祝福のオーラ
『状況の説明をしろ!』
陛下の通信が聞こえる。
”陛下だ~!”
”うお~!!”
と、陛下の通信で騎士たちが鼓舞される。
『敵の本体がそろそろ到着します。』
ジェローム殿が、敵の数の状況を説明する。
遠目が利くマブがそのように捉えたのだろう。
『ドラゴンの口からの能力攻撃が一番効き目がある。中でも吹雪の攻撃は敵の動きが遅くなるようだね。』
フレディが敵の弱点を説明する。
『吹雪の攻撃を使える者を均等に配置しています。』
マティアス様が騎士の配置の説明。
『厄介なのは、あの黒い煙だよね。今、その黒い煙がどこから出ているのか調べている所です。』
父上が説明をする。
そう、皆で黒い煙の発生する箇所を調べながら攻撃をしているのだ。
厄介なだけあって、今のところ見つけられていない。
それよりもドラゴンが負傷しだしている。
ドラゴンのしっぽ、これがネックになっている。
つい、しっぽで払いのけようと、自然とドラゴンが動いてしまうのだ。
しっぽの先が無くなってしまったドラゴンが、ハウラの街のマブ・ラリマー邸に行っている数が多いようだ。
つまり、距離をある程度保たなければ危険だ。
そのことを説明する。
『遅れました』
ホレスの通信が聞こえた。
『一番遠方からの援軍が来たな。ホレス状況は聞こえてたか?』
『吹雪の攻撃が一番効き目があるところからですが。』
ジェロームから、敵本体がそろそろ着くことを聞く。
『あれは・・・。』
セシルが何かを言って来た。
”ブワーーーーッ”
と、金色のオーラが広がり地平線手前で消える。
祝福のオーラだ。
・・・まだ、前回の祝福のオーラから、時期が経っていない。
皆、驚きを見せる。
『奇跡と言える祝福のオーラは、感激すべきことだけど・・・敵本体が来ていない中ではいただけないな~。』
おい・・フレディ、士気が下がる事を言うな。
『祝福のオーラが敵にかかった時。黒い煙が消えていた。』
ライナス殿が言う。
だが、祝福のオーラはもう期待できない。
1年に一度の祝福のオーラですら、奇跡に近いのだから・・・。
『マブ・ラリマー邸にいるドラゴンがこちらへ戻ってくるはずだ。先ほどの怪我の事がある。そのドラゴンは充分気を付けて行動をとるだろう。まあ・・そのドラゴンを見習えって事かな?』
陛下が、士気を上げようと茶目っ気たっぷりに言う。
騎士の気持ちが少し和らいだようだった。
「我々には守りたいモノがある。その信念を導けるよう全力を持って進めーーー!!」
陛下が到着し、陛下自らの声で騎士たちに鼓舞する。
”わーーーーー”
騎士たちの高鳴りが敵本体へと向かわせる。
「コスモ。押されている所へ援護射撃できるな。吹雪属性の雷を敵に放つ。」
”ギュオーッ”
”ドンッ ゴゴーッ バリバリッゴゴゴゴーッ”
コスモが放った雷が敵にあたると、そこが凍りだす。
「その力、いいよね~。2つその属性を一気に放つことが出来るって能力。」
全属性を扱える金色と紫色のドラゴンであっても、口から出すの能力は1つずつしか出せない。
金色のドラゴンであるコスモだけが、2つの能力を一篇に出すことが出来る。
「ねえ、コスモ。氷属性付きの雷を放った後、凍った箇所から冷気を出す風の能力まで付いたモノを出せる?」
フレディがコスモに聞いてみた。
”ギュウギョオー”
コスモはやってみるようだ。
”バリバリバリッ ゴゴゴー ヒュオーーーッ”
うん・・・出来てしまった。
「なんて羨ましい。オルクスは風属性がずば抜けているんだけどね。」
フレディと絆を結んでいるオルクスの瞳は紫色。
紫色のドラゴンは全属性の能力は使えるが、金色の瞳との違いは、能力のバランスにある。
金色の瞳のドラゴンは均等にそれぞれの属性が強力に扱えるが、紫色の瞳のドラゴンは、1つの能力が秀でて強く、その他の能力はそこそこ使える程度となっているのだ。
それでもオルクスの場合は、その他のモノも強力的に扱えるのだが・・・一篇に能力を扱う事が出来ない。
フレディもオルクスも悪戯好きには、面白くないのだろうな。
だが、これでコスモの様になったら、恐ろしい事になりそうだから良かったのかもしれない。
「フレディ様。準備が出来ました。」
白騎士団の一人がフレディに伝えると、フレディの顔が変わる。
「行ってくるね。」
と、言って嬉しそうに敵に向かっていった。
手には液体の瓶を持って。
”ガシャーン ボワ~ッ”
瓶が敵にぶつかり割れて敵を炎で包み込む。
「おいおい、あれって火炎瓶じゃないか・・・あんな物を作るとは・・・まったく、フレディの能力は恐ろしいね。」
陛下が困った感じでつぶやいた。
”ブワーーーーッ”
え?
金色のオーラが辺りを包み、怪我しているドラゴンの傷がみるみる回復していった。
しっぽが無くなったドラゴンも元通りに復元。無かったことが嘘のようになっていた。
・・・これって、祝福のオーラ。
「サーシャだ。」
マティアス殿の口からサーシャの名が上がる。
・・・どういう事だ?