嫌われるのは、嫌だけど・・・
元ドラゴニア学園歴史講師のデリック先生の講義の2日目は、交換島で行われた。
ドラゴニアで扱っているリューロンの通貨の他、エンシャ、ウェルド、ユニル、イーコンの全通貨を見たり、宝石を見たりと、交換島でしか見る事の出来ない物を見せて貰った。
「こんなにも通貨があったのだな、サーシャは使った事のある通貨はあるか?」
「エンシャとユニルですね。」
コアルト大陸はエンシャが通貨となっている。
リューロンとの大きな違いは、金貨がある事だね。
そして、ユニルはホルンメーネでの通貨。こちらも金貨があるのだが、最大の違いは、必ずユニコーンが描かれている。
銅貨の片面がユニコーン、もう片面が髪の毛の束のデザイン。
銀貨を飛ばして、金貨のデザインが、片面が2頭のユニコーン、もう片面が生贄となった歴史的に有名な女王とかで・・・。
もう、ユニコーンの子孫の増やし方を知っている者としては、ドン引きするデザインだ。
さすが、ユニコーン狂がいる国の通貨だよと、逆に感心もしてしまう。
まあ、それが文化だと言えばそうなのだが・・・私から言えばキモイ。
その一言だ。
夕方となり、港町デュモルチェに帰る。
本日も、交換島の国家鑑定士の方々との夕食である。
「ねえ、だから、さー、クレシダを紹介して欲しいんだよね~。」
と、昨日から赤い雄のドラゴンのスコルと絆を結んでいる方から、クレシダを紹介して欲しいと迫られている。
誰が、ロリコンドラゴンに、可愛いクレシダを紹介しないといけないのよ。
大丈夫よクレシダ、しっかり守ってみせるからね。
「あら、お酒をお注ぎしますね。」
と、私は席をたち、別の国家鑑定士の飲んでいたグラスが空になったのでお酒を注ぎに行き、その場を逃げる。
ふと、バルコニーを見るとライ様がヴァルナを撫でているのが見えた。
私は、バルコニーに出る。
「ヴァルナは本当に美しいドラゴンだな。」
ライ様は、私が来た事が分かったらしく、声をかけてきた。
「そうですね。3大美ドラゴンの筆頭ですから。」
私もヴァルナを撫でる。
うん・・なめらかな手触りだわ。
「サーシャ、ありがとう。」
ライ様がいきなり私にお礼を言った。
けど・・お礼を言われる事したっけ?
「デリックに会わせてくれたことだよ。もちろんヴァルナと会えたこともな。」
何の事と考え込んでいる私にお礼の内容を言ってくれた。
「ライ様は、黒いドラゴンのイクシオンに会ってから、ドラゴンと積極的に接しています。ですから、知り合いの黒いドラゴンに会わせたかったのです。」
それが、3大美ドラゴンなら、会わせなければと使命感に近いモノがあったことも付け加えた。
「ライ様は黒いドラゴンに興味があるのですか?」
「・・・わからない。ドラゴンと絆を結びたいと思っても、出来ないと思っていた方が、自分の身の為と思っていたから。」
私は、今もそうなのかを聞いたら、違うと言ってくれた。
・・・まずは、ひと安心。
「だけど、ドラゴンに嫌われたら辛いから嫌だとは、今でも思うよ。」
「そんなのは、誰もが同じだ。」
と、デリック先生もバルコニーに出てきた。
「ドラゴンに嫌われて、怪我をした者もいる。」
ちょっとデリック様、ライ様を怖がらせないでください。
「だが、今では・・・深い絆で結ばれているよな。サーシャも知っているだろう、ナイジェル・ラリマー。」
・・・あっ。
「彼は、王族のドラゴン騎士団の家系の次男でしたね。」
強いドラゴンと絆を結びたく、嫌われて頬に傷が残ってしまう大怪我をして、一時期ドラゴンに恐怖を抱いていたっけ・・・。
「クレシダに会って、恐怖を克服し、今では深い絆で結ばれています。」
亡くなっても、再び生まれ変わりナイジェルさんと絆を結びに戻ってきたのだから・・・。
「サーシャ、ライナス様の次の会う者が決まったようだな。きっと、国王主催の舞踏会に呼ばれているはずだ。俺からもナイジェルに伝えておく。」
私はデリック先生にお礼を言った。
「サーシャは、ナイジェル・ラリマーに会ったことはあるのか?」
私は、数か月間、ナイジェルさんの屋敷でメイドをしていた事を伝えた。
「顔が広いよな~。なら、生まれ変わったクレシダとはあったことは?」
ライ様が聞いていた。
本当はこの場で言うのはためらうのだが、聞いて来たので答えるしかない。
「あったことがあります。とても可愛いドラゴンですよ。」
”ピカリーン”
「だから、スコルに会わせてくれないかな~」
うわ、来たよ。
ロリコンドラゴンと絆を結んだ人が、目を輝かせて・・・。
「絶対に会わせません!!」
心からの声をそのまま伝えた。
こうして、2泊3日のデリック先生の講義は終わった。