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蒼の希望

 曲が終わってしまうな・・・。

 寂しいと感じている自分がいる。

 これから、たくさん踊れるのに・・・。

 2曲続けて踊る、初めての・・・。

 そして・・婚約を披露する大事なダンス。

 「サーシャ、俺に伝えていない事ないか?」

 何のことだろう?

 私は首をひねる。

 「まあ・・俺も言うべきことだしな。」

 そう、ヘンリー様が言い。

 そして、とうとう曲が終わってしまった。

 ヘンリー様の手が離れる。

 切なさを感じてしまう。

 するとヘンリー様がその場で片膝を付く。

 当然、私は驚き、目を見開き固まってしまう。

 私を見つめるヘンリー様。

 「サーシャ、この俺と・・結婚をして欲しい。」

 そう言い、コスモスの刺繍がたくさん施されたスカートの裾を手にとり、キスをする。

 ・・・・・プロポーズ。

 私は思い返す。

 一年前は・・謝るしかできなくて・・・。

 はっきり言うと・・・断った形だった。

 それなのに、婚約者として公の場に出てきてしまったのだ。

 なんか・・・図々しく・・恥ずかしく・・・恥ずかしい。

 「サーシャ・・返事待っているのだけど・・・。」

 ヘンリー様は、私を見上げる。

 「『YES』か『はい』の他に返事あったら教えてください。」

 私はクスッと笑う。

 ヘンリー様は立ち上がり、私の頬に手を触れキスをする。

 ”わーー”

 ”パチパチパチ”

 盛大な歓声と拍手。

 私は恥ずかしくなるも、嬉しかった。

 「・・・っ!?」

 ふと、ヘンリー様の雰囲気が変わる。

 「ヘンリー様、どうなさいましたか?」

 ヘンリー様は私の方を覗く。

 「サーシャ、嬉しい事がもう一つありそうだ。」

 そう言い、ヘンリー様はあたりを見回し、そして止まる。

 「ライナス殿。外で客が待っている!!」

 ヘンリー様はバルコニーの方を指さす。

 そして、私の手を引きバルコニーへ、ハミッシュ陛下も玉座の段から降りて、バルコニーへ向かう。

 「持って行かれるかもね~。」

と、フレディ様が一言伝えてからバルコニーへ

 ホレス様がライ様の背中を押しバルコニーへと誘う。

 「あの時の!」

 ライ様は、驚き駆けていく。

 そこには、足に怪我の跡が残っている水色のドラゴンだった。

 しっぽがシュっとなっているので雌のドラゴンだ。

 バルコニーの周りを見ると、なんとコスモもジジイ様もいた。

 空には、金色の瞳をした黒いドラゴン。紫色の瞳をした白いドラゴン、それに金色の瞳をした青いドラゴンが飛んでいる。

 「傷が痛むから、ここにきたのか、今、陛下に言って・・・・っ」

 ライ様は、こちらに一端振り向く。

 ”キュ~ッ”

と、ドラゴンの鳴き声で、再びライ様はドラゴンの方を向く。

 「・・・・・・・・・っ、私の名前って・・・・。」

 ・・・名前!?

 そのフレーズって!?

 私は、目から涙が溢れる。

 ヘンリー様が私の肩を抱き、私の頭にキスをする。

 「・・・こんな俺で・・いいの?」

 ”キューッ”

 ライ様が目を瞑る。

 「・・・アマルテア。」

 ライ様の言葉で、ライ様の目の前に水色の文様が現れ、胸の前で消える。

 ライ様は、空を、周りを見渡す。

 そして、シャツのボタンを外す。

 鎖骨と胸の間に水色のドラゴンの文様がくっきりと見える。

 「ライナス!!」

 ヴィンセント様とマティアス様、それにキャサリン様がバルコニーに駆け付ける。

 「お父様・・大父様・・大母様・・・俺・・アマルテアと・・絆を結べた。」

 ライ様の目から涙が零れた。

 「ライナス!!」

 ヴィンセント様がライ様を抱きしめる。

 ヴィンセント様の目にも涙が溢れている。

 その2人を包むようにマティアス様が抱きしめる。その目にも涙が流れていた。

 キャサリン様も、その3人を包むように抱きしめ涙を流す。

 ライ様が、クローライト公爵家の呪いを解いたのだ。

 アリシアの血族者と言うことで、ドラゴンと絆を結ぶのをあきらめていたクローライトの呪いを・・・ドラゴンと寄り添う事で・・・やっと。

 ”フシャーーー”

と、黄金のオーラが辺りを通り抜ける。

 アマルテアの足の傷がキラキラと光り、消えると傷跡が無くなった。

 祝福のオーラだ。

 「アマルテア・・・もう、痛くないか?」

 ”キュッ”

 「よかったな~!!」

と、ライ様は喜んでいた。


 そして、私は・・・。

 ヘンリー様に連れられ、バルコニーの下のベンチで、ヘンリー様に抱きしめられて慰めて貰っていた。

 私の流れる涙にキスされ、私の唇にキスされ、再び涙にキスされ・・・。

 「ヘンリー、独占欲強すぎ、サーシャのライナス殿に対する感動の喜びを奪い取るなんて・・随分小さい人間になったね。」

 バルコニーからフレディ様がヘンリー様に言う。

 「借りを返して貰っているんだけだ。」

 ヘンリー様は私を抱きしめて言う。

 「違う事は明白だね・・・でも、まあ、わかってあげるよ。」

 そういい、フレディ―様は去って行った。

 私は、ヘンリー様の胸で、止まらない涙を流していた。

 

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