お礼を貰いに行く
ライ様がクローライト城に戻られて一か月。
私がヘンリー様のところへ戻るまで1年半となった。
ライ様と私は、ドラゴンに乗り、クローライト領の上空を飛んでいた。
ピアーズさんからのお礼を貰っている最中です。
先週、王宮から私宛に2通に手紙が届いた。
11月中頃に開催されるハミッシュ陛下主催の舞踏会の招待状と、ピアーズさんからの手紙だ。
聖ドラゴニア学園の飛び級テスト。
そこで出された論文が、今後の国の行く末に大いに役に立つ内容だったので、ピアーズさんが是非お礼をしたいと言って来た。
ではではと、名指し指定で、お礼を頂こうとお願いしたところ。冊子が届いたのだ。
修学旅行のしおりのような内容でして・・・。
日にち指定、時間指定、移動方法も、しっかり書かれてました。
もちろん『雨天決行』の文字も記載されてましたよ。
おやつを持って行くべきかしらと、錯覚しそうな内容の冊子です。
「そろそろ目的地です。」
と、王宮から来たドラゴン騎士の人たちが、海岸に建てられた城の城壁に降りる。
ライ様と私はドラゴンから降りる。
すると、屋上の扉から人が来る。
「始めまして、交換島伯爵の第一補佐官ルイーズ・シェルと申します。」
丁寧にあいさつをしてくれる、金髪の女性ボディービルダーのように見える方。
ピアーズさんから頂いた冊子からしますと・・・。
本名をルイ・シェルといい、性別は男性です。
まあ、国家鑑定士である時点で男性だと判明してますがね。
ライ様がルイーズさんに挨拶をしてから、私も続けて挨拶をする。
「こちらへ」
と、港町デュモルチェ側の城を案内してくれる。
「このデュモルチェは、交易が盛んな港町です。この城の中央の塔が高いのは、灯台の役目もしているからですのよ。」
城の説明と町の説明をしてくれながら、城の正面の広場まで来る。
城の正面の広場には、灰色の瞳の白いドラゴンがいた。
「私と絆を結んでいるドラゴンのステファノ―です。」
しっぽのサイドにも角が出ているので、ステファノーは雄のドラゴンだ。
こちらは間違えない。
「ルイーズさん、ステファノ―の特別なクセと言いますか・・特徴はございますか?」
私は、ついつい知りたくなり聞いてしまった。
「伯爵に比べたら普通かもしれませんが、一部男性に見られる後頭部の川を見ますと、潔い後頭部にしたくなるようです。」
後頭部の川って・・・何のことだ?
ライ様もわからなかったようで、ルイーズさんの聞き返す。
「潔くないハゲが、一部髪を伸ばし、後頭部の頭皮を隠している人の事ですわ。」
後頭部のバーコードの事か・・・・。
なるほどね、確かに川だわ。
突如、空が陰る。
ドラゴンが2頭、城の正面広場に降りてきたのだ。
銀髪5歳ぐらいの女の子と、茶色の髪の女の子のお母さんが降りてきた。
「国王の側近のピアーズ・スフェーン様から、ドラゴンに乗って、ここに連れてこられましたが・・・何かありましたでしょうか?」
心配そうにルイーズさんに聞いてきた。
ルイーズさんは、女性に落ち着くように言う。
私は、その女性に近づく。
「ギベオン夫人ですね。私はサーシャ・トラバイトです。」
丁寧にあいさつをする。
「ソフィー・ギベオンです。」
「リディア・ギベオン・・3さい・・です。」
おんなの子が、指で3を作り私に見せる。
私は、リディアちゃんの目線に会わせるため、しゃがみ挨拶をした。
「サーシャ・・・この方たちは?」
と、ライ様がこちらに来た。
「国家鑑定士の北の総括長デリック・ギベオンの奥様のソフィーさんと、お嬢様のリディアちゃんです。」
ライ様とソフィーさん、リディアちゃんは、お互いに自己紹介をする。
「ヴァうナ」
と、リディアちゃんが空を指さして言った。
そこには、ほのかに黒く光るドラゴンがこちらに向かってくる。
「ソフィー!リディア!!」
と、デリック先生が、ヴァルナに乗ってこちらに来る。
そう、私は交換島に関する歴史を元、聖ドラゴニア学園歴史講師のデリック・ギベオンに教えて欲しいと、ピアーズさんにお願いをしたのだ。
これから、生の聖地巡礼である、歴史の授業が始まろうとしていた。