わかっているか?
キャサリン様、どうしたんだろう。
親子の様に一緒に寝てみたいなんて・・・。
幼少期に、亡くなった父と一緒に眠った以来だわ。
母に関しては・・・前世も含めて記憶がない。
嬉しい・・けど・・恥ずかしいかも。
私は、キャサリン様の寝室へ向かう廊下を歩く。
”ガシッ”
と、いきなり腕を掴まれ・・・そして、とある部屋に誘われる。
”バタンッ”
部屋の扉が・・・閉じられた。
”ぎゅう”
と、後ろから抱きしめられる。
「サーシャ、わかっているか?」
ヘンリー様が、耳元で真剣な口調で言ってくる。
「俺は、いずれサーシャを抱く。」
私は、衝撃の言葉に驚き、目を大きく開けたまま、体が動けないでいた。
「抱きしめる事も含め、それ以上に抱きしめるし。キスも含め、それ以上のキスをする。」
ヘンリー様は、言っている事を理解できるか聞いてきた。
・・・わかっている。
前世で、官能小説や漫画などで、それなりの知識はある。
恋愛するのが怖く、お見合い結婚だろうと思っていたとしても。
時に、生涯独身でもいいとまで思っていたとしても。
前世でも経験なくても。
・・・ちゃんと知識はある。
友人に『チケット代払うから、一緒に映画を見に行って』と、年齢規制の映画も見たんだから。
ああ、でもあれはBL映画か・・・。
・・・現実であった事だが、現実逃避してるよ。
いきなりヘンリー様が、後ろからハグをするから、動揺をしているのだ。
まずは、落ちつけ・・私。
「・・・本で理解しています。」
私はヘンリー様に、そう答える。
”ぎゅっ”
ヘンリー様の腕に、力が入る。
「では、何故俺を求めない。」
私は、一瞬体が震えた。
「同じ城の中にいるのに、あまり話が出来ない。昨日は全く触れてもいない。・・・サーシャは、寂しいと思わなかったのか?」
私の耳元で熱っぽくヘンリー様が言う。
「寂しいに決まってます。」
「なら、俺を・・求めてくれ。」
そんな事・・・出来るワケない。
私から求めて、嫌われたら・・辛い。
好きだから、怖い。
「そんな、はしたない行為・・・出来ません。」
それで、嫌われたら・・私は立ち直れない。
「サーシャのはしたない行為を含めて、俺はサーシャの全てを抱くのだよ。」
体がびくびく震え、止まらない。
鼓動が、熱をもって全身をめぐるのが分かる。
「サーシャ、俺・・眠っているサーシャに、キスしたりしている。」
私は、ヘンリー様の告白に、目を大きくあけ、口を少し開き驚く。
その唇に、ヘンリー様の指が触れてきた。
ビクンと体が跳ねる。
その指が、首を伝い私の目は潤む。
「1年前の舞踏会の時に、ここにキスしたよね。」
ヘンリー様は、1年前にキスマークを付けた場所を指で撫でる。
「・・・んっ」
体に衝撃が走る。
首元のリボンが、ヘンリー様の手で解かれる。
「へ、ヘンリーさま・・・。」
私は、動けずにいる。
「大丈夫・・・。」
ボタンを外しながら言う言葉ですか?!
首元からの3つのボタンが外される。
そして、鎖骨の中央と胸元の中央の間に手を置く。
「安心して・・・ここに俺と同じ黄金の・・絆の文様が刻まれるまでは、サーシャを最後まで抱かないから。」
ヘンリー様が触れている所が熱い。
「それに、クローライトの人たちは、サーシャの貞操を守ろうとしているからね。」
同じ城にいても、なかなか話が出来ない理由を教えてくれた。
「だけど・・俺・・サーシャのここにキスしているから・・。」
え?
私は、思い返す。
そのような所にキスされた記憶はないが・・・あったりする記憶もある。
夢だ。
夢の中で・・・キスされていた。
体が・・無意識でもヘンリー様に反応をしていたのだ。
だから、あのような夢を見せた・・・。
「ここには、将来コスモが絆の証を刻むだろう。でも、おかしくないか?」
ヘンリー様は、私をゆっくりと半回転させる。
「サーシャを想っているのに、先にコスモが刻み付けるのはおかしいだろう。」
鎖骨の中央と胸の中央の間に、ヘンリー様の息がかかる程近づいている。
「ここに先に刻むのは、俺でないと・・・ヂュー。」
コスモが黄金の文様を刻む場所に、ヘンリー様はキスを刻む。
「っ・・・んっ・・・。」
私は、口に手をやり、漏れそうな声を押さえていた。
頭が、ボーとしそうなのをこらえて・・・涙がこぼれそうになっていた。
そして・・・ヘンリー様の唇が、私から離れる。
”ポン”
と、私はヘンリー様の肩を押して、ヘンリー様から離れる。
「お、遅くなると・・キャサリン様が・・探しに来ますから・・キャサリン様のところに行きます。」
私は、扉の取っ手に手をかける。
ほのかに寂しいを感じる自分がいた。
私は、ヘンリー様の方を振り向く。
そして、ヘンリー様のキスマークの付いたところに手を置く。
「次・・ここにヘンリー様を刻むときは・・・唇にも・・ヘンリー様を感じさせてください。」
ヘンリー様を一瞬見つめる。
ヘンリー様は目を大きくさせて、こちらを見てる。
私は恥ずかしくなり、扉を開ける。
「おやすみなさい!」
そう言い、走ってその部屋を出てキャサリン様の部屋へ向かった。