何を言いたい?
ヘンリー様が、マブ・ラリマー邸に行く前に寄ろうとした、もう一つの箇所は、ピンクアメジだった。
ピンクアメジに着いた頃には、辺りが暗くなっていたので、ピンクアメジに一泊しようという事になった。
深夜にマブ・ラリマー邸を伺うのは、非常識だから仕方がない。
ただ、ここでもチョットしたトラブルがあった。
「一緒の宿に泊まるのは危険だから、サーシャは別の宿に泊ってくれ。」
と、ヘンリー様に言われてしまったのだ。
ヘンリー様は、本当に我慢をしようと必死のようだ。
・・・申し訳ない気もするが、約束を守ろうとしてくれている事に感謝をするしかない。
だけど、簡単に宿は見つからない。
だって、緑とピンクの計画の工事で来ている人が、宿を使用しているのだから、そう簡単に宿が見つかる訳ない。
そんな、困っているところへ、ジャネットさんが来てくれて、事情を説明したら、ジャネットさんが快く『私の家に、泊まりに来たらいいわ。』と、言ってくれた。
なので私は今、ジャネットさんの家にいる。
私は、湯船につかり疲れを癒していた。
嬉しい事に、ジャネットさんの家のお風呂は、温泉地らしく温泉が出ていた。
なので、疲労効果に抜群である。
「サーシャ様。こちらにタオル・・・・。」
ジャネットさんが、浴室の扉を開けて、タオルを持ってきたことを伝えに来るも説明途中で会話が止まった。
・・・どうなさいました?
”ズカズカ”
と、ジャネットさんが浴室に入ってくる。
”ガシッ”
私の片方の肩を掴む。
「凄い、独占欲の表れ・・・。」
ジャネットさんは、私の胸元を見る。
「女性同士でも、じっくり見られると恥ずかしいと思うのですが・・。」
私の一言で、すぐにジャネット様は手を離してくれた。
「噂は、本当だったのね~。」
ジャネットさんが浴室を出る際にボソッとつぶやく。
「噂ってなんですか!!」
気になるじゃない。
ジャネットさんは脱衣所で話の続きをしてくれた。
「ドラゴンと絆を結び、伴侶の絆を結ぶ事の出来なかった約50年間を独身で過ごされた方は、独占力が半端ないと、言う噂があるのよ。」
・・・え?
これまで何度か聞いた『独占力』
それは、一年間ヘンリー様に会わなかった分のツケの様に思っていた。
なので、ツケを返すべく、ささやかだが行動を許しているし、自分から行動もした。
それが、伴侶が結べない期間も含めてのツケって・・・事ですか?
だから、一緒の宿に泊まる事を嫌がったんだ。
私が行動を起こしたことで、相当我慢をさせているんだ・・・。
ヘンリー様に、相当我慢させているツケは?
・・・考えたくもない。
あははは・・18きんは、ドラゴンが酔うから禁止だもんね~ってことで・・・。
せっかく湯船につかっているのに、顔が冷たくなったと感じながら、浴室を出た。
『気がついて』
また、あの女性の声だ。
つまり、ここは夢の中だ。
だけど、同じ夢は2度見ないっていうし・・・。
本当に何かを言いたいのだろう。
私は、手を上げる。
「すみません。初めての時も、私に同じ言葉をかけましたよね。その成果が出ていないのは、わからないからです。」
私は、声の主に言ってやった。
「何に気づいて欲しいのか、具体的に言ってください。」
そう言うと、景色がかわった。
この景色は、聖ライト礼拝堂だ。
夢の中だから、一般人では入れない場所にも入れるわね。
私は、バージンロードの中心から向こう側を堂々と進む。
正面のガラス張りから見えるドラゴンの大樹を見る。
「っ!?」
私は目を見開き、驚く。
ドラゴンの大樹が燃えているのだ。
「ドラゴンの大樹が危機だという事を伝えたいの?」
夢であっても、ドラゴンの大樹が燃えるのはショックが大きいな。
”ゆらり”
と、また景色が変わる。
何ともドロドロした景色だな。
あたりを見回す。
「・・・っ!?」
再び私は驚き、そして・・・。
”がばっ”
と、飛び起きる。
真夜中、私は・・・。
「うっ・・。」
吐き気を催した。
あまりにも、悍ましい景色だった為だ。
私は、部屋に備え付けの洗面所に向かう。
私が見た景色・・・。
それは、大量の死体の山だった。