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川の字

 キャサリン様、マティアス様と貴金属店を訪れた日の夜。

 マティアス様とキャサリン様の共同の寝室に、皆・・・キャサリン様、ヴィンセント様、ライ様と私が呼ばれた。

 「家族みんなで一緒に眠ろう。」

と、マティアス様の提案で集まったのだ。

 恥ずかしながら、私もお呼ばれされました。

 マティアス様とキャサリン様は、個々の寝室の他に、同じ部屋で眠る寝室がある。

 同じ部屋と言ってもベッドは2つに分かれている。

 まあ、昔は1つの大きなベッドが置かれていたのだろう。

 ・・・?

 ルベライトの私の部屋って・・どうなって・・・。

 ベッドがドデ~ンと1つ?

 うん、無理。夫婦別ベッドでないと、心臓が持たない。

 コウノトリが赤ん坊を連れてきて欲しい。

 官能的言葉攻めで孕むとか・・ないのかしら?

 ・・・・あったら、とっくに孕んでるか。

 私・・・どうなっちゃうんだろう。


 「サーシャ、こっちよ。」

 豪華な方に入っているキャサリン様が私を呼ぶ。

 私はベッドに入り中央へ、右にマティアス様、左にキャサリン様がそして布団の中へ横になる。

 私が中央ですか?

 「川の字になって眠るのもいいな。1年前は考えもしなかったが。」

 マティアス様が、私の体に布団をかけながら言う。

 「そうですね。こんな穏やかな時間が訪れるとは、思いましませんでした。」

 もう一つのベッドからヴィンセント様の声がする。

 隣のベッドにはヴィンセント様とライ様がいた。

 「皆、サーシャのおかげね。」

 キャサリン様が、マティアス様がかけてくれた布団の上からポンと優しく撫でてくれる。

 「皆さまの努力です。特に、ライ様は次期公爵として、ずっと努力をされていたのに関わらず、私の言葉を聞いてくれて、その努力を惜しまなかった。」

 「そうだな、だからアマルテアと絆を結ぶことが出来た。」

 ヴィンセント様はどうやら言いながらライ様を抱きしめているようだ。

 奥から『苦しいです、お父様。』と、聞こえる。

 「ライナス、お前は100年後も生きているのだな。」

 ヴィンセント様はしみじみと言う。

 少し切なさが辺りを漂う。

 ヴィンセント様は、100年後は・・・・生きてはいないだろう。

 「ライナス、聞きたい。百年伯爵の地をどうしたい?」

 ヴィンセント様は、優しく諭すかのようにライ様に言う。

 「学園地方にしたいと・・そう思ってます。」

 私は、うっすらとしていた目を見開く。

 「プラシオの町を裁縫の町にするのは決定条項ですが、他に別の場所で農業の学園を創設し農業の向上を目指します。」

 ここまでは、ライ様が私に話してくれた内容だ。

 「今回の無理やりドラゴンと絆を結ぶ騒動で、ドラゴン騎士の信頼が低迷してます。」

 そう、やはりいてしまったのだ、無理やりドラゴンと絆を結びドラゴン騎士になった者たちが・・・。

 「その信頼回復の為に、騎士の学校を創ります。そこでは剣術等の技術を磨くだけでなく、土木の他、土木事業の安全の勉強も出来るようにし、土木工事で死傷者を減らす勉強もできる学校にしたいのです。」

 ライ様は、ルベライトでモーリス様の父親が、土木工事の際に亡くなった事を聞いて、そのように思ったことを話してくれた。

 「他に、医術の学校も創設したいです。」

 人々だけでなく、ドラゴンの為の医術学校を創設したいという事を付け加えた。

 「それと工芸技術の学校も創設したいですね。せっかく、短剣とアクセサリーセットという物が出来たのです。それの技術向上のための学校を創りたいです。」

 私も含め皆、誇らしげにライ様の話を聞いている。

 「ライ様・・ライ様が聖ドラゴニア学園を卒業した時に話すと、私は思っていました。」

 そう、私は今の内容をしたためた物をヴィンセント様に渡している。

 ライ様が、卒業後に見て欲しいと、渡した書類だ。

 「ライ様は、卒業以前、それも入学ですらされていないのに・・・凄いです。もう、私から教えるモノは、あまりなさそうです。」

 ライ様から、あまり教わってないと突っ込まれた。

 まあ、自分で導かないと身にならないからね。

 「ライ様、お題を出します。卒業までに答えを出してくださいね。」

 ライ様は、『何だ?』と、すぐに言ってくれた。

 「たくさんの学校を創設されますと、資金が足りませんよね。どのように調達されますか?・・・それがお題です。」

 ライ様が止まったように感じた。

 「学園に入学しても、1年間は私もいます。たくさんお話して解決していきましょう。」

 ライ様は了承してくれた。

 学園生活が楽しみだ。

 「ライナス。俺はライナスの父であることを誇りに思う。ライナスの父であるこの事実は、俺がこの先死んでも、何百年後にライナスが死んでも、何千年先でも・・変わりはしない。俺にとって一番の幸せだ。その事・・忘れないで欲しい。」

 私の目から涙が流れる。・・・貰い泣きだ。

 隣のマティアス様もキャサリン様も目に涙が浮かんでいる。

 「うっ・・・はい、お父様。」

 ライ様も、ヴィンセント様もどうやら、涙を流しているようだ。


 こうして、私たちは幸せな涙を流しながら眠りについた。

 


 

 

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