コスモス畑
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国王主催の舞踏会の時期となった。
ヴィンセント様に交換島での事を報告して、ライ様は舞踏会には呼ばれていないが、ナイジェルさんに会わせるために、クローライト公爵家全員が、王宮へ向かう事になった。
私も、ヴィンセント様と一緒に会場入りするために、行くこととなっていた。
ヘンリー様と別れてから・・・1年。
私は、ヘンリー様に会いに王宮へ向かっているのだ。
そう思うと・・・鼓動が早くなる。
鼓動の音と共に、どうしても戸惑いも存在してしまう。
初めて、人を好きになり・・・制御が出来ないでいる人に会うのだから。
・・・どうなってしまうのだろう。
壊れた私でも・・・好きでいてくれますか?
・・・ヘンリー様。
その答えが今・・・欲しいです。
私は、王宮へ向かう馬車の中にいる。
クローライト公爵家御一行は、同じ日に出て、ドラゴンに乗って先に王宮に行っている。
舞踏会前に会う人がいるからだ、私も、ライ様に同行して、ナイジェルさんに会おうとしたが、デリック先生に任せるようにと言われた。
きっと、皆・・・ヘンリー様との事を気遣ってのことだ。
舞踏会前に会わないよう、ギリギリに王宮に着くようにしてくれたのだ。
良くも悪くも、舞踏会で決まるということか・・・。
1年前の舞踏会をやり直しをするようにと、皆が思い準備をしてくれているのだろう。
嬉しくもあり、緊張もする。
・・・だけど、ものすごく愛おしい。
私は、ふと外を見る。
「ちょっと、止めてくれないかしら?」
その一言で、馬車が止まる。
私は、馬車から降り、皆に休憩をするように伝える。
そして、目の前に広がるコスモス畑に入る。
一面のコスモス畑。
「綺麗だわ・・・。」
休憩にうってつけの場所。
赤、ピンク、白のコスモスの花
私は、黄色いコスモスを探しコスモス畑を歩く。
そして・・・あった。
赤、ピンク、白が一面に広がる中、ほんの十数本だけの黄色いコスモス。
慈しむように、私は黄色いコスモスの前にかがむ。
ためらいながら、黄色いコスモスを突く、そして優しく触れる。
無性に涙が溢れてきた。
・・・・会いたいと、ヘンリー様に会いたいと願っていた。
私は、黄色いコスモスが見える木陰で、ひと休みをする。
水筒の紅茶を飲み、コスモス畑の景色を眺めていた。
”ビユ~~ンッ”
と、勢いのいい風が吹き、私は目を閉じる。
”ドーンッ”
地響きがする。
私は、恐る恐る目を開ける。
・・・黄金の鱗。
私は・・驚くも少しずつ頭を上げる。
「へ・・ヘンリー様・・・。」
そこには、コスモに乗ったヘンリー様がいた。
「サーシャ。」
ヘンリー様は、私を見て固まっていた。
私も、固まったままでいた。
舞踏会会場で会うであろう人が目の前にいるのだから・・・。
「えっと・・・若干会うのが早い気も・・・しますが・・お会いしたかったで・・す?」
私は、戸惑いながらの今の気持ちを素直に言う。
「何故疑問視するのだ?」
目をパチクリする私。
「ヘンリー様も疑問形ですね。」
ヘンリー様はいきなり吹く。
「それも、そうだな。」
私も吹きだし笑う。
ヘンリー様はホッとした顔で、コスモから降りる。
「馬車で王宮へ行く途中、綺麗な景色だったので、休憩をしていました。ヘンリー様は?」
私は、立ち上がりヘンリー様の方へ向かう。
「花に誘われてな・・・コスモが俺に名を名乗って欲しいと言った時に送られてきた景色にそっくりだったのでな。この花『コスモ』と、言うのだろう。」
え?
「コスモ畑の景色に、ちょうど、こんな感じに黄色いコスモがあってな・・・だからコスモと名乗れたんだ。」
ヘンリー様は嬉しそうに黄色いコスモスを見つめる。
「ヘンリー様・・・ス・・・です。」
ヘンリー様はいきなり私の方に振り向く。
「ですから・・・ス。」
私は、ヘンリー様の隣まで歩く。
「この花の名前は『コスモス』です。」
「え?」
ヘンリー様が驚いて固まっているわね。
「コスモ、もし、ヘンリー様がコスモスって言ったら、絆を結べてた?」
私は、コスモのところへ行きながら言い、コスモを撫でる。
すると、コスモはプイッと首をひねる
”ギュンッ”
「『俺は、コスモスじゃない』だと・・・。」
ヘンリー様は、コスモの言った事を通訳してくれた。
「ププッ・・・クククッ・・・ハハハハッ・・・。」
私は、笑いが止まらなかった。
涙が出る程に・・・。




