三途の川とラーイ界
ゆっくり話をしようと切り出だされ、礼拝堂の長椅子に私は座っている。
右にはカリスタ様、左にはハミッシュ殿下が座っている。
「少しは落ち着いたか?」
「『あえて少しを付けているのは、何かの意図があってのことかな~?』」
私は、浮かび上がった言葉を素直に吐く。
「おいおい、それ、『続・ドラフラ』のフレディのセリフ。」
そうだった。
よりによって、腹黒ショタキャラで、白の公爵の嫡子フレディ・ダンビュライトのセリフを言うとは思わなかった。
「・・・浅見沙弥那です。」
私は前世の名前を口にした。
「やっと、会えた。」
ハミッシュ殿下は、目と歯をキラキラさせながら言う。
やはり、ハミッシュ殿下の歯は、キラキラコーティングされているのですね。
ゲーム中では、ハミッシュ殿下の歯の輝きには効果音”キラーンッ”が特別にあった。
現実の世界での彼には、効果音は出なかった。
あったとしたら『キモッ』と口に出しただろうな・・・。
なくてよかった。
「君も、自殺に巻き込まれて亡くなったのだろう。」
ハミッシュ殿下は、そう言い。彼の前世『椋梨 翔英』のことを話した。
彼は、29歳の時、友人が集まっての飲み会の帰りに、ビルからの投身自殺者にぶつかり巻き込まれ亡くなった。
飲み会で集まった理由が、自分の30歳の魔法使い記念日だとか・・・。
「5日後に魔法使いになれたのに、なり損ねちゃった~。」
と、ジョークにしては、痛々しい言葉を吐いた。
そこまで、説明しなくてもいいですよ。
「私は、アパート隣人の爆発自殺に巻き込まれて死にました。」
「うわっ、えぐい。」
ですよね・・・でも即死できました。
私の他にも、数人巻き込まれて亡くなった者がいたが、『私だけ三途の川を渡ることが出来ない』と、言われた事を付け加えた。
「君もか・・・俺もなんだ。では、会ったんだな。白銀の光の神に・・・。」
私は顔を俯き肯定する。
三途の川が見える薄暗い中で、白銀に光が私に差し込み、その光から声が聞こえたのだ。
あの世の三途の川は、死の予定付近で亡くなった者のみ渡ることが出来る。
死の予定は、それぞれ何個が用意されていて、最終予定以外は回避することも出来るとも言っていたっけ・・・。
それで、私とハミッシュ殿下は、その予定のどれにも当てはまらず。たまたま亡くなったという事だった。
そのような魂は、三途の川付近の魂の凍結保存施設に送られるのが一般的だけど、その施設も満床の危機にあったということ。
そして・・・神は決断をしたようだった。
新たなる世界を創造することを・・・・。
・・・・それがこのラーイ界のようだ。
あらら・・まだ、殿下から陛下へと修正できないでいます。
脳内の妄想だけだった物語を、文書として立ち上げるのに格闘している日々です。
暖かい目で、お付き合い頂けると嬉しいです。