給料、ボーナス、特別手当
サーシャとヘンリー殿が、婚約を公にした舞踏会から、今日で10日となるのか・・・。
舞踏会が昨日のことのように・・・いや、家族とサーシャで川の字となって寝たのが、昨日のように思える。
舞踏会は・・・一昨日だな。
ライナスが、アマルテアと絆を結べたので、昨日にしてもいいのだが・・・やはり、家族の絆も大事だからな。
そのライナスなのだが、未だにアマルテアから年齢を聞けていない。
雌のドラゴンはどうも、年齢不詳でいたい傾向があるようだ。
国家鑑定士枠があるので、年齢は教えて欲しいと誰もが思うだろうが、ライナスは公爵となるから、年齢はさほど関係がない。
ただ、信頼関係の進展ということで、ライナスだけでもいいから、伝えて欲しいものだな。
「マティアス、キャサリン。遅くなって申し訳ない。」
陛下が、ピアーズ殿と一緒に王宮の応接室に入って来た。
ピアーズ殿の髪がくしゃくしゃになっているから、何かあったのだろう。
あらかた陛下が書類整理を怠けたのだろう。
陛下は、書類整理の怠け癖があると噂が上がっているからな。
「それで、話があると聞いたのだが・・。」
陛下から話を切り出してくれた。
なので、遠慮はいらないな。
「サーシャの事です。」
これまで、たくさんの仕事をこなし、想像以上の成果を残してきた事を
伝える。
「これからも、この国の発展に貢献する事は、安易に予想できます。」
ピアーズ殿。素敵なお言葉ありがとうございます。
「それですのに陛下は、サーシャに何も褒美をくださらないのですね。」
キャサリンが少し不満を表す口調で言う。
「陛下がサーシャに、ルベライト家それにナイジェル・ラリマー邸のところへ行って欲しいと紹介状を書いたのですよね。」
いわば、サーシャは派遣である。
「それですのにサーシャは、陛下から給料を一切頂いてない様子でしたよ。」
キャサリンはピアーズ殿に、サーシャに給料は渡したかを聞く。
もちろん、出していないと答える。
「国のトップが、他国であろうが公爵令嬢を奴隷のように扱うとは・・・。それも、ヘリオドール一族の者を・・。」
「その事が、ヘリオドール一族のトップであるウィリアム殿の耳に届いたら、どうなってしまうのでしょう。私・・恐ろしいです。」
キャサリンの援護射撃は、的確で嬉しい。
私の妻で、本当に感謝をしている。
「サーシャ殿に、給料をお出しいたします。」
それは、もちろんの事だピアーズ殿。
「そういえば、トリプライト宮殿の使用人たちは、ボーナスも頂いている方がいるとか・・・。」
トリプライト宮殿の使用人たちは、部門ごとのトップ10人にボーナスが出る。
そうすることで、ボーナスの為に必死に仕事を取り組もうとするからだ。
「サーシャの功績からすれば、ボーナスを出すべきと存じますが・・。」
ピアース殿の顔色が青みがかる。
「ボーナスを出すことも・・・妥当と思われます。」
うん、陛下の側近は話がわかる人のようだ。
「一年程前の今頃に、サーシャは牢屋に入れられましたね。」
無実の者を牢屋に入れて、最終的にキャサリンがサーシャを保護する形で収まったが・・・・。
「牢屋の看守が、牢屋からいなくなる時間帯があり、私があと一歩遅ければ、ホレス殿に殺されていたのですよね。」
国の中心の兵にしては、お粗末すぎではないか?
そして、本来サーシャは無実なのだから、すぐにでも牢屋から出すべきなのに、数日間牢屋へ入れておいたこと。
「国のトップでありながら・・・あまりにも酷い対応だと思うのですが・・・。」
ピアーズ殿は、サーシャがクラウンコッパー公爵家と言うことで、牢屋からすぐに出してしまうと、危険が伴う為に牢屋に入れたままにするしかなかったことを言う。
「陛下・・・自分の兵を使い、安全な場所へ移動させる事をしなかったのは何故ですか?」
「牢屋でなく、監視付きの部屋でもよろしかったのではありませんか?」
ピアーズ殿が冷や汗を拭っていた。
「ワザとサーシャを牢屋に留め置き、看守もいない時間を作る事で、ワザと暴動を起こさせる行為をさせ、敵方を捕まえる事は出来ますね。」
「その様な事でしたら理解できますが・・・・それなりの手当がでるはずですよね。」
ピアーズ殿はおとり作戦として、そのような処置をした事を認め、特別手当を出す事を言ってくれた。