触れて・・悲しくなる世界
巻基さんと別れてから、再び仕事に戻る。
だが、仕事に身が乗らなかった。
まあ、今日じゃなくてもいいし・・・。
だけど、自宅に帰ると電気代かかるし・・どうしよう?
私は自分のスマフォを見つめる。
私は、なんとなく鈴里子に真相を知りたくなり、メールをしてみる。
結婚したことを一応はお祝いしようと、まずはお祝いの言葉を入れて。
その後はやはり、佐賀宮副部長の元奥さんとの間の子の養育費の事を綴った。
払っていなければ、払ってあげて欲しい事も入れて・・・。
数時間が経ち帰宅しようとスマフォを見ると、返事がきていた。
―――――――――――――――――
ウザッ、キモッ
何なの今さら?
何、いい子ちゃんしてるの?
おかしくない?
ホント
そこが、マジで嫌いだったのよね。
アンタを利用したって言うのに、
結婚おめでとう
って、おかしくない?
アンタがビッチだって噂ながしたの
この私なんですけど~。
まあ、アンタのおかげで慰謝料チャラ
になった事はお礼をいうわ。
でも、邪魔な子の養育費を
自分たちの生活費を削って、
支払うなんて
するわけないじゃない。
何、馬鹿なこといっているの?
私のお腹の子に養育費を
支払うっていうの
しっかり払って、いい大学に
行かせてあげるんだから
そういう事だから
それと、もうメールしないで
うざくてキモイんだから
じゃあ・・さようなら
―――――――――――――――――
・・・・・。
私は、巻基さんにこのメールを送った。
すぐに巻基さんから『一緒に、戦ってくださいね』と、返事が来た。
私も、頑張って戦う事を伝える。
そして、自宅に着く。
すぐに、お風呂に入りシャワーを浴びる。
出てから30分間だけクーラーをつける。
その間に、バケツに氷水を用意。
首用の氷枕を身に着け、
脇にもお手製の氷枕を付ける。
床にビニールシートを敷き、そこに氷水の入ったバケツ。
テーブルにゲーム機。
氷水の入ったバケツに足を突っ込み
ゲームのの電源をON
さあ、『続・ドラフラ』を、やろうではないか!
『ドラフラ』だと、サポートに回っているヘンリー様を攻略すること出来るからお得なのよね。
ヘンリー様との恋愛ルートは、何か兄妹愛っぽいのよね。
リオンとヘンリー様は赤の他人なんだけど・・・。
元々、ルベライト城で家族の様に、一緒に育ったから、そうなってしまうわよね。
でも・・・私には程遠い感覚。
遠くで、見つめる世界。
触れたくても・・・触れれば無くなってしまう。
無くなるどころか、ただ辛く、悲しくなる世界。
遠くで見ているだけでよかった。
・・・そう、思う世界だ。
父さん、母さんと弟が、居間で楽しく会話している。
それを遠くで、息をひそめて見ている。
もし、気づかれでもしたら、一瞬で暗くて陰湿な世界になる。
嫉妬し、世界をわざわざ陰湿なモノとしても、誰も、暖かく、愛おしいモノは帰してこない。
もっと、闇に覆われた世界になるだけ。
遠くで見つめる暖かなモノもない。
・・・意味のない世界。
そんなの、私だけでいいよ。
私だけにしてよ。
”ポタリッ”
コントローラーを握っている手に涙が落ちる。
”ポタッ ポタッ”
所詮、私はゲームの中にある暖かなモノに触れていればいいだけ。
ゲームなのだから、誰も傷つかない。
”ガチャン バーーンッ”
「っ!!?」
いきなり、隣の号室の勢いよくドアの開閉をする音が聞こえる。
私は、我に返り涙を拭いた。
『うわ~、うわ~、うわ~~!!』
と、隣人が唸る声が荒げるように聞こえてくる。
な、何があったのだ?
・・・近所迷惑なのですが。
隣人のドッタンバッタンする騒音の中で、ゲームに集中する。
それにしても、ヘンリー様はドラゴンの扱いが攻略キャラで一番て思うのよね。
リオンは、チートであるドラゴンと意思疎通が出来るから、ドラゴンの扱いは当然良くなる。
だけど、まだドラゴンと意思疎通が出来ない中でも、ドラゴンの気持ちを自然とくみ取って行動しているのよね・・・。
幼い頃からの遊び相手である、赤いドラゴンの存在も大きいわね。
リオンのとんでもチートで隠れてしまっているけど、ある意味チートよね。
さすがは、領民との距離が近い環境下で育った公子様だわ。
”シャーーーッ シャーーーーッ”
隣からスプレーの噴射する音が聞こえてくる。
隣・・・出てしまいましたか?
ゴキブリ?
『わ~わ~』うるさいし・・・。
”ダーーンッドタンッ”
何か・・・凄い音が・・・タンスをひっくり返した?
”ドンドンドンドン”
『近所迷惑だろうが!!』
ああ、見かねた人が、隣に訴えに来たわ。
『うわ~、うわ~、うわ~』
なお、隣人さんは叫んでいますか・・・・。
アパート通り過ぎ、近隣所住民からも抗議の者がきたりして・・。
「ふ~」
と、ため息をつく私。
”ドーーーーーーーーーーーーーーーンッ”
この日・・・私は、死んだ。