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乗り越える道

 港町デュモルチェのドラゴン寮へ、ルイーズさんと私は向かっている。

 ドラゴン寮へと向かう林道へと曲がる。

 港町デュモルチェにあるドラゴン寮は、町から離れた林の中にある。

 えっと・・・。

 うん、ヴァルナわかったからね。

 道の真ん中で、大口開けて待っていなくても・・・。

 よだれまで垂らして・・・。

 「本当、ヴァルナはチョコチップスコーンが好きよね~。」

 ルイーズさんは、チョコチップスコーンを一つ取り出す。

・・・と、ルイーズさんはニヤリと笑う。

 「走るわよ!」

 え?

 ルイーズさんはチョコチップスコーンを一つ取り出し手に持ったまま走り出す。

 ヴァルナは、口を開けたまま、ドタドタと足音を立てながらルイーズさんについて走る。

 私も、ヴァルナの口から出るよだれを避けるために、ヴァルナの前を必死に走る、走る。

 そして、やっとドラゴン寮に着く。

 ドラゴン寮の出入り口に入ってすぐ、ライ様とデリック先生のご一家が待機していた。

 「はい、後はよろしくね。」

と、ルイーズさんは持っていた紙袋をデリック先生に、サッと渡した。

 私は・・・・。

 「ぜえぜえ・・・・はあはあ~。」

 息を切らして、紙袋をただライ様の前に差し出すしか出来なかった。

 「サーシャさんは、体力がないなんて・・・。」

 ルイーズさんに、しっかり体力をつけるように注意をされてしまった。

 力はあるのだけど・・・。

 「新婚生活は、体力勝負となるのよ。」

 ・・・どうして体力勝負になるのだろう?

 そこは、教えてはくれなかった。

 「サーシャは、ヘリオドール一族の者でしょ。自分で考えなさい。」

 だって・・・。

 ”キュフ~~ン”

 ヴァルナが嬉しそうに、リディアちゃんからチョコチップスコーンを貰っている。

 三歳児なのに、『チョーチップしゅコーンは、ヴぁうナの』と、リディアちゃんも食べていいのに、ヴァルナの物として認識をしているようだった。


 ヴァルナがチョコチップスコーンに満足して、ドラゴン寮の庭ですやすやと昼寝をしている。

 その近くに置かれたガーデンテーブルの席に座る。

 ライ様、ソフィーさん、リディアちゃんと私。

 「ここからでも、見えるのだな。この港町デュモルチェの象徴と言える海岸に建てられた屋敷の灯台がな。」

 デリック先生の一言で、皆が微かに見える灯台を見る。

 「あの灯台は、何度も建て替えがされているが、最初に屋敷の庭に灯台を建て、船の往来を活発にさせたのは、アーサー・ギベオンという商人だ。」

 デリック先生が歴史を語り始めてる。

 「はい、パパ!!」

と、元気よくリディアちゃんが手を上げる。

 デリック先生が『なんだ?』と、デレ顔で言う。

 「ギベオンって、私の名前にもあるけど・・・あーしゃーは家族?」

 リディアちゃんが首を可愛くひねり、デリック先生に聞く。

 デリック先生はリディアちゃんのもとへ行き、目線を合わせる。

 「遠い、遠いおじいちゃんだよ。」

と、優しく言い、リディアちゃんの頭を撫でる。

 「じゃあ、ここは、アーしゃーじいじがいた町なの?」

 目を輝かせ、デリック先生に再び聞くリディアちゃん。

 「そうだよ。」

 「なら、この町に住みたい!」

 デリック先生が、驚き目を大きく開く。

 「近いうちにそうなってくれると嬉しいのよね~。」

と、リディアちゃんにウィンクをしするルイーズさん。

 「この町にドラゴンを連れて住むには条件が必要なのよ。」

 ルイーズさんは、港町デュモルチェにドラゴンを連れて住むための条件を述べる。

 ドラゴンが国家鑑定士である者と絆を結んでいる事。

 黄金や宝石の鑑定を全て出来る事。

 2つの条件がいる事を言った。

 「ヴァうナとパパはどうなの?」

 ルイーズさんは、後もう少しで条件がそろう事を言う。

 そう、リュヌの銀の鑑定が出来るだけ・・・。 

 だがそれが一番の難関なのだ。

 「がんばってパパ、それにヴァうナ!」

 無邪気な笑みでリディアちゃんはデリック先生と眠っているヴァルナに言った。

 「そうだよね。私たちも早くそうなってくれる事を願っているのよ。」

 ルイーズさんがデリック先生の方を見る。

 「リディアちゃんのパパはね~、凄いパパなのよ。ものすごーい困難を乗り越えて国家鑑定士になっているの。ここへ住めるための困難もきっと、乗り越えてくれるわ。」

 そうルイーズさんが言うと、リディアちゃんは椅子から立ち上がりデリック先生に抱きつく。

 デリック先生は、リディアちゃんを抱き上げる。

 その目は、潤いに満ちていた。

 デリック先生の先祖が犯した汚職事件、それにより、国家鑑定士に長年ギベオンの名が挙がっていなかった。

 それを乗り越えてデリック先生が国家鑑定士になったのだ。

 だから、乗り越えて欲しい、リュヌの銀の難関に・・。

 「デリック、絶対に乗り越えて見せなさい。」

 デリック先生は『はい』と、答えた。


 「ライナス様、あなた様も絶対に乗り越えてください。将来、この者の上に立つ者なのですから。」

 そう、ここにも先祖の難関を乗り越えなければならない者がいる。

 アリシアの血筋という事で、ドラゴンと絆を結べないでいる一族。クローライト公爵家。

 その嫡子であるライナス・クローライト。

 ライ様は、公爵となる時、絆を結んだドラゴンがいて欲しいと。皆が思っている事を・・・忘れないで欲しい。

 どうかライ様に、素敵なドラゴンが訪れますように・・・。

 

 

 

 

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