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悪女の幸福に、子を巻き込むな。

 穂野支社に移動となって一年半ほどが経過した。

 穂野市が観光地の為、通勤に人が多いのが気になるが、何とか慣れ始めた頃。

 会社のお盆休みとなった。

 だが、仕事の進み具合で、休み期間も会社で仕事をしている人が、ちらほら見える。

 私は、自宅にいても電気代がかかるため、会社で優雅に仕事をしていた。


 会社のクーラー最高!

 そのまま、泊っていいかしら?

 そのように思いながら、穏やかな気分で仕事をする。


 「浅見さ~ん。」

と、部署の出入り口で私を呼ぶ隣の部署の課長さんだ。

 私は、隣の部署の課長さんの方へ行くと、後ろの方を指さして客が来ていると言った。

 「お久しぶりです。来濃支社の人事部の巻基 早苗(まきもと さなえ)です。」

 私は、驚いた。

 来濃支社からこの穂野支社への急な移動の際に、お世話になった一つ下の後輩だからだ。


 私は、一端仕事を切り上げ、喫茶店に巻基さんと入る。

 「巻基さん、どうしてこちらへ?」

 「旦那の実家が穂野なんです。」

 その一言を言うと、いきなり暗い顔をする巻基さんだった。

 私は、どうしたのかを聞く。

 「話すべきか戸惑うのだけど・・・伝えますね。」

 そう言い、鞄からハガキ出して私に見せる。


 ―――――――――――――――――


  私たち結婚しました!

  海外で幸せ満喫してます。


  佐賀宮 継琉・鈴里子


 ―――――――――――――――――


 「・・・・・・・。」

 開いた口が塞がらなかった。

 「鈴里子先輩と、私は同じ大学の出なんです。」

 巻基さんは、混乱している私にもわかるように説明してくれた。


 大学時代から鈴里子は、いろいろと男性関係に噂の絶えない人だったらしく、問題を起こしていたようだ。

 巻基さんが会社に入り、社内に鈴里子がいたことで人事部なら、例え、鈴里子が部署移動希望を出しても、別部署へ送る事が出来るのではと、人事部を希望したほどだと言った。

 それと同時に、同期で同じ部署の私の事を心配をしていた事も

言ってくれた。


 「佐賀宮副部長は、来濃での出世頭。将来は、本社の勤めが決まっているような方で、鈴里子先輩にとっては玉の輿の相手にふさわしい相手です。」

 鈴里子は私が穂野支社に移動なってから、すぐに実家の手伝いで退職するとメールしてから、メールのやりとりは無くなった。

 私は、鈴里子が本当に退職したのかを聞いてみた。

 「ええ、退職しましたよ。ちゃっかり、豪華な送別会をしてもらっていました。」

 私は、急ぎだったので、花束で終わったっけな。

 その事も、巻基さんは怒っていたようだ。

 「佐賀宮副部長は、海外支社に転勤が決まり、その事で奥さんと離婚したんです。」

 隠蔽工作された写真に惑わされ、会社で暴力沙汰の騒動を起こしたことで慰謝料はなく、子供の養育費のみの支払いになったことを噂で聞いたと巻基さんは、説明に付け加えて話してくれた。

 「ただ、養育費ですが・・・急ぎの離婚だったので、調停離婚ではなく、養育費の支払いが滞っているっていう噂も聞きます。」

 私の腸に、黒いモノがあるのに気づく。

 「それが、本当なら・・恐ろしいわね。」

 私は、黒いモノが恐ろしくなり、他人事のように伝える。

 「浅見さんは、お優しいと言うか・・・無知というか・・。」

 巻基さんがスマフォを取り出し、少し操作し、私の前に出す。

 「この写真の鈴里子先輩の服に見覚えありませんか?」

 巻基さんは、大学の鈴里子と同期の先輩から同窓会の写真を見せて貰い送って貰ったと言ってくれた。

 ・・・・・。

 その写真を見て、腸の黒いモノが大きくなるのがわかった。

 「隠蔽工作された写真の服と同じですよね。つまり、佐賀宮副部長と不倫関係だったのは、鈴里子先輩なんですよ。」

 事実なのだろうな。

 海外で、佐賀宮副部長と鈴里子が夫婦になったんだから・・・。


 私は、その事実を知ってどうしたい?

 真実を暴いたところで、起こってしまった事実を変える事はできない。

 他人を不幸にしても手に入れたかった鈴里子の、悪さの全てを暴いたところで、不幸が増えるだけ・・・。

 それよりか、鈴里子に逆恨みをされないか?

 されたら、辛くなるのは私自身だ・・・。


 だけど・・・・。


 「巻基さん、穂野支社に移動になって良かったと、この頃思えるようになったのよ。」

 真面目にコツコツ働いているのが認められて、いろいろと任されている。

 もちろん、後輩指導もお願いされていた。

 だから、わざわざ他人を不幸にする行為をしようとは思わない事をまずは伝えた。

 「だけど・・もし、佐賀宮副部長の別れた奥さんの子供の養育費が、支払われていないというなら、力を貸したいわ。」


 子供には非はない。


 それを、非があるような扱いを許してはいけない。

 自分がそのような扱いを受けて、辛い思いをした経験があるのだから・・・。

 同じような不幸を・・・子に味あわせる事をさせてはいけない。

 「わかりました、約束ですよ。」

と、巻基さんが言った。

 調べる気が満々だわ。

 「でも、どうして関係ない巻基さんがこのことに首を突っ込むのかしら?」

 私は、不思議に思い聞いた。

 「仲良しの従兄が、鈴里子先輩に弄ばれたんですよ。だから、許せないんです。」

 ・・・・なるほどね。

 私は、クスリッと笑った。

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