ドラゴンの名と大団円
「ハミッシュ殿下は、いつ前世の記憶を思い出したのですか?」
ふふっと、穏やかな笑い声が右側からした。
「サーシャさん、今は陛下ですよ。」
カリスタ様が微笑みながら言ってくれた。
私はすぐに反対側を振り向く。
そこにいた人は、満面の笑みで頭を上下して肯定した。
「へー・・イカ」
なんとなく口にした。
「何だろう・・・足が10本の生き物を彷彿させる呼び方は・・。」
「ゲソ揚げが、おすすめです。」
これまた、なんとなく口にしてしまった。
「不敬罪を適応するぞ。」
遠慮します。すみませんハミッシュ陛下の言葉に乗っかってしまいました。
「ゲーム上のことが終えて、どれぐらい経つのですか?」
「125年になる。」
100年はいったかもと思いましたが、年数を言われると重いモノを感じるわね・・・。
つまり、あの腹黒ショタのフレディ様も公爵になっているってことね・・・。
西の守りは最強・・いや・・最恐だね。
「さっきのカリスタの言葉で気づいていると思うが、リオンは亡くなっている。」
はい、知ってます。
調べはついてます。
「リオンが歩んだルートは大団円ルートだった。」
『大団円ルート』
攻略キャラ全員と平均的に仲が良く。
悪役令嬢枠のアリシアとの仲も良く。
誰の恋愛ルートに入っていないとなる。
女性であるリオンが、直接ドラゴンと絆を結ぶという偉業を成し遂げるルート。
それも、滅多に現れることにない金色のドラゴンとの絆。
これだけでは、どのような偉業なのかわからないと思うが、1000年前(プラス125年前)、ユニコーンが絶滅した際に起きたラーイ界を覆った呪い。
直接女性が、ドラゴンと絆を結ぶことが出来ない呪いを、ラーイ界にかけられたのだ。
つまり、奇跡ともいえる絆を結ぶことが出来たのだ。
そう、ゲームのタイトル内の『奇跡の絆』
それが、この意味でもあるのだ。
リオンには金の瞳の他にも、特殊な能力があった。
絆を結んでいないにも関わらず、ドラゴンと意思疎通が出来たのだ。
本来、ドラゴンと直接絆を結ばないと意思疎通ができないのだ。
それにも関わらず、それができるリオンを、絶滅したとはいえユニコーンのいた国のユニコーン狂からすれば、喜ばしくない話だ。
それに、リオンの特殊能力はそれだけではなかった。
ドラゴンの傷を癒す能力が使えたのだ。
そう、ドラゴンの大樹の実と同じ能力が使えた。
そのためには、リオンの血と、清らかな感情を高まらせる必要があった。
リオンは、歌で感情を高まらせていた。
ユニコーン狂の一団は、ドラゴンを多少殺してから、リオンを殺そうと計画のもと、リオンは誘拐される。
ドラゴンはリオンを助けに、リオンのもとを訪れる。
そのドラゴンに攻撃をするユニコーン狂。
怪我をするドラゴンたち
リオンは自らを傷つけ血を出し、歌いだしドラゴンの傷を癒す。
攻略キャラたちと、その者たちと絆を結んだドラゴンたち、それから金色のドラゴンが、リオンのもとを訪れ、ユニコーン狂を一掃。
そして、金色のドラゴンが言う
『俺の名前を呼んで欲しい。』
ドラゴンと絆を結ぶ合言葉がリオンにかけられるのだ。
それが、大団円ルートのストーリーの全容だ。
気になるのは、金色のドラゴンの名前だが・・・・。
知らんわ~っ!!!
だって、リオンに声をかけて、リオンがニコッと笑い。
・・・END
なの、だから。
「だが、終わりは違った。」
はい、なんとなくわかっています。
「リオンと絆を結ぶはずのドラゴンは、ヘンリーと絆を結んだ。」
「はぁ?」
それは、知らなかったぞ!!
「コスモ・・・金色のドラゴンはヘンリーと絆を結んでから、リオンを助けに行ったんだ。」
なんだとーー!!
リオンが、母と逸れてから家族のように接してくれた赤の公爵家の嫡子が、ヘンリー・ルベライトだ。
彼は、『ドラフラ』では、正式な攻略キャラではない。
リオンを影から支えるサポートキャラだった。
『続・ドラフラ』で、やっと攻略キャラとなるのだ。
その彼が、金色のドラゴンと絆を結ぶとは・・・コスモっていうのね。
「ヘンリー様は、ご高齢の赤いドラゴンと絆を結ぶのでは?」
これまた、この赤いドラゴンの名前は分からない。
「そうだ。今年1814歳のドラゴンとな。」
その年齢って、ヤバくない?
「そのドラコン、現在誰かと絆を結んでますよね・・・・。」
私は、恐怖を感じながら口にする。
「・・・・いや、まだだ。」
「この国、危険じゃないですか!?」
すみません。話が長くなるので、ぶった切りします。