ドラゴンの大樹
「陛下ったら、フレディ公爵を真似る発言をされて・・・。サーシャさんが困っていますよ。」
カリスタ様・・・私が頼まれごとを引き受ける前にフォローして頂けたら嬉しかったかな~。
今の私・・ドナドナ気分です。
ハミッシュ陛下は、自分の左腰のあたりを探る作業をしていた。
「ハミッシュ陛下?」
”ピトッ”
いきなり、私の額に指を付ける
”ずーーーっ”
と、私の額に触れている指が動く。
指を離し、再び額に何かを描いているようだ。
形からして・・・人参?
チョン、チョンで、ズーーーウ
人参だと3本書いて三角を描くけど、葉の部分は2本で、赤い根の部分の二等辺三角形は、正三角形に近い形
書き終えると、ハミッシュ陛下は私の額のあたりを見る
「こんなかな。こちらへ来なさい。」
そういうとハミッシュ陛下は、目の前のドラゴンの石膏の尾の方へ向かう。
ドラゴンの石膏の尾の後ろには、バージンロードと並行に柱が並んでいる。
柱の奥には、廊下のように柱と並行に空間がある。
ハミッシュ陛下は、その廊下を礼拝堂の正面に向かって歩き出す。
私はその後ろを追いかけ、そのすぐ後ろの脇にカリスタ様が付いてくる。
柱の反対側は、窓ガラスがいくつもある。
その窓ガラスに、自分の顔が映し出される。
額には、赤い線でドラゴンの顔が書かれていた。
「この文様って・・・。」
見覚えがあるこの基礎中の基礎のドラゴンのマーク
「初めて、ドラゴンと絆を結んだとされるリュー様の、胸の上に描かれたドラゴンの絆の結んだ証の文様だ。」
そう、この世界の祈りの作法
両膝立ちに、鎖骨の中央と胸の中央の間に両手を置き頭を伏せる。
その両手を置いた所に、ドラゴンと絆を結んだ際に、ドラゴンの文様、入れ墨と言った方がいいのかな。そんな文様が現れるのだ。
人それぞれ文様が違うが、絆を結んだ者とその伴侶は同じ文様が現れる。
その初と言われているリュー様の文様が、このシンプルすぎる文様なのだ。
「何故、私の額に描いたのですか?」
「これから行くところに必要なのだ。」
そう、ハミッシュ陛下が答えると、礼拝堂の正面のガラス張りの方へ向かう。
礼拝堂正面のガラス張りは、柱の所で切れていて柱の外側は、普通の壁だった。
そして、ドラゴンの立派な彫り物がされた扉がそこにあった。
その扉を開けると、風が中に入り込んできた。外に続く扉だった。
私は、扉から外にでる。
「っ?!・・・・ここって。」
私は、その外の景色を見て驚き扉の前で止まってしまう。
「恋愛ルートの最後の地。王族と、4大公爵とその嫡子が、ここで婚礼をあげるのを許されている聖域だ。」
ハミッシュ陛下はそう説明してくれた。
「陛下、ここでは神域と言った方が正しいのではございません?」
カリスタ様が、補足を付けてくれた。
礼拝堂から出ると、屋根が延びている礼拝堂の半分ぐらいの長さの広場に出る。
その広場の真ん中から、金色のバージンロードがドラゴンの大樹まで続いている。
バージンロードの所からは屋根がない。
そのバージンロードの外の地面には、3メートルほどの金色の棒が地面いたるところに刺さっているのだ。
「あの、3メートルほどの金色の棒はなんですか?」
恋愛ルートのラストを飾るムービーにはない光景だった。
「ドラゴンの大樹の葉だ。落ちて地面に刺さっている。」
式の時は、ドラゴンがその葉を片付けるからわからないが、通常はこのように、他を寄せ付けない地になっている。」
ハミッシュ陛下は、バージンロードの方へ向かう。
「ドラゴンの大樹には3種類の葉があるのですよ。」
カリスタ様が、ドラゴンの大樹について説明をしてくれた。
柳のような葉、紅葉のような葉、丸い形をした葉の3種類。
柳のような葉は、ドラゴンの大樹に近づけさせないための物。
紅葉のような形の葉は、亡くなったドラゴンを包むための物。
丸い葉は、ドラゴンの実を守るための物。
と、役割があることを説明してくれた。
本当に柳の葉のようなものは、槍が大量に地面に刺さっているようである。
戦国時代の戦場の後を想像してしまうような雰囲気なのだ。
バージンロードに入りすたすたと歩くハミッシュ陛下。
「葉が落ちたら危険です。」
私が注意をした。
「今日は風が穏やかだし、王家の血、それに4大公爵家の血は、ドラゴンの大樹を守る使命があるから、ドラゴンの大樹は攻撃してこない。その伴侶もな。」
私は違うので無理だな。
・・・でも、大丈夫なのか?
バージンロードの前で考え込むように立ち止まる私。
「俺の血で描かれた額のマークがあるから大丈夫だ。」
カリスタ様が、ハミッシュ陛下に寄りそい、ハミッシュ陛下の指の傷を心配している。
即効性の傷薬をしっかり塗ったかを確認しているようだ。
私は、ドキドキしながらバージンロードエリアに入る。
あたりを気にしながらバージンロードを歩く。
なんか、額が熱い感じがするが、気のせいじゃないのだろう。
確か、ムービーでシスターの額にも、赤いドラゴンのマークがあったことを思い出す。こんな簡単なマークでなくもっと複雑なマークで、きれいに描かれていたが・・・。
バージンロードの先、ドラゴンの大樹に近づいてきた。
ハミッシュ陛下、カリスタ様が止まる。
私も止まりドラゴンの大樹を地面からゆっくりと見上げ・・・・。
「え?!・・・ドラゴンの大樹に、彫り物がされている。」
その言葉に、ハミッシュ陛下とカリスタ様は、悲壮な感じで微笑する。