元が付く王女と公女の女子会
ピューゼン王国からダンビュライト城へと帰って来た日の夜。
寝る準備をしていた時に、クリスティーナ様が私の部屋にやって来た。
「2人きりで、お話をしたいと思って、寝る前なのに申し訳ないわね。」
と、悪びれることなく、可愛く微笑みながら入って来た。
「実は、私も、クリスティーナ様と女性だけでのお話をしたいと思っていましたので、うれしいです。」
素直に、私は喜んだ。
クリスティーナ様も、目を一瞬見開くが、満面の笑みで喜びソファーに座る。
「サーシャ殿。来年度、聖ドラゴニア学園に入学するのでしょう。」
私は、その予定でいる事を伝える。
「ヘンリー殿との結婚は、学園卒業後かしらね。」
私は、俯き『はい』と、答える。
頬が熱くなっているのを感じた。
「サーシャ殿。もし学園で困ったことがあったら、学園内の購買部の発注をかけている人を頼りなさい。」
クリスティーナ様が、真剣な顔で言ってくれた。
「購買部の発注をかけている人は、結構いろんなところに、手が回る人なのよ。」
なんと、クリスティーナ様が在学中に、当時はピューゼン王国にしかなかった海苔が、置かれていたとのこと。
「先ほど、フレディ様に、サーシャ殿が、海苔料理を作ってくれたと聞いて、在学中に購買部の事を思い出してね。」
クリスティーナ様は、購買部で海苔を購入し、毎朝、食堂でおにぎりを頼み、海苔をくるんで食べていたエピソードを教えてくれた。
周りは、最初真っ黒い物を食べているクリスティーナ様を偏見の目で見ていたが、毎日うれしそうに食べている姿に興味がわき、次第に海苔に興味を持つようになり、周りも海苔を購入し、同じようにおにぎりに包んで食べて、そのおいしさにたちまち学園内で流行った事。
そのことがきっかけで、学園に打ち解けた事を教えてくれた。
「サーシャ殿は、故郷にしかない物はないの?」
・・・・うん~。
何かあるかな~?
食べたい物・・・食べたら懐かしいと感じる物。
そして、ドラゴニアで生産可能な物。
せっかくだもの、将来この地で生産できる物がいいわ。
クリスティーナ様は、ご飯だったから・・・パンの何かがいいわよね。
「あっ」
私は、つい声を出してしまった。
「ありそうね。」
クリスティーナ様は、嬉しそうに微笑み『何かしら?』と、質問してきた。
「・・・ブルーベリー」
たまたま、クラウンコッパー公爵家の庭に植えられていたブルーベリーの木々。
ブルベリージャムを作り、ヨーグルトに入ってたっけな~。
前世にいたっては、朝食のパンに塗るのは、ブルーベリー味が多かった。そして・・・パンに乗せる粒の個数を曜日で決めていたっけな~。
月曜は、仕事はじめなので2粒、火曜から金曜までは一粒。
土日は、仕事が休日なので、贅沢は敵だという事で、粒ナシ。
・・・懐かしい。
私は、クスリと笑う。
「ブルーの名が入っているという事は、青い色の食べ物ですの?」
クリスティーナ様が、ブルーベリーの事について聞いて来た。
「深い青い色の小さな実です。それが枝にたくさんなり・・・よくジャムに加工されます。青紫色の綺麗な色のジャムです。」
前世も含めて、懐かしむ味なのかもしれない。
「流行りそうですね。」
「そこまでは考えていませんが、ドラゴニアで生産したいとは思いますね。クスッ」
私が、悪戯っぽく微笑むと、クリスティーナ様も微笑んでくれた。
こうして、就寝前のクリスティーナ様との女子会が終わった。
そして・・・明日は、クローライトへ帰る日となっていた。