表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/423

嘘は言ってません

 「始めまして、サーシャ・トラバイトと申します。どうぞ、よろしくお願いします。」

 私が、丁寧にあいさつをする。


 そう、私は今日から聖ドラゴニア学園の2学年に入学をした。

 わざわざ、学園長のダニエル・スペサルティンが、一緒に教室に入ってくれたのは、私が飛び級での入学だったからだ。

 

 教室は、大学の教室のような造りの教室で、段々式の階段に机が並べられている。

 その為、今いる教壇付近からは生徒の顔が良く見える。

 学園長の『仲良くしてあげてください』の言葉に一同拍手で向かい入れてくれた。

 ・・・ひとまず、良かった~。

 

 そうそう、先ほどサーシャ・トラバイトと名乗ったが、サーシャ・トラバイトであっています。

 例え、私の鎖骨と胸の間に金色の文様が刻まれていようが、その伴侶の絆の文様の上からキスマークを付けられていようが・・・。

 まだ、ドラゴンの大樹の前で、誓いを交わす()を挙げていませんから『サーシャ・ルベライト』とは・・名乗っていません。

と、言うか・・・いろんな方々のご厚意で逃げ場確保をしてくれた結果です。

 えっと・・・この場を借りましてお礼を申し上げます。


 私には、逃げ場が必要です。 

 どうして、私の逃げ場確保に、周りの方が奮闘してくれたかの経緯はと言うと・・・・・まあ、想像にお任せしますってことで。


 なので、私はサーシャ・トラバイトとして聖ドラゴニア学園に、一年間生徒として勉学をすることになった。


 休憩時間になると、私の周りに人が群がる。

 そして、矢継ぎ早にいろいろと質問してくるという洗礼を受ける。

 一番聞きたい質問は、どうして飛び級までしたのか・・・だろうね。

 「婚約者が、跡取り息子なもので、その・・・嫁ぎ先の事情と・・言いますでしょうか・・・・早く孫の顔をみたいそうです。」

 その言葉で皆がある程度わかってくれた。

 「では、先に子を産んでからでも遅くないのではなくって?」

 はいはい、その質問の答えも用意してますよ。

って、どうなさったのですか皆さん。

 空気が変わったような感じがするのですが・・・。

 おお・・周りを囲っていた人だかりが、避けていくよ。


 えっと、ですね・・・。

 もう・・とっくに、『ドラフラ』と『続・ドラフラ』の乙女ゲームの世界はとっくにエンディングを迎えてますよ~。

 それも100年以上前・・127年前になるのか?

 人だかりが避けた先に、取り巻きを連れてのご令嬢様が見えようが、ゲームの世界は終わっています。

 なのに・・この行動は・・・。

 ご令嬢様、ご令嬢様・・・あなたは、悪役令嬢様ですか?

 こちらが、質問したいです。

 まあ、残念なのが・・黒髪なのに、縦巻きロールではありません。

 きっと縦巻きロールがお似合いになるのだろうな・・・出来れば服は袴姿でお願いします。和服似合いそうだ。例え縦巻きロールの髪型であっても。

 

 「始めまして、サーシャ・トラバイトです。」

 私は席から立ち上がり、ご令嬢に挨拶をする。

 「ラヴィニア・バサルトですわ。」

 私は『よろしくお願いします。』と、言おうとしたが・・・やはり、ありました。

 取り巻きによる、ラヴィニアさんのご令嬢紹介。

 彼女らの紹介によると、ラヴィニアさんは、キンバーライト領の出身者で侯爵令嬢。

 なんでも、バサルト侯爵家に紫色の瞳の子が生まれると、必ずその子は黒髪になると逸話のある一族との事。

 ラヴィニアさんの瞳の色は紫で、しっかり黒髪をしていますよ。


 さて、質問の答えですよね。

 「故郷の内戦に巻き込まれないように、ドラゴニアに亡命してきたのです。」

 「そういえば、独身貴族だったヘンリー様の婚約者って、亡命してきた公爵令嬢だったような・・・。」

 避けた集団の中の一人が言った。

 はい、私です。

 そして、ありがとう。その言葉を待っていました。

 皆が、私をヘンリー様の婚約者ではないかという目で見ています。

 「亡命をしたので、貴族の位は過去の話なのですが・・・トラバイト家は男爵位ですよ。」

 お~・・・。

 一瞬で、周りの眼差しが、期待外れの目に変化してくれました。

 これで私は、ヘンリー様の婚約者ではないと認識させたわよ。

 つまり、媚びへつらいと、賄賂、貢物はなく、正々堂々と清らかな人間関係が築けるのだ。

 「あまりというか、よくない家・・ですよね。」

 男爵の位は、下級貴族の位だ。

 本来の私の家であるクラウンコッパー家は、上級貴族の筆頭である3大公爵家の一つだが、クラウンコッパー家は、聖女リオンを殺した一族。

 例え、姓名が同じでまったく関係ない公爵家でも、姓名のそれ自体がドラゴニアにはよろしくない。

 「そのようですわね。」

 上から目線ですよラヴィニアさん・・・取り巻きさんもですかね。

 「私が亡命者で、あまりよくない家の者ですので、少しでも嫁ぎ先に迷惑をかけないように、こちらの学園を飛び級で入学をする事にしたのです。」

 私は、用意していた質問の答えを伝える。

 「いい心がけですわね。頑張りなさい。」

 あらあら、上から目線炸裂してますね・・・。

 「ありがとうございます。」

 私は、嘘をついていない事への達成感の嬉しさを顔にだして、お礼を言った。


 これまで私がした回答に嘘はありませんよね。

 大掛かりな偽りはしていますが、嘘は言ってないはずですよ。

 ・・・嘘は。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ