね・・・。
「悪役令嬢のような嫌がらせ攻撃を、どう実行するか・・・それって興味の内に入りますか?」
『入る』と、言われてしまうと何か悲しい気がする。
「サーシャ。どうして・・・そこまでしてあげるんだ?」
ハミッシュ陛下の言葉の意味が解らず聞き返す。
「サーシャの事は、調べ上げている事はわかるよね。」
もちろん。
調べられてクラウンコッパー家の人間とバレて牢屋に入れられて、ひと悶着ありましたから。
痛感までしてますよ。
「それこそ、悪役令嬢に取り巻きまで付いた攻撃をされていたのは、知っている。」
この場合の悪役令嬢は、義母にあたるのかしら?
やはり、姉さまなのかしら?
・・・どちらにしても、嫌がらせ攻撃内容は変わらないか。
「なのに、あからさまにサーシャに対して罪がある者たちを、多少住みにくいが、それなりの自由を与えたのはどうしてだ?」
・・・・・。
「祖国であるイリス帝国に対しても罪がある者たちだ。ヘリオドール家にいいように扱われて当然ではないのか?」
「祖国に対しての罪なら、クラウンコッパー家の者として、私にもあります。」
もし、私にそれなりの力があったら内戦にまで至らなかった。
内戦をすることで、よりよい国になったとしても、内戦の傷は簡単には癒えない。
そう考えると、私がヘリオドール一族の者と言っても、ウィリアム伯父様の厚意でおこぼれを貰っているようなモノだ。
「祖国の事を挙げたのは、すまなかった。」
「内戦の責任は私にもあります。幼いから許されると思い込むのは自分への甘えです。」
一族という事だけで、幼い・・それそこ、生まれたばかりの子ですら処刑されるのだ。
「民主主義の道を説いたとしても、そんな事は些細なこと。国民を苦しめた一族には変わりはありません。」
イリス帝国の内戦が終息したのを未だに伝わってきていない。
「その罪を姉さまや、義母、弟のみに押し付けるのは、甘えているようで・・・。」
だから、同じような境遇の環境下に住まわせた。
クラウンコッパーと知れれば、報いを受ける環境下だ。
「それでも、俺は甘やかしてるとしか思えない。」
ハミッシュ陛下がため息を一端吐いて、再び話し出す。
「サーシャは、報復に怯えているのではないか?」