癒しの力
「サーシャだ。」
マティアス殿の口からサーシャの名が上がる。
・・・どういう事だ?
「サーシャはマブ・ラリマー邸にいるのではないのか?」
マティアス殿から、サーシャがリオンに呼ばれてドラゴンの大樹へ向かったことを聞く。
「リオンは、サーシャに伝えたいことがあると夢で言ってました。きっと癒しの能力を伝える為に呼んだのかと。」
それがこの能力と言うのか?
何だ、この不安に思う気持ちは・・・。
「だが、リオンとは違う。リオンはドラゴンの大樹の力を借りずに歌と血だけでドラゴンに癒しの力を使っていた。」
ホレスがリオンとの違いを述べる。
「不安定な能力を・・・無理して使っている。」
そう、それだ。
リオンですら、自らの血を流し癒しの能力を使用していた。
「サーシャも、もちろんリオンと同じで血を流しているよね。」
火炎瓶を投げ終わり戻ってくるフレディが述べる。
『サーシャはクレシダと一緒にいるはず。クレシダは心優しいドラゴン。サーシャの怪我を良いとは見ないはず。』
ジェロームが、敵と交戦しながら通信を使って伝えて来る。
『あの・・・今朝、サーシャを見た時。いつもと違うピアスを付けてました。』
ナイジェル殿の義弟のチェスター殿が伝えて来る。
ピアスって・・・俺のプレゼントしたコスモスのピアス。
俺の顔がみるみる血の気が引くのが分かった。
『サーシャは元々マシュアクセサリーのピアスを付けています。そのピアスは外すことは出来ないはず。つまり、今朝新たに耳にピアスの穴をあけたとみていいでしょう。』
デリック先生が伝えて来る。
胸が・・・苦しい。
「サーシャの血は、ピアスの穴からの物だろうから、大量の出血の心配はないが・・・・。」
『その分、サーシャの寿命が削られているとみてよいなあ~。』
”ドクンッ”
陛下とジジイの会話に俺の心臓に痛みを訴える。
「ヘンリー、お前とコスモにしかそれを解決するすべがないよね。」
父上が俺のところに来る。
「だが・・。」
目の前で死闘を繰り広げている。
その中でコスモの能力は必要だ。
「ヘンリー。俺が命令をしないとサーシャを救えない程の情けない男なのか?」
そんな事はない。
絶対に!!
「コスモ!!」
と、コスモの手綱をドラゴンの大樹に向かうように引く。
”ビユーーーーンッ”
コスモはドラゴンの大樹に向かって飛翔した。
◇ ◇ ◇
「ああ・・・行っちゃった。俺がサーシャと伴侶の絆を結びたかったのに・・・。」
グレアムは、弓矢を引きながら言う。
”ピシューーン”
その矢は敵の羊の目に命中する。
「グレアム様・・・サーシャに会った事ございませんのに、それは・・・。」
ハワードが困ったように言っている。
「だって、ヘリオドール一族の者だろう、嫁に出来たら領民の為にいいだろう。・・・マリッジブルーを狙っていたのにな~。」
グレアムは、ハワードも実はサーシャを狙っていたのではないかと
問いかけている。
「私は、ヘリオドール一族だという事でサーシャを魅力的だとは思っていません。」
「サーシャ自身に魅力を感じているって言っているモノですね。」
と、グレアムとハワードの会話にライナスが入って来た。
「ライナス殿はいいよね。サーシャの教えを受けているのだから・・・。」
「教えというか・・自分で導けっていう感じですよ。」
ライナスが弓矢を放つ。
おお・・まだ聖ドラゴニア学園に入学してもいないのに、しっかり敵を射止めている。
クローライトの次期公爵は優秀な子のようだ。
「その導けっていう考えから、思うのですが・・・今のところドラゴニアにいるヘリオドール一族はサーシャだけですが・・・それって今のところって・・事ではありませんか?」
ライナスの言葉に、一同が一瞬言葉を失う。
「ハワード・・・俺らもしかして将来、義兄弟になるかもな。」
「・・・そうですね。」
「サーシャとヘンリーに頑張って貰いましょう。」
3人は、一同に納得した。
『まずは、ヘンリーに息子じゃろう。儂と絆を結ぶのじゃからな~。』
臙脂様が会話に加わって来た。
「生きていればの話ですがね。ここで死んでくれてもいいのですよ。一応臙脂様は、危険ドラゴンに指定されていますから。その方がお勧めなのですが・・・。」
フレディが臙脂様に酷い一言をサラッという。
『誰が、こんなところで死ぬか~!!!』
”ブオ~~~~ッ”
臙脂様が炎の能力で敵を燃やし尽くす。