あぁ・・・の、裏には・・
王宮のルベライトの屋根に黄金のドラゴンが降りる。
そこには、モーリスがいた。
「お待ちしておりました、ヘンリー様。」
『ねえねえ、モーリス!あのね、さっきサーシャに会えたんだよ。』
と、嬉しそうにコスモはモーリスに話す。
「何ですとーー!!」
いきなりモーリスは叫びだず。
「ど、どうしたんだ、モーリス。」
俺は驚き、モーリスに説明を要求しようと・・・。
『何だって!!』
『どうしてなの』
『がっかり~』
『最悪だね』
ドラゴンと絆を結んでいる者たちの叫びのような声が聞こえた。
・・・何が起きたんだ?
この通達法は、感情が漏れるから、あまり使用する者が少ないので、滅多に使わない方法なのだが・・・。
「サーシャに、会っちゃったんだね。」
父上が、屋上の出入り口に扉のところに来ていた。
「皆、暗黙の了解で舞踏会会場での再会を設定していたんだよ。」
残念そうに俺を見つめながら言う父上。
「暗黙で出来る内容ではございませんのに・・・。」
モーリスにそう言われても、サーシャに会ってしまったんだし・・。
「サーシャは喜んでいたのだからいいじゃないか。」
俺は、一番肝心なサーシャの気持ちを言う。
『これまで頑張って来た僕たちは無視なの・・・あー、酷い。』
フレディの通信に、皆が賛同する。
・・・俺、悪者かよ。
『まあまあ、本当にうれしかったようです。こんなに無邪気に微笑むサーシャの姿を見られるとは・・・役得・・と言うのでしょうか・・・申し訳ないですね、ヘンリー殿。」
と、マティアス殿の通信が来た。
『クスクスッ』
『クククッ』
笑い声が通信で聞こえる。
それも、いろんなところから・・・。
『マティアス殿に免じて今回だけは許してあげるよ・・・プッ』
フレディの嫌みな不敵笑いで、通信は終わったが・・・。
なんだろう、イラッとするのは・・・。
◇ ◇ ◇
「そうだったの、コスモス畑で休憩をしていたら、たまたまヘンリー殿に会ったのね。」
キャサリン様に案内されて部屋へと向かう。
「・・・はい。」
私は、なんとなく恥ずかしい気持ちで答えた。
頬が、少し熱を持っているのが分かった。
「ふっ・・良かったわね。」
キャサリン様は、微笑んでくれる。
なんだろう、少し苦笑いっぽく見える。
「・・・母さま、私・・何かいけない事でもしましたでしょうか?」
私は素直に、キャサリン様に聞いてみた。
「サーシャがあんまりにも可愛く微笑むから、驚いているのよ。これまでこんな風に微笑んだ事ある?」
こんな風にって・・・どういう事なんだろう。
私が首をかしげる。
「自覚がないようね。あなたヘンリー殿に会ってから、一段と可愛くなったわよ。」
そういわれても・・・ただヘンリー様に会って、嬉しいと感じているだけで・・。
変わったことはないのでけど・・・。
「ただ、嬉しいだけなのですが・・・そう言われますと・・なんだか、恥ずかしいです。」
私は、少し顔を反らせる。
顔が赤くなっているのを感じたからだ。
「まったく・・・可愛い子ね。」
キャサリン様は私を抱きしめてくれる。
「うれしいわ。」
そう言い、再び歩き出す。
「サーシャに見て欲しい物があるのよ。」
なんだろう?
そして、キャサリン様はドアをノックする。
ここのお部屋って・・・。
「あなた、入るわね。」
返事を待たずにキャサリン様は部屋に入る。
やはり、マティアス様の執務室だわ。
「昨日届いた物なのよ。サーシャに届けられた物なんだけど・・もし、不快になったら心配で、ここに置いといたのよ。」
マティアス様のお部屋に、ドレスが飾られていた。
首元にアクセサリーまで飾られていた。
私は、そのドレスの近くまで行く。
この飾られているアクセサリーのチョーカーって・・・。
「ヘンリー様からの・・・ドレスですか?」
1年前に私にプロポーズした際に渡そうとしたレースのようなチョーカーが飾られていた。
「そうだ。」
マティアス様が答えてくれた。
やはり、そうだったんだ・・・。
私は、ドレスを見る。
この刺繍は・・・コスモスだ。
ヘンリー様に再会したコスモス畑のように、たくさんのコスモスが刺繍されている。
私は、涙が今にもこぼれそうになるのを感じる。
「うれしい・・・幸せです。」
私は、キャサリン様と、マティアス様に笑顔を見せた。
「サーシャ、チョーカーを付けて会場へ入る事は、ヘンリー殿の婚約者として公に立つことになるわ。それでいい?」
私は、キャサリン様から、ドラゴニアの夜会時の首元のアクセサリーの事を教えてもらった。
チョーカーを付ける事が、婚約者がいる女性を表すことを・・・。
だから、ヘンリー様は去年私にチョーカーをプレゼントしようとしたんだ。
「・・・うれしい。」
私は、暖かな幸せを感じた。




