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手紙

 日が落ちだいぶたっていた。

 夕食も終え、就寝の時間になる。

 この時間も一応食堂は開いている。

 勉強している生徒の為の夜食が提供されているからだ。

 この時間の食堂は、サンドイッチなどの簡単に作れる物を注文を受けてから作る形式となっていた。

 そして、この時間の食堂のテラスは、日中はテラス席が設けられているが、テーブル等は食堂内に片付けられて、広々とした空間になっている。

 ライ様と私は、そのテラスにいた。

 椅子を二客持ち出し、ライ様と私は座っている。

 いや、休憩をしていた。

 そして、やっとハミッシュ陛下とピアーズ様が来た。

 ユピテルからそのままテラスに降りるハミッシュ陛下。

 「遅くなってすまない。正面から視察となると手続きが面倒でね。」

 「来ていただいただけでもありがたいです。」

 私は、椅子に座ったままお辞儀をする。

 本来なら立つべきなのだが・・・・。

 「どうしたのだ?」

 ハミッシュ陛下は私の異変に気付いたようだ。

 「ライ様とダンスの練習をしてまして・・・疲れてしまいましたので、座ったままで申し訳ないです。」

 その言葉で、私が座ったままな事を察したようだ。


 ここにいるライ様は、勉学は出来る。

 剣術等の武術も出来るようだ。

 キマイラ事件の時に、いろんな方からお褒めの言葉を貰っていた。


 ただ・・・未だにアマルテアから年齢を聞けていないあたり、もしかして女性の扱いが下手なのではと思いまして・・・。

 まあ、思い返せば、私の身体を台にして地図を乗せたこともあったわね。


 それで、ダンスの事を聞いてみたら・・・・。

 「社交の場に出ても、踊ってくれる人はいないはずだ。」

 それはね・・・ドラゴンと絆を結べてない場合ですよ。

 今は、アマルテアと絆を結べたでしょう。

 はあ~

 ・・・心のため息まで出てきたわ。


 今のライ様は、ドラゴンであるアマルテアと絆を結んでいるクローライト公爵家の立派な跡取りです。

 同世代の女性たちのあこがれの存在のはず。

 その方が、ダンスのレッスンを受けていない。

 元、教育係である私の面目に関わるわ。

 今からでも遅くないと、レッスンしたら・・・。

 足を踏まれる、踏まれる。

 私の足に、足を乗せて練習しているのかしらと思うほどに、これでもかと思うほど、踏むに踏まれて・・・ダウンしました。

 ハミッシュ陛下、そういう事なので椅子のままですみませんね。


 ハミッシュ陛下は、食堂から椅子を自ら持ってきた。

 それも、二客。

 ピアーズさんようにと・・・側近にも気を使っているのかしらね。

 視察禁止中だから・・・仕方ない行動なのかしら?

 まあ、いいか。


 「それでサーシャ。俺に話しがあって呼び出したんだろう。」

 ハミッシュ陛下が、聞いて来た。

 私はポケットからベロアのような袋を取り出し、ハミッシュ陛下に渡す。

 「私の部屋に届けられた物です。」

 私は、自分の寮の部屋に帰った時に置いてあった事を説明する。

 ハミッシュ陛下はリュヌの銀の櫛を取り出すと、驚きを見せるが、すぐにテラスの柵の方へと進む。

 「ユピテル、これを見てくれ。」

と、言いユピテルにリュヌの銀の櫛を近づける。

 ”ギュオリ~ン ンオ~ン”

 ユピテルは・・・嬉しそうに、首をくねくねしだす。

 「・・・陛下」

 ピアーズが腹の底からのホラーを感じさせる声を発する。

 「ピアーズこれは不可抗力だ。これが本物かを調べるために必要だったのだ・・わかってくれ。」

 ピアーズさんはため息をつくと、一泊する部屋を借りる事を学園長と交渉するとテラスを出て行った。

 ハミッシュ陛下は、袋の中の手紙にも気づき中を見る。


 ――――――――――――――――――

  ロゼリスが、ホルンメーネ国を出航

  行方知れず。

 ―――――――――――――――――― 


 そして、ハミッシュ陛下は至急呼び出しをしたことを察した。

 

 ロゼリスとは、ロゼリス・クラウンコッパーといい、私の異母姉である。

 イリス帝国を亡命をした際に、ロゼリス・クロムと名乗り、ホルンメーネ国の私が用意した邸宅に、異母弟と義母と住んでいたはず。

 でも、ホルンメーネ国から出てしまった。

 

 「サーシャ、ホルンメーネにいる2人はどうなっているのだ?」

 ウィリアム伯父様に迷惑をかけない為に交わした契約。

 もし、亡命先で行方知れずになったら・・・。

 「ヘリオドール家が3人を捕まえて、ヘリオドール家の檻に入れられる事になっています。」


 イリス帝国の革命の発端ともいえる者たちだ。

 ヘリオドール家で匿えば、イリス帝国の革命がウィリアム伯父様の国であるナーガ国にも革命が広がる恐れがある。

 なので、ヘリオドール家で匿う事は出来ない。

 でも、交渉の道具として、あの3人は有効利用が出来る。

 

 3人が亡命をした際に頼るのはウィリアム伯父様のところと仮定していたので、先にホルンメーネに亡命先を用意する事を告げていた事で、ホルンメーネでのある程度の自由がきいていたのに・・・。

 一応、ホルンメーネに3人が到着したら、その旨を伝える手紙を渡す手筈となっていたので知ってるはずだ。

 でも、それでも姉さまは逃亡をした。

 それも、2人を置いて・・・。

 「なあ、サーシャ。ホルンメーネに亡命させた3人は、仲が良かったのか?」

 ライ様が、私に質問をしてきた。

 「3人ともグアノ派の人間でしたから、それなりに仲が良かったですよ。特に姉と義母は、ファッションを通して意気投合してましたから・・・。」

 実の親子ではないかと思うほど、姉さまと義母様は仲が良かった。

 「一番に意気投合してたのって、貢物のアクセサリーの事じゃないのか?」

 その通りで、一緒にアクセサリーを見て、手元に置くか、倉庫にしまうかを楽しそうに決めていた。

 「それってさー、貢物がなくなればお終いって事じゃない?」

 ・・・・・・。

 「だけど・・仲が・・・・。」

 私は、言葉に詰まった。

 女性ならではの表面だけは仲が良く、裏では嫌っていて、どう利用しようかと画策しているっていう・・・。

 

 ああ・・・今夜は悪夢見そう。


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