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お互いの証

 ヘンリー様のところへ戻るまで約1年7か月となった。

 私は、クローライト城にいた。

 この日は、ルベライトへ行ったライ様が、クローライト城に戻ってくる。

 マティアス様が、怪我をした水色のドラゴンは傷は残ったが、普通に歩けるまで回復し、無事に自分の巣へ帰ったと伝えてくれた。

 ・・・良かった。

 

 城の窓から、馬車が見えて来る。

 護衛の兵も姿も見える。

 イヤリングのデザインされた短剣を持っているニックスさん。

 ブレスレットのデザインされた短剣を持っているクラークさん

 ピアスのデザインされた短剣を持っているテリーさんが、同行していた。

 

 8人の英雄で、一緒にダンビュライト城へ同行をしてくれたキロスさんは、この度めでたく、婚約が決まったと報告してくれた。

 お相手の方に、短剣のにデザインされた指輪を差し出したところ、泣いて喜んでくれたようだ。

 おめでとう、キロスさん。


 私は、この一か月の間。

 ライ様の次の学習の地の準備をしていた。

 ピアーズさんが、私の出した論文のお礼をしたいと言ったので、名指し指定での依頼をしてみた。

 ・・・大丈夫かしら?

 返事もらえてはないけど・・・。


 「ライナス。よく頑張ったな。」

 ヴィンセント様が、息子に抱擁をする。

 それを見てキャサリン様の目から涙が溢れる。

 「立派になって・・・。」

 私は、ライ様のもとまで私はキャサリン様の手を引く。

 「・・・ライナス。」

と、キャサリン様はライ様に抱き着く。

 「ダンビュライト、そしてルベライトでたくさん勉強が出来たか?」

 マティアス様が誇らし気に、ライ様に聞く。

 「はい、大父様。たくさん勉強をさせていただきました。」

 私を含めて迎えた使用人たちは、感動のもらい泣きの涙を流していた。


 小さいながら晩餐となった。

 私は、親子水入らずの場に、食事の配給として見守ろうとしたら、場違いな席に着席することになった。

 「家族の席に、サーシャがいなくては寂しいだろう。」

と、マティアス様が言ってくれたのだ。

 

 「サーシャが考案した『緑とピンクの計画』を直接見ることが出来ました。」

 どこまで、進んでいるのか心配していた計画の事をライ様が話してくれる。

 「サーシャが、品種まで指定していたアーモンドの苗木と桃の苗が、植えられていたのを見た。」

 温泉地の湿気に適した品種のアーモンドの木をわざわざ取り寄せたのだ。

 そして、その苗に適した桃の品種も名指しで頼んだのだ。

 それが、ちゃんと来てくれたんだ・・・。

 「品種まで指定とはこだわりが強い。」

と、ヴィンセント様が関心をしている。

 「アーモンドは、乾燥した温暖な気候に適した植物なのです。それを多少の湿気でも育つように品種改良した物を取り寄せて貰ったのです。なにせ、温泉地ですから・・・。」

 そこにいた皆が納得してくれた。

 「26日のルベライト城のドラゴンの温泉清掃も見る事が出来ました。」

 「黒いドラゴンの担当だったな。」

と、マティアス様が言った。

 再びイクシオンに会った事を嬉しそうに語るライ様。

 「イクシオンは、300歳程の黒い雌のドラゴンを娶ったようです。」

 あら~・・・ヴァルナを諦めたのね。

 なら、ヴァルナは誰を夫にするのかしら~?

 こうして、晩餐は穏やかに終わった。


 私は、部屋で寝る準備をしていた。

 ”とんとんとんっ”

と、扉をノックする音が聞こえた。

 私は、こちらから扉を開ける。

 「ライ様、どうなさいましたか?」

 そこにいたのはライ様だった。

 「明日、渡そうとも思ったんだが・・やはり今日中に渡した方がいいと思ってここに来た。」

 そう言い、私に両手に収まる程の大きさの箱の包み紙を渡した。

 「サーシャに渡して欲しいと、ヘンリー殿から預かった物だ。」

 私は、目を大きく見開く。

 「確かに渡したからな。おやすみ。」

と、言い、ライ様は自分の部屋へと帰って行った。


 私は、部屋に入り、包み紙を開ける。

 一通の手紙が、入っていたので開く。

―――――――――――――――――――――

 サーシャへ

 伝えたいことがたくさんあるのに、

 いざ、書くとなると、わからなくなる。

 だから、一番伝えたいことを伝える。


 サーシャ、愛している。


      ヘンリー・ルベライト

―――――――――――――――――――――


 胸が熱くなるのが分かった。

 ヘンリー様の手紙をテーブルに置き、手紙の下に入っていた小さな箱を取り出す。

 ・・・なんだろう。

 私は、箱を開ける。

 ”ツーーー”

と、目から涙が流れる。

 ヘンリー様愛用の黄色いコスモスのティーカップのセットのような、全て陶器のティースプーンだった。

 ヘンリー様のお母さまであるヴァネッサ様の誕生日プレゼントを探しに、領都ルベルタの街を歩いていた時。

 コーヒーの香りに誘われて休憩をとった喫茶店での言葉を思い出す。


 全て陶器のティースプーンは、お互いの当然の信頼の証


 裏切る形になってしまったこんな私でも、ヘンリー様は・・・。

 心が・・止めどなく溢れだす。

 愛しくて・・・愛しくて・・・どうしようもない。

 ヘンリー様を想う気持ちが、体中をめぐる。

 体の熱が、全てヘンリー様を想って発せられているのではと、感じてしまうように・・・。

 私は、全て陶器のティースプーンが入った箱を離す事が出来ず。抱きしめたままベッドに入り、眠りについた。

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