それぞれの変貌
キャサリン様と城下へ行き、専属のバッチは、植物にしようと決まったが、誰がどのような植物がいいか検討する事になり、その日は何も買わず、店を出て城へと帰った。
図書室で植物図鑑を広げ、キャサリン様と検討をしたが決まらず。
その日は終わった。
私はいつものように、全陶器のティースプーンの入った小箱を持ち眠りについく。
そう言えば、今日もヘンリー様とあまりお話していない。
こんなにそばにいるのに・・・。
寂しいな・・・明日はたくさんお話できるといいな。
◇ ◇ ◇
サーシャが足りない。
同じ城の中にいるのに、今日は食事の時に少し話した程度。
そして・・・まったく触れていない。
足りなさすぎる。
サーシャは、それで平気なのか?
俺は無理だ。
お休みのキスぐらいさせろ!
そう思い、俺はサーシャの部屋へと向かう。
サーシャの部屋は、手前が執務室となっていた。
花が飾られていて生活感がある。
ルベライトにいた時は、生活感がなく、今すぐに出て行ける状態だった。
なので、ホッとしているが・・・出来れば俺のもとで、そのようになって欲しかったと思う。
俺は、そう思いながら、部屋の奥へと行く。
・・・サーシャの寝室だ。
サーシャの柔らかな甘い香り。
サーシャは・・・・眠っている。
何、持っているんだ?
俺はサーシャの手から小箱を取り・・・。
「?!」
何なんだ、この可愛さは・・・・。
俺がサーシャに贈った全陶器のティースプーン。
サーシャが信頼の証の象徴と思っている物を・・・手の中に持って、眠っている。
”ドクンッドクンッ”
・・・・自分の心臓の音が大きい。
俺は、ベッドに腰を掛け、サーシャが全陶器のティースプーンを持っていた手に、自分の片手を絡める。
もう一つの手は、サーシャの顔の横に付く。
目の前に、眠っているサーシャの顔。
もう・・・抑えきれない。
サーシャの全てを・・貰う。
”グイッ”
「・・うぐっ?!」
後ろから肩を掴まれ、上体が引かれ、サーシャから遠ざかる。
「ヘンリー殿。サーシャは、もう寝ていますから、お話が足りなければ俺らが付き合いますよ。」
俺の肩を掴んだまま、ヴィンセント殿が言う。
「この間、良いお酒が入ったのですよ。せっかくですから一緒に飲みましょうヘンリー殿。」
マティアス殿もいた。
「あなた、ヴィンセント、飲みすぎないようにしてください。」
キャサリン殿もいた。
マティアス殿、ヴィンセント殿は、キャサリン殿に飲み過ぎない事を約束して、俺を連れてサーシャの部屋をでる。
・・・俺を、サーシャの部屋に置いておいてくれ~。
◇ ◇ ◇
ヘンリー殿がサーシャに夜這いをするだろうとは、予想はしていた。
でも、クローライトに来て2日の夜にするとは、先が思いやられるわね。
「・・・・うぅ・・・。」
サーシャが目をうっすら開ける。
「ん・・・・。」
サーシャは、手を動かし何かを探している。
サイドテーブルに置かれた小箱を渡す。
サーシャは安心した顔で眠りについた。
可愛い寝顔ね。
ヘンリー殿が、襲いたくもなるわ。
それにしても、サーシャがヘンリー殿に再会したあの時から、サーシャの可愛さが光っているわ。
たまに、こちらが困る程よ。
でも、寂しいモノよね。
クローライトにサーシャを連れて来てから、約一年。
当初は、顔がこわばっていたのが、徐々に打ち解け、この頃はよく笑うようになった。
なのに、ヘンリー殿に会ったあの時から、その笑顔が光輝くとか・・・。
最後には、ヘンリー殿に全て持って行かれるのは、預かった当初からわかりきったモノだとしても、虚しくなるわね。
だから、ちゃんとした形で、ヘンリー殿にサーシャを渡したくもなるモノ。
驚いたことは、マティアスもヴィンセントも、それに同意をしていることかしら。
この一年、サーシャが来た事で、クローライトは劇的にいい方向へ変わっていった。
その事が、ここまでしてくれたのかしら・・・。
明日以降どうしようかしらね。
きっと、ヘンリー殿はサーシャに夜這いをするわ。
・・・私が、サーシャと一緒に寝るのがいいのかしらね。
日中は、ライナスに任せておけばいいわ。
あの子の探求心は、サーシャに会ってから、磨きがかかったからね。
日中は、任せたわよライナス。
クローライト一族は、サーシャの貞操をしっかり守るからね。