クッキング・・・いろいろ
療養中のドラゴンを撫でまわった日の夜。
私は、手料理を振る舞う事にした。
ピューゼン王国で生産されている海苔。
今後、ピンクスピネでも生産されることになるので、広めなければという使命感もあり、厨房の端を使わせていただいたのだ。
刻み海苔を振りかけた、ちらし寿司。
これまた、刻み海苔を振りかけた、明太ポテトパン。
中身の具材に海苔を巻き、外は薄焼き卵で巻いた、太巻き。
刻み海苔を生地の中に混ぜた、お好み焼き。
を、前世の記憶のレシピから、引っ張り出しましたよ。
私が、前世の記憶のレシピを思い出そうと、頭と腕をおかしく動かしていたのを、厨房の方々に怪しく見られてしまいましたがね。
ピューゼン王国は、お米とパンの割合が半々の国民だった。
だが、お餅は『何ですか?』的な感じだった。
海苔を練り込んだおかきを作りたかったが残念だ。
私は作った料理を、皆の所へ持って行く。
「皆さん、どうぞ!」
料理の方へ皆が来てくれる。
今回は、フレディ様、カイル様、ライ様も、皆で食べようと集まってくれる。
「サーシャ殿、これは海苔づくしの料理ですか?」
と、最初に口を開いたのはカイル様だった。
「はい、ルベライト領の港町ピンクスピネで、海苔を生産する計画がありますので、その料理を振る舞いました。」
そういえば、ダンビュライトの端でも海苔を生産していた。
「カイルは、海苔が大好きなんだよ。」
と、フレディ様は説明をしてくれる。
「追い海苔、お願いします。」
カイル様はちらし寿司をよそって、私の前に出して言う。
「おいのり・・・カイル様は信仰が深いのですね。」
「違います。刻まれた海苔を、もっとください。」
そういうことか・・。
私は、厨房へと一端、戻ろうと席を立つ。
すれ違う人を見ると、ダンビュライト領の方々が、その他の方々に『一端食べてみろ』とか。『目を瞑って食べれば、おいしさが分かる』とか、説明をしてくれていた。
私が厨房から戻ると、皆ガツガツと料理を食べていた。
うん・・・これで、ピンクスピネの海苔の生産に不安はないわね。
私は、カイル様のちらし寿司に、追加の刻み海苔をかけてあげる。
「サーシャ様が、ここまで料理がうまいとは・・・きっとクッキーも美味しいのでしょうね。」
と、モーリスの甥っ子さんのカインさんが、変な事を言った。
「えっと・・・それはわかりませんよ。私が生まれてからこれまで、一度もクッキー作った事ありませんから。」
一斉に、その場にいた人が、私を見る。
嘘は言ってないよ。
サーシャとしては、一度も作ったことなし・・・。
まあ、浅見沙弥那としても、お子様用レシピの簡単クッキーしか作ったことないから・・・『ない』と、言った方が無難だよな。
「それでも、ルベライト公爵家に嫁ぐ者なの?」
と、フレディ様が一言。
「・・・信じられない。」
ライ様まで・・・。
「そのような事を言いますと、いろんなクッキーを作り試食してもらう事になりますよ。せんぶり茶クッキーとか、納豆クッキーとか。」
私は、生前のリオンが、作ったいわくつきクッキーの名を挙げる。
「それ、リオンが作った失敗作クッキーだ。僕は、すったゴーヤの入ったクッキーを食べさせられたな・・・。」
フレディ様にも、恐ろしいクッキーを食べさせたのかい!
・・・・やはり、リオンは恐ろしい方だ。
「あの・・・いろんな方から、リオンのとんでもないクッキーの名前を聞くのですが、リオンは美味しいクッキーを作ることが、できたんのでしょうか?」
フレディ様に聞いてみた。
「一応、美味しいと思えるクッキーを食べた事あるよ。」
良かった・・・と、普通に思ってしまった。
その後、私は、エリックさんから、マリーが先にルベライトで技術を学んでいるから、ルベライトへ来た時に、教わるように言われている事を伝える。
こうして、夕食が終わった。
そして、フレディ様、カイル様、ライ様と私は、ピューゼン王国で一晩泊まり、翌日にダンビュライト城へと戻る事になった。